世界のねじを巻くブログ

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『弟の夫』 第4巻(最終巻)発売、実写化も【ゲイ漫画】

【同性愛を描いたマンガ】

先日、ゲイアートの巨匠とよばれる田亀源五郎さんが描いた『弟の夫(4)』、
最新巻が発売されました。

さっそくKindle版を購入してみたので、感想を書いてみたいと思います。

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

【あらすじ・ストーリー】

『弟の夫』は、今回発売された最終巻で完結した、全四巻の漫画です。
タイトルでは「ゲイマンガ」と書きましたが、決してLGBTのみ向けられたものではなく、異性愛者でも問題なく楽しめる作品となっております。

第一巻のあらすじは下記の通り。

弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、マイクと名乗る男がカナダからやって来た。マイクは、弥一の双子の弟の結婚相手だった。「パパに双子の弟がいたの?」「男同士で結婚って出来るの?」。幼い夏菜は突如現れたカナダ人の“おじさん”に大興奮。弥一と、“弟の夫”マイクの物語が始まる――。(アマゾンより)

このマンガの面白いところは、死んだ弟の恋人であるカナダ人のマイクと、死んだ弟の兄との交流が描かれるところ。
つまり、ゲイ同士を描いたものではなく、
ゲイと異性愛者の交流を描いたユニークな作品となっております。

他におすすめする理由がこちら。

子供の純粋さと主人公の偏見との対比

小学生の女の子である夏菜は、同性愛というものに全く偏見を持たないのに対して、偏見を持つ父はマイクのことを快く思いません。その対比が、読者に「偏見」というものが何か、ということを教えてくれる大きなカギとなっています。

 ※追記(2017.11.4):田亀原五郎さんの最新作『ゲイ・カルチャーの未来へ』についての感想・レビューを書いてみました。

世の中の偏見を浮き彫りに

マイクと生活する中で、主人公の弥一は世の中に残る偏見に直面します。
異性愛者として生きるだけでは感じることができない小さな偏見。
そんなものをこの漫画は浮き彫りにしてくれます。

 

新しい家族のかたち

弟とマイクの男同士の結婚生活のみならず、離婚し男手ひとつで女の子を育てる主人公。男性と女性が結びつき、二人で暮らすことが必ずしも正しいものではないという作者の声が聞こえるような作風になっております。

単なる同性愛モノではなく、
”家族”を描いた心温まるホームストーリーを描いていることが、この漫画の最大の特徴ではないでしょうか。

【ネタバレなしの感想】

第四巻につき、可能な限りネタバレを押さえた感想を。

話の動きが多かった1,2,3巻と比べ、4巻はおとなしめな展開。
主人公の弟への思いがしっかり描かれていたのが◎

ラストは正直展開が読めたというか、予定調和的な終わり方であることが否めないですが、希望を残す終わり方だったので、いち読者としても非常に勇気づけられました。

 ゲイはもちろん、そうでないストレートの方でも十二分に楽しめる内容となっておりますので、ぜひ読んでみてください。

 

【ドラマ化も NHKで】

※追記(2017.12.5)

なんと佐藤隆太×把瑠都という組み合わせで、実写ドラマ化されるとのこと。
NHK BSプレミアムにて、3月4日から、毎週日曜22時に放映予定です。

これは気になりますね。ドラマの前に、ぜひ原作のマンガをチェックしてみて下さい。
また続報があれば追記したいと思います。

 弟の夫(4)
弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

第一巻の電子書籍(キンドル版)は270円とお買い得なので、気になる方はぜひ。

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

地下鉄サリン事件から22年『終わりなき日常を生きろ/宮台真司』感想

【世界初のバイオテロ】

今日2017年3月20日は、あの「地下鉄オウムサリン事件」からちょうど22年とのこと。
以前、オウム真理教について書かれた本を読んだので、少し感想を書きたいと思います。

まず、地下鉄サリン事件とは何だったんでしょうか?
僕の世代ではぼんやりとしか知らない方も多いかと思いますので、詳しく知りたい人はウィキペディアを読んでみてください。
地下鉄サリン事件 - Wikipedia

 地下鉄サリン事件が大きく取り上げられた理由としては、死者数13人・被害者6,300人という数ももちろんですが、「世界初の無差別バイオテロ事件」であったこと、
また、オウム真理教の幹部がいわゆる”高学歴”の大学出身の人ばかりで構成され、さらに医者という人の命を最も深く考えるはずの職業である人も、この無差別テロ事件に加担していたことなどが理由に挙げられます。

【感想・レビュー】

今回紹介する本は、宮台真司さんという方が書かれた『終わりなき日常を生きろ』というタイトルの著作。
この著者の名前は初めて知ったのですが、宮台真司さんは当時女子高生の行動を社会構造の変化から考察して話題を呼んだ社会学者とのことです。
紹介する著作も、ブルセラショップに通う女子高生とサリン事件の間には密接な関係がある等独自の視点で書かれていました。

この本の中で特に印象に残ったのは下記の文章。

私たちの時代には「良きことをしたい」という良心への志向が強ければ強いほど、「何が良いことなのか分からない」という不透明感が切迫し、透明な「心理」への希求が高まる。その結果、たとえば彼らが救済という「良きこと」に向けて強く動機づけられていればいるほど、児戯のようなフックに引っかかって世界観を受容する。
『終わりなき日常を生きろ』 P62 

「良心的でありたいのに、何が良きことなのか分からない」時代の中、「終わりなき日常」に適応しそこなった人たちは「必ずや訪れる未来の救済の日」を信じざるを得なかったのだ、という内容。

ハルマゲドンと称された『大いなる救済のための犠牲』という図式を信者がなぜ信じ込んだのか、少し理解できた気がします。
あの「尊師マーチ」を見ても馬鹿馬鹿しいと思えないレベルまで洗脳されていれば、サリン事件が起こるのは当然だったかもしれませんね。

「終わりなき日常を生きる知恵」をブルセラショップに通う女子高生から見いだそうとする作者の試みは今の時代から読んでも非常に斬新でした。

他にもマインドコントロールはどのようにして為されるのか、「末端の信者はいい人」ではない、等オウム問題を深く考察した内容が書かれていました。

【信者数を増やすオウム】

サブカルチャーの「動き」の中にこそ、オウム問題の真の姿がある、とする独自の視点から書かれた本ですが、リアルタイムではそれほど記憶がない僕でも非常に興味深く読めました。

最後に、この不安定な世の中に警告をならす意味で、下記文章を引用しておきたいと思います。村上春樹さんがオウム信者へのインタビューをし集めた『約束された場所で』という本より。

私たちの日常生活と、危険性をはらんだカルト宗教を隔てている一枚の壁は、我々が想像しているよりも遙かに薄っぺらなものであるかもしれないのだ。 
村上春樹著『約束された場所で』 P332より

今なお、オウム真理教は世界各地で信者数を増やしているそうですが、
二度とあのような惨事が起こらないことを心から祈ります。

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)

村上春樹が地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめた本の感想もどうぞ。

ナショナル・ジオグラフィック誌の"性特集"を読んだ感想

【LGBTに限らない性別】

僕は昔から暇な時にナショナル・ジオグラフィックという雑誌を読むのがの習慣なのですが、(そういや村上春樹の最新作にも登場しました)今回特に気になった号を紹介したいと思います。

少し古いですが、今回紹介するのは「ジェンダー革命」と題した特集を組んだ2017年1月号のナショナル・ジオグラフィック日本版。

文化や社会、科学といった多様な側面から、「性」について書かれた特集です。 

曖昧になる男女の境界

 まずは性を定める定義から詳細に説明されています。
例えばこんな感じ。

ノンバイナリー

性辞任や性別表現は明確な境界がない連続的な概念だとする考え方 P12

それなりに知っているつもりだった僕も初めて聞くような用語がちらほら。

 

「研究者から見たジェンダー」というコーナーで

どの文化圏でも、奇数は男性的、偶数は女性的と見なされる。 P29


とあったのですが、日本ではあまり意識しないような・・・。
僕が無知なだけかもしれませんが。

また、他にも「一人前の男」への道 と題したコーナーでは、
戦士として忠誠心を高めるため年長者と性的関係を結び、殴打に耐えて根性を鍛えたという紀元前800年頃のスパルタからアメリカ・イタリアのマフィアまで解説が書かれています。
 

また、「男らしさ」を獲得するための通過儀礼として、割礼の紹介がされていました。

オーストラリアのアボリジニの一部族 マドゥジュラ族の少年たちは切り取られた自分の包皮をのみ込まなければならない。 P95

なんと。やはり世界は広いですね。

他に興味深かった内容として、
ディズニー映画のせりふを分析した結果、技能に関する褒め言葉は増加傾向にあり、容姿に関するものは減少してきている、など興味深い分析がたくさん。

 

1974年に初めて父親の育児休暇を導入したスウェーデンで、
父親が家事や子育てに奮闘する様子を写真で捉えた「パパたちの育休」も見応えありました。

ナショナル・ジオグラフィックを読むと、日本という場所にいることをふと忘れさせてくれるので個人的には欠かせない雑誌です。
疲れたとき・旅行したい気分になった時は特におすすめです。

電子書籍・Kindleでも

National Geographicの特集は表紙のタイトルで買うと思ったよりページ数が少ない、ということがたまにあるのですが、今回のジェンダー特集はなかなかのボリュームです。
気になる方はぜひ。

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2017年 1月号 [雑誌]

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2017年 1月号 [雑誌]

  • 作者: ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2016/12/29
  • メディア: 雑誌
  • この商品を含むブログを見る

 他の記事もどうぞ。

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『騎士団長殺し』村上春樹の新作を5章読んだ感想【ネタバレ含む】

【画家の男が主人公】

 ついに村上春樹の最新作『騎士団長殺し(英題:Killing Commendatore)』が発売されました。

近くに深夜から発売しているところを見つけたので早速購入し、はじめの5章分ほど(約100ページ程度)を読んでみたので軽く紹介したいと思います。

極力余計なネタバレをしないように書いていますが、
今回ストーリーについては一切語られず発売されたため、どんな情報もネタばれとなってしまいます。
本を真っさらの状態で読みたいという方はこの先を読まないことをおすすめします。

『騎士団長殺し』って何?という方は下記の記事をどうぞ。

【あらすじ・ストーリー】

裏表紙に書かれているあらすじは下記のとおり。

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた・・・・・それは孤独で静謐な日々であるはずだった。 騎士団長が顕れるまでは。 『騎士団長殺し』背表紙より

 これだけストーリーをつかむのは難しいですが、「何が起きるんだろう」と期待させてくれるあらすじですね。

【表紙・背表紙・裏表紙】

単行本のデザインはこんな感じ。
「第1部 顕(あらわ)れるイデア編」「第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」ともに剣が描かれたシンプルな表紙です。フォントも少し凝っていて良いですね。

騎士団長殺し表紙

背表紙

騎士団長殺し背表紙

裏表紙

騎士団長殺し背表紙

さっぱりとしたデザインです。緑・赤の色は何か意味が含まれているんでしょうか。

【レビュー・感想】

あくまで100ページほど読んだ時点での感想を書きたいと思います。

プロローグはダークな雰囲気で始まり、物語のスケールを感じさせてくれます。
「顔のない男」といういかにも村上ワールドな登場人物も現れたりなんかも。

今回のストーリーは画家の男が主人公。妻と離婚していろんな場所を移動したりで話が進んでいきます。「孤独な中年の男が主人公」という点は往年の村上春樹の作品でもよく見られるパターンだと思います。

画家が主人公ということで、雨田具彦という画家が書いた「騎士団長殺し」という題の絵がタイトルにもあるように、この本の大きなキーとなるでしょう。

雨田具彦という画家の名前が何度も出てくるので実際にいるのかと思って調べてみましたが、グーグルに全くヒットせず、あくまで物語上の人物だと思われます。

また、かなり序盤の方からセックスについて一部描かれる場面があり、性描写が苦手な方はちょっと抵抗感を示してしまうかもしれません。
(まあ性描写は村上春樹に限ったことではないのであまりとやかく言うのはどうかと思いますが。)

他の点に触れるとすれば、いつもの村上春樹の作品のように
ベートーヴェンやシューベルト等のクラシック音楽をはじめ、ローリング・ストーンズの「無情の世界(You Can't Always Get What You Want)」やらシェリル・クロウなど様々な音楽が登場します。

お得意のジャズが(100P読んだ時点では)まだ登場していない以外は、いつも通りと言えるでしょう。

やはり以前の記事でも触れたように、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』がストーリーに大きく関係しているようです。

「遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える」の章タイトルは「1073年のピンボール」を思い起こさせますし、他にも時折、「アンダーグラウンド」など昔の作品のエッセンスが感じられる部分があります。

【初めて読むという方にもおすすめ】

まだ5章ほどしか読んでいませんが、大きな「旋回」を期待させてくれるストーリーです。「おしゃれ感」は今回抑え目な気がするので、他の作品のような主人公のキザな言動が鼻につく、ということも少ないかと思われます。

冒頭だけでも村上春樹の世界観がたっぷり詰め込まれていますが
話自体はそれほど難解ではないので「はじめて村上春樹に挑戦する」という方にもおすすめできそうです。
気になった方はぜひ。第3部は出るんでしょうか…?

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

『これで駄目なら』作家カート・ヴォネガットによる卒業式スピーチ集

【村上春樹も影響を受けた作家】

今回紹介するのは、現代アメリカ文学を体現する小説家の一人であるカート・ヴォネガットの卒業式スピーチをまとめた本です。
カート・ヴォネガットといえば、『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』 等の衝撃作をいくつも書いたSF作家であり、『モンキー・ハウスへようこそ』は特に何度も読み返しました。

そんなヴォネガットが独特のブラック・ユーモアを交えながら人生の教訓を示してくれるのがこの『これで駄目なら』という本です。

原題は『IF THIS ISN'T NICE WHAT IS?』であり、スピーチの際中に色んな文脈で何度も登場するセリフになっております。

現代アメリカ文学を体現する小説家

まずはダン・ウェイクフィールドという方による「序文」から。

彼は「芸術家の社会的機能は、人々が以前にも増して人生を好きになるようにすることだ」と書いている。たとえばと訊かれて、「ビートルズがやったことだね」と答えた。 location52

 こういうことを言いながら、実際に体現しているところがかっこいいですね。
僕もブログを読んでくれる方が「以前にも増して人生を好きになる」ような記事を書いていきたいと思います。

 

「……わざわざわたしの本を読んで、教育を受けた人のように振る舞おうという人にお知らせします。わたしの本には性的なことも、いかなる形でも暴力を擁護するような議論も書かれていません。人々により親切に、責任をもって行動するようにお願いしているだけです。登場人物の口が悪いのは本当です。実際、現実の人間は口汚いわけですから。特に兵士と肉体労働者は口が悪い。どう隠したって子供たちはちゃんと知っています。実際、そういう言葉が子供を大きく傷つけることはないのです。自分たちが若かった頃を思い出して下さい。我々を傷つけるのは、凶悪な行為と嘘なのです location 155

こういった彼のとにかく素直な部分が、いろんな層から人気を集める理由の一つともいえます。
実際、ヴォネガットの小説がSFという形を取りながらも妙にリアルな雰囲気を持っているのはそのためでしょうか。

実体験を元にしてSFを書き、サイエンス・フィクションでありながらも嘘がない、
そんなイメージです。

また、本の中でも言及されますが、卒業式スピーチをする人物としては人気があったものの、ヴォネガット自身は大学を卒業していないそうです。

本を読むことをやめてはいけない。本はいいものだ──ちょうどいい感じの重さがある。指先でやさしくページをめくるときのためらい。わたしたちの脳の大部分は手が触れているものが自分にとっていいものなのか悪いものなのかを見定めるのに使われている。どんなちっちゃな脳でも、本はいいものだとわかるんだ。 location 458

 僕はこの本を電子書籍で読んでいたため若干の罪悪感を感じましたが、読書をする人にとっては救われる言葉ではないでしょうか。
電子書籍だけでなく、指先でページを感じる本も大切にしていきたいですね、

 

わたしたちの政府と企業とメディアとウォールストリートと信仰と慈善事業団体がどれほど堕落し貪欲になったとしても、音楽は完璧に素晴らしい存在のままだろう。 location 682

ブルースは抑鬱を家から掃き出してくれるんじゃなく、部屋の隅に追いやってくれる。location 707

ヴォネガットは音楽が好きなことでも有名であり、特にジャズとブルースについてはなんども言及しています。ジャズ好きの村上春樹がカート・ヴォネガットの文体に大きく影響を受けていることは有名ですが、音楽が二人の文体を支えていることは間違いないでしょう。

 ブルースを聴いたことがないという方は、下記の記事からブルースを聴き始めてみることをおすすめします。

 

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芸術にかかわることで、うまくできてもできなくても、魂は成長する。ほんとのことだ。シャワーを浴びるときは歌い、ラジオを聞いて踊るんだ。語り手になろう。 location 1312

「芸術」なんてレベルには遥かに及ばないですが、ブログを書いたり、絵を描いたり、小説を書いたりする人にとっては大きな励みになる言葉かと思います。
上記のような文章を読むと、僕も小説を書かねば、という気持ちは高まるばかり。
物語を語れるって素晴らしいですよね~

 何日かいいことが続いたなら、いいほうの異常が続いたってことだ。location 1327

 こういったシニカルな思考がヴォネガットらしくて好きです。

村上春樹が好きな方にもおすすめ

ところどころブラックジョークで挑発したり、場を和ましたりする彼のスピーチがまとめられた一冊。読めばヴォネガット流の人生の教訓というものを学ぶことができるでしょう。 Kindle版で気軽に読めるのでぜひ。

これで駄目なら

これで駄目なら

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『沈黙-サイレンス-』遠藤周作の原作を踏まえた映画版の見どころ

【映画の前に小説版のおすすめ】

遠藤周作といえばやはり『海と毒薬』が有名ですが、
この作者の傑作としてもう一つよく挙げられるのが、キリスト教がテーマの『沈黙』。

なんとこの小説が2017年1月21日(土)に『沈黙-サイレンス-』としてあのマーティン・スコセッシ監督によりハリウッド映画化したものが公開されます。

マーティン・スコセッシ監督といえば、『ディパーテッド』や『タクシードライバー』、『グッドフェローズ』等名作を生み出す映画界の巨匠

窪塚洋介や浅野忠信など、日本人の俳優も出演します。

今回せっかくなので、『沈黙』を初めて知ったという方や、原作を読んだことがない方に向け、ネタバレなしで軽く紹介してみたいと思います。

【あらすじ・ストーリー】

キリスト教宣教師の間に、「ある有名なキリスト教父が鎖国時代の日本でキリスト教を棄教した」という驚くべき報告が知れ渡ります。
主人公ロドリゴは、自分が小さい頃お世話になった方がキリスト教を裏切ったことが信じられず、真実を確かめるべく、宣教師としてロドリゴは日本へ上陸しますが・・・。

 ネタバレなしで書くとあまり大したことは書けないのですが始まりはこのような内容。

【小説を踏まえた映画版のみどころ】

原作の『沈黙』を踏まえ、映画で個人的に注目している点をいくつか書きたいと思います。

  1. 主人公ロドリゴの心情の変化をうまく捉えられているか?
    神はなぜ、このような苦難を信徒たちの上にお与えになるのか、私にわからなくなることがあります。 『沈黙』 location577
    小説版ではロドリゴの内面の感情の変化が事細かに描写されており、読者は主人公の心情の揺れに入り込むことができます。
    しかし映画となると、これはかなり難しいでしょう。
    主人公に自分の感情を込めたセリフを延々と言わせるわけにもいかず、どのように主人公の内面を描くのか。
    あなた(=神)はいつまでも沈黙を守られたが、あなたはいつまでも黙っていられない筈だ。『沈黙』 location 1980
    スコセッシ監督の手腕が大きく問われます。


  2. 欧米から見た当時の日本のキリスト教とは?
    遠藤周作自身は「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」に悩み続けました。その影響もあってか、この小説では日本でのキリスト教がすごく歪なものとして描かれています。江戸時代なので仕方ありませんが、遠藤周作はこの舞台を用いて「日本の異質さ」を強調して描いているように思います。
    欧米人(=スコセッシ監督)の視点からすると、「異国のキリスト教」というのはどのように映るのでしょうか。
    映画版(=映像)では小説以上にこの部分が剥き出しになると個人的に考えており、見逃せないポイントの一つです。


  3. キチジローのキャラクター描写

    人間のうちでも最もうす汚いこんな人間まで基督は探し求められたのだろうかと司祭はふと考えた。悪人にはまた悪人の強さや美しさがある。しかし、このキチジローは悪人にも価しないのだ。
    『沈黙』 location 2262

    やっかいものだが人間の弱さを抱えたところが憎めないキチジローというキリシタンが小説には登場します。
    話が進むとわかりますが、キチジローは言うまでもなく、イエスキリストを裏切ったユダがモチーフ。
    主人公とキチジローの関係はこの物語に大きく関わってきます。
    映像であのキチジローの行動を見せられるとなると、ただの嫌な男に映ってしまうのではないか、と個人的に心配しています。

    主人公以上に、キチジロー役である窪塚洋介の演技がこの映画の出来不出来を左右すると言っても過言ではないでしょう。
    日本人役者としての実力を見せてほしいところです。

最後に、遠藤周作が『海と毒薬』で神について書かれたお気に入りの引用を。

 「神というものはあるのかなあ」 「神?」
「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものから──運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」
『海と毒薬』 location 965 

【Kindle版もぜひ】

あのスコセッシ監督も絶賛する遠藤周作の『沈黙』。
実はKindle等の電子書籍でも出版されています。
日本の小説を原作としたハリウッド映画は珍しく、遠藤周作を読んだことがないという方も作品に触れてみる絶好の機会と言えるでしょう。
これから映画を観る予定の方も、映画を見終わったという方も、ぜひKindle版にて原作を振り返ってみてはいかがでしょうか。

沈黙(新潮文庫)

沈黙(新潮文庫)

『インタフェースデザインの心理学』からブログ記事に役立つ点を厳選

【ブロガーやWEBデザイナーにもおすすめ】

 今回紹介する本は、ブロガーホームページのウェブデザインに関わる方は必読の、ヒトの心理学からユーザーインターフェイスについて書かれた書籍になります。

【レビュー・感想】

この本を読んで、書きたい部分はたくさんあったのですが、
今回は特にブログやHPを運営する方に特におすすめしたい内容を紹介したいと思います。
まずはこちらから。

重要な内容を書く場所

 いちばん重要な情報(あるいは注目してほしい物事)は
画面の上から1/3までの場所か、画面中央に置きましょう。P14

人間は今までの経験と予想に基づいて行動する生き物。

それはホームページやブログを見るうえでも同じようです。

あまり伝えたいこと・重要な部分をもったいぶらずに、
画面の上部に書くようにしましょう。

僕自身だらだら書いてしまいがちですが、「ブログ記事ではまず結論を」というのはやはり正しいのでしょうね。

人の気持ちを動かす方法

人の信念を変えさせる上でいちばん効果的な方法は、
ちょっとしたことをやってみるよう仕向けることです。 P77

 ただ自分の意見を書くだけでなく、
実際に行動するように促せばより多くの読者の心に響くようです。

 

 情報をより伝わりやすくするには

 物語は人が情報を処理するのに適した自然な形式です。 P87

 物語は娯楽のためだけに存在するわけではありません。伝える情報がいかに無味乾燥なものでも、物語を使えばわかりやすく、
興味深く、記憶しやすいものになります。P87

 ブログで何かを紹介する際、どうしてもデータやリンクに頼りがちですが、
やはり自分で体験した「生の声」やストーリーがある記事の方が明らかに読みやすく、共感できます。
僕ももっと
自分らしい記事を書けるようにしたいですね。


 

人間の集中力

 人の注意力は長くても7~10分しか持続しないものと認識しておきましょう。 P115

僕のブログの滞在時間はこれよりは明らかに短いので、ここは問題ないかと思います。
Youtubeの動画も、なるべく5分以上のものを掲載しないようには心掛けています。

 たまにすごい分量の記事を書く人がいますが、
読む側とすればやはり後回しにしたくなります。

ある程度の分量になれば、いくつかの記事に分轄することも大切ではないでしょうか。

 

注意を引くアイキャッチ画像

危険、食べ物、セックス、動き、人の顔、物語は注意を引きやすい  123
人の顔写真には目が釘づけになる  顔のアップの写真を使いましょう。125
 偶然ですが、昨日投稿したUSJに任天堂のエリアができるという記事。

マリオの顔がドアップでアイキャッチになっております。
やはり上記のように表示されると、嫌でも目に付きますね。
しかもマリオの帽子は警告色の赤

人気のキャラクターには何かしらこうした心理的なトリックがあるのかもしれません。

 

予測をさせて読ませる

人は予測ができないと探索を続ける  P141  

例を挙げると、LINEのメッセージの欄に③のような未読メッセージ数が挙げられます。
やはり中身が分からないと内容を読みたくなりタップしてしまいますよね、
そういうことです。
これをホームページのデザインにも応用出来れば、
より多くの人を惹きつけることができそうです。


読者・リピーターを増やす方法

顧客の定着を狙い、リピーターが増えることを目指すなら、単に報酬が与えられるような仕組みではなく、人々が本能的にやりたいと思うことをさせる仕組み、
たとえば友だちとつながる、新しいことを学習するといったものを用意する必要があります。  P150

このブログの「人々が本能的にやりたいと思うことをさせる仕組み」と言えば、
以前書いた「やりたいことリスト」の記事が挙げられるでしょうか。

 

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この記事を読んで、
少しでも自分のやりたいことをやってくれる人が増えてくれるといいですね。

 

他人からみるブログ記事

クルーグはウェブページを車窓から見える看板のようなものと表現しています。
多くのユーザーはそうした看板を見るように、ウェブページに視線を走らせるだけなのだと心得ましょう。P154
他人からみる自分のブログなんてあくまで「車窓から見える看板のようなもの」です。
あまり気負わず、パッと目に留めてもらったらラッキー、ぐらいの気持ちで書きましょう。 
逆に言えば、やはりタイトルやアイキャッチ画像は重要なのかもしれませんね。
 

物語の説得力

データより物語のほうが説得力がある  P194
たとえば、「製品Aの使い方について、サンフランシスコのMさんが次のような話をしてくださいました」と言って、その後にMさんの話を続けるのです。P194

レビュー記事では特に役に立ちそうです。
商品そのものよりも、
意外と「どう接してどう感じたか」そういった体験やストーリーが読者を惹きつけるのかもしれません。

【ライター必読の専門書】

いかがだったでしょうか?
「インターフェスに関する心理学の本」、と聞くと難しそうな内容に思えますが、デザインや心理学に疎い方にほどおすすめの本と言えます。

大型本でかつ、実際の広告の例や、写真・図が豊富に使われているため、
時間を忘れて読むことが出来ます。

ブログやホームページデザインに関わる方がこの本を読めば、
デザインに対する意識が大きく変わることを保証します。気になる方はぜひ。

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

  • 作者: Susan Weinschenk,武舎広幸,武舎るみ,阿部和也
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2012/07/14
  • メディア: 大型本
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『柿の種』/寺田 寅彦:大正時代に雑記を書くとこんな感じ?

レビュー:ブログ記事の参考に

 今回紹介するのは、明治から昭和時代に活躍した、物理学者であり随筆家でもある寺田寅彦の随筆集「柿の種」です。

本の概要は下記をご覧下さい。

日常の中の不思議を研究した物理学者で随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という願いのこめられた、味わいの深い一七六篇。 (Amazon「BOOK」データベースより)

 

明治・昭和時代の随筆集

さて、さっそく内容・感想に触れていきたいと思います。

まず冒頭でこんな記述が。

元来が、ほとんど同人雑誌のような俳句雑誌のために、きわめて気楽に気ままに書き流したものである。 Read more at location 11(Kindle内でのページ数)

しかし、これだけ集めてみて、そうしてそれを、そういう一つの全体として客観して見ると、その間に一人の人間を通して見た現代世相の推移の反映のようなものも見られるようである。そういう意味で読んでもらえるものならば、これを上梓するのも全く無用ではあるまいと思った次第である。 Read more at location 16

雑記ブログを書いている人は、心を支えられる文章だと思います。
ブログ記事は、一人の人間というフィルターを通して出てきたものであるからこそ、意味があるのではないでしょうか。

僕自身も単に情報が書かれているだけの記事よりも、
個人の意見が少しでも込められた記事に惹かれます。

 

してみると、銀座というものの「内容」は、つまりただ商品と往来の人とだけであって、ほかには何もなかったということになる。Read more at location 429

何気ない文章ですが、鋭い洞察が込められていると思います。
この文章が書かれた大正・昭和の時代でも、すでに東京はこんな見方をされていたんだなぁと。

ginza

鳥の先祖の時代にはガラスというものはこの世界になかった。ガラス戸というものができてから今日までの年月は鳥に「ガラス教育」を施すにはあまりに短かった。Read more at location 1687

あくまで随筆集という形なので、こういったユーモアも頻繁に現れます。

 

 「庭の植え込みの中などで、しゃがんで草をむしっていると、不思議な性的の衝動を感じることがある」Read more at location 98

 なんてユニークな文章も。いかにも雑記ブログらしい文章です。
はてなダイアリー等でもウケそうな内容かと。

 

ふと妙な事を考えることがある。 この広い日本の、この広い東京の、この片すみの、きまった位置に、自分の家という、ちゃんときまった住み家があり、そこには、自分と特別な関係にある人々が住んでいて、そこへ、今自分は、さも当然のことらしく帰って来るのである。 しかし、これはなんという偶然なことであろう。Read more at location 683

自分も似たようなことを考えたことがあります。
ブログでいえば、"オピニオン記事"として一本書けそうな考え方。
昔も今も、考えることは一緒なのかもしれません。

 

そして文章はこう締めくくられます。

そんな事を考えながら、門をくぐって内へはいると、もうわが家の存在の必然性に関する疑いは消滅するのである。Read more at location 690

 なんか人間味が出ていて、ホッとしますよね。

AI(人工知能)が小説を書き始めたそうですが、こういう「人臭さ」の地点に辿り着くまではまだまだ時間がかかるのではないでしょうか?

ブロガーの方にも

読書の秋、ゆったりとした余裕のある時間に、さくっと一節読んでみてはいかがでしょうか。


「人間らしく書く」とはどういうことかを教えてくれる一冊でした。

Kindle端末やスマホ・iPhoneで無料で読めるので、ぜひどうぞ。

柿の種

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日本人が知らない村上春樹【Kindle/電子書籍】

【海外で評価も良い作家】

今や日本を代表する作家、村上春樹。
彼は日本のメディアに自分から登場することはめったにありません。
しかし海外、特にアメリカのメディアには比較的協力的であり、ニューヨークタイムスにコラムを投稿したり、短編小説を寄稿したりもしています。
今日は、そんな村上春樹を海外はどう見ているのかを知るきっかけになる一冊を紹介します。

【本の概要】

日本人作家ハルキ・ムラカミに、なぜ世界は熱狂するのか?
アメリカ、フランス、韓国、中国――。世界各国の作家、ジャーナリストが、謎に包まれた村上春樹の人物像と文学の真価を探る。 Amazon 内容紹介より

 *この電子書籍は、「ニューズウィーク日本版2013年5月21日号」に掲載された特集から記事を抜粋して編集したものです。 

【印象に残った部分・感想】

  「小説家はうまい嘘をつくことによって、本当のように見える虚構を創り出すことによって、真実を別の場所に引っ張り出し、その姿に別の光を当てることができる」と、村上は09年のエルサレム賞授賞式で演説した。 Location40(Locationとはkindle上のページ数を表します)
 「真実をそのままのかたちで捉え、正確に描写することは多くの場合ほとんど不可能だ。だからこそわれわれは、真実をおびき出して虚構の場所に移動させ、虚構のかたちに置き換えることによって、真実の尻尾を捕まえようとする。しかしそのためにはまず真実のありかを、自らの中に明確にしておかなくてはならない。それがうまい嘘をつく
ための大事な資格になる Location42
真実をそのまま描写するのを諦め、一旦虚構のかたちに置き換えるというのはいかにも小説家らしい方法です。 

5月3日、ボストン爆破テロ事件を受け、村上はニューヨーカー誌に「ボストンへ。ランナーを自称する1人の世界市民から」を寄稿し、報復を牽制した。  9・11テロの衝撃をくぐり抜けた村上としては当然の行動だ。この寄稿の中で興味深いのは、彼が地下鉄サリン事件の悲劇に触れていること。9・11テロが村上のアメリカ観を一変させたように、サリン事件は彼の日本と日本人に対する見方を変えた大きな出来事だった。  当時、村上はアメリカに住んでいた。日本の文壇は彼の文学性を理解できなかった。「(日本の)評論家たちは僕のことを嫌った」と、彼はずばりと語った。「それで日本を去った」 Location75

当時アメリカに住んでいた村上に日本へと視線を向けさせたサリン事件は、
よほどの衝撃を受けたのだな、ということを知ることができます。

また、インタビューで評論家に理解されないことがアメリカへ移った理由の一つであることを明かしていたことに驚かされます。

 サリン事件について書かれた『アンダーグラウンド』は過去記事を参照↓

日常生活の表面さえ突き破れば、その先には実は熱いものがあるという感覚を教えてくれる小説だ」 「私にとっては、それが『ねじまき鳥クロニクル』の魅力だ」とフランゼン。「この世界では表面に見えるよりもずっといろいろなことが起きていて、それを見つけるには外の世界に出ていく必要はない。私は内側に入っていく。見つけるために穴の中に下りていく」  Location237
ブロガーとしても、物事を表面的に捉えたものよりも、
自分というフィルターを通して出てきたものを記事にしていきたいです。
「人の心を不思議に打ち解けさせるものがあるんだよ」  これは、アオという登場人物がエルビス・プレスリーのある曲について語る感想だが、その表現はそっくりそのまま、村上春樹の日本語に当てはめることができる。 Location133
村上春樹をエルビス・プレスリーに例えるのは初めて見ましたが、
人の心を不思議に打ち解けさせるもの」が彼の文章にあるのは誰もが認めることでしょう。
村上作品は「文学」なのか。「もちろん」と、フリーマンは言う。だが、全米書評家連盟の会長も務めたフリーマンは批評家の観点から、「村上に賞を贈るのが難しい理由は2つある」と考えている。  まず、実際にはそうでなくても、即興で書かれたような雰囲気があること。第2に「ナンセンスな喜劇性があること。コミカルなテイストを持つ作家が高い評価を得るには時間がかかる」と、フリーマンは言う。Location217

ノーベル賞と村上について、海外の批評家が語る部分、非常に興味深いです。
やはり"ナンセンスな喜劇性"と表現されるように、アメリカ人から見ても、
彼の文章は理解が難しいのでしょうか。

日本の若者が味わった全共闘運動での挫折と喪失感、消費資本主義社会に移行する過程での精神的葛藤──『ノルウェイの森』はそうした若者の姿を知的で抑制された筆致と、みずみずしい感性で描いている。  この点が80年代の民主化運動に参加した韓国の若者の心をつかんだ。軍事政権を倒した後、虚脱と虚無感にとらわれていた世代だ。彼らは村上の小説に、自分たちが感じていた、豊かなのに空虚な社会の雰囲気がずばり描かれていると受け止めた。村上によって日本文学は初めて国籍と関係なく、純粋に1つの作品として受容されたのだ。  Location260

韓国での村上春樹の受容に関して書かれた部分。
消費資本主義社会に移行し空虚になった日本を書いた小説に、軍事政権後の彼らは共感したようです。

フランス人は、白黒をはっきりさせなくてはならない二元的な価値観から解放された村上ワールドに魅了される。善悪が表裏一体を成し、平凡な日常に美が潜み、社会の現実が不条理や幻想と共存する世界にのめり込んでしまう。Location303

フランス小説は確かに『モンテクリスト伯』等、二元的な価値観を元にしたものが多い気がします。

作家は規則正しく生活し、執筆を続けていくために地に足を着けて生きていくべきだと、村上は信じている。私はフランスの作家ギュスターブ・フローベールの「ブルジョアのように規則正しい生活をしなさい。そうすれば荒々しくて独自のものが書ける」というアドバイスを思い出す。Location105

毎日朝早く起き、ランニングを欠かさない村上春樹。
ブロガーのみなさんも「荒々しくて独自のもの」を書くために、
規則正しい生活をしてはいかがでしょうか?人のことを言える立場ではありませんが。

村上はノルウェーに次々と上陸する日本文学の先駆けとなった。13年はよしもとばなな、川上未映子、諏訪哲史といった小説家だけでなく、詩人の伊藤比呂美や平出隆の作品まで出版される予定で、NRKノルウェー公共放送局は3月に「日本文学出版ブーム」をラジオやインターネットで大きく取り上げた。 Location333

ノルウェーに「日本文学出版ブーム」なんてものがあったのですね。

【キンドル版のみ】

いかがだったでしょうか。
上にも書いたようにニューズウィークの雑誌から、
村上春樹の特集を抜粋した電子書籍になるので、ものの数十分で読むことができます。

価格も292円とかなりお買い得なので、Kindleを持っているハルキストは、ぜひ。

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Amazon.co.jp: 日本人が知らない村上春樹(ニューズウィーク日本版e-新書No.8) 電子書籍: ニューズウィーク日本版編集部: Kindleストア

 

【思考法】考えるための考具、持っていますか?ブロガー必読の一冊

【シンキングツールについてまとめた本】

 ブログを書くのに面白いアイデアが出てこない、というかたにおすすめの一冊です。
これを読めば、「ブログのネタがない」なんてことはなくなるはず。

博報堂の加藤昌治さん

博報堂で広報活動を担当してる加藤昌治さんが、
「学生からエグゼクティブまで」アイデアが欲しい全ての人へ書かれた本です。

丸腰で、仕事はできない。あなたのアタマとカラダを『アイデア工場』に変えるとっておきのシンキング・ツール教えます!『カラーバス』、『フォトリーディング』、『アイデアスケッチ』、『ポストイット』、『マンダラート』、『マインドマップ』、『アイデアスケッチ』、『ブレーンストーミング』、『5W1Hフォーマット』等すぐに使える「考具」が満載! Amazon 内容紹介より

印象に残った部分・感想

本書では、「考えるための道具」として『考具』が21個紹介されています。
今回、個人的に印象に残った『考具』をレビュー紹介したいと思います。

考具その1 カラーバス 見えるからみる、へ。

簡単に言うと、一日のテーマの色を決める、というもの。
注意してみる色を絞ることで、視覚を働かせます。

一見関係なさそうなものたちが自然に集まってしまうことがカラーバスの不思議なところ。 P46

カラーバスは、注目する視点をいつもと違うジャンルで絞ると発見の幅が広がることを教えてくれる考具ですね。P50

 

「形状」「位置」「音」「天井」 なんでもいいということで、
色々なものに応用が利きそうです。


ふと「四角いもの」にテーマを絞って
周りをぱっと見渡したところ、驚くほど四角いもので溢れていることに驚かされました。

考具その2   聞き耳 

まわりの会話に聞き耳を立てる、というシンプルなもの。
いわば間接的なインタビュー。

お客様の生の声、というけれど、広報や営業企画の仕事をしている人でも
本当の生の声を聞ける機会というのはめったにないのでは。
「生の声」はわざわざどこかに行かなくても聞けるのかもしれません。

 

考具その4   七色いんこ  

手塚治虫の作品から取られた名前だそうです。

一人で二役三役やる、
つまり
自分で実際に相手の視点で行動してみるということ。

アイルランドの「スーパークイン」では、月に1回、自分で買い物をすることが取締役に義務付けられているそうです。P72

やってみると分かることが実はたくさんあるんですね。

 

考具その6    臨時新聞記者

それはあなたが臨時の「新聞記者」になってしまうことです、

課題解決のヒントを求めて現場に行くことです。そして取材してください。P81

現場を知っていると、企画に説得力が生まれます。P85

やはり現場にこそアイデアは眠っているのでしょう。
まず自分の足で確かめる、ということを意識して、ブログの記事も書きたいと思います。

 

考具その17   ビジュアライズ

簡単に言うと、アイデアを考えるとき、理想形のイメージを立体的に、ビジュアルで考えていく、ということです。

ビジュアライズは企画化作業の奥義かもしれません。絵にさえできてしまえば、5W1Hに整理することも簡単だし、タイトルだってつけられそうです。
ビジュアライズ、本当に重要です。  P181

 
考具その21    問いかけの展開

突破口、あります。

それは「問いかけ方」を変えてみることです。  P203

与えられた課題を変えてみる、ずらしてみることはブログの記事を書く上でも大切なことの一つでしょう。

考具とは21世紀の「打出の小槌」なのではないだろうか・・・・は言い過ぎですか?  P214

最後に本当のアイデアマンになるための近道をこっそり。

それは、あなたの理想となる「考える人物像」を見つけて、勝手に自分の肩書きにしてしまうことです。 P232

 あの人ならどう考えるだろうか、という自分という存在を越えて考えるということでしょう。

色々紹介しましたが、行動に移さないと何も始まらないというのは言うまでもありません。 

シンキングツール

 上記に紹介した以外にも、様々な「考具」が紹介されていますので、
気になった方はぜひ。

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考具 ―考えるための道具、持っていますか? | 加藤 昌治 | 本 | Amazon.co.jp

 

ポッドキャストやってます。たまにゲイネタも話したり。

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