世界のねじを巻くブログ

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ワインソムリエの嗅覚の鍛え方:『言葉にして伝える技術』

【嗅覚の鍛える方法】

 みなさんは普段、嗅覚を意識して使えているでしょうか?
他の五感である視覚や聴覚と比べて、おろそかにしてしまっている人も多いはず。

今日はそんな方に向けて、ワインソムリエの田崎真也さんという方がが教える、「嗅覚を言葉にして伝える技術」を紹介したいと思います。においって大切ですよ。

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

【言語化する大切さ】

 この本で何度も語られるのは、「五感を言葉に表す」ということの大切さ

五感で受け止めた感覚は、潜在的な記憶にとどまることがあっても、それだけでは、自由自在に引き出せる記憶にはなっていません。
いつでも思い出し、より明確に呼び起こすためには、言葉が必要なのです。P4

 やはり感じるだけでは自分のライブラリに蓄えることはできません。
ブログでもそうですね。実際に文章にしてみて初めて、深く理解できることは多々あります。

もう一つ、「嗅覚」の本質を捉えるために書かれていたのが、「常套句を使わない」ということ。

味わいを表現する時には、表現する語彙も大事ですが、
その前に持つべきは、先入観ではなく、自分自身のモノサシだと思います。 P48

 味や香りに関するボキャブラリーなんて知れたものですが、
自分なりの表現を広げていきたいと思いました。

f:id:popmusik3141:20171027210018p:plain

 嗅覚の鍛え方も非常に印象的でした。

そのような場所で、もし花や緑を見つけたら、すぐに近くに寄って香りを嗅ぐのではなく、まずは遠巻きに香りを意識することがトレーニングになります。
そして次ぐに近くに寄って、あらためて花の香りを嗅いでみるということを習慣づけると、しだいに嗅覚のセンサーが鋭くなっていくと思います。 P187
なるほど、遠巻きにみて香りを嗅ごうとするのが大切なんですね。
なにごとも経験・練習が重要。
 
五感の鍛え方について、

・紋切り型の表現や先入観を捨てること
・五感で感じたことをそれぞれの言葉に置き換えていくこと
・言葉を増やし、分類して言語化し、記憶すること
・相手や状況に合わせて、より受け取りやすい、適切な表現を選ぶこと
・基本は、ポジティブなものの見方に立って表現すること

などが挙げられていました。
10月の目標のひとつとして「五感を鍛える」をあげていましたが、「言葉にする」ということはおろそかにしがちでした。
しっかり五感で情報をキャッチして、より深く自分の五感に触れていくようにしたいと思います。

【鼻が弱い方にも】

ワインソムリエが書いた本ですが、難しいことばなしに、「嗅覚」という五感につきわかりやすく優れた本でした。
「日常生活で匂いは意識していないなあ」というや鼻に自信のない方にもぜひおすすめです。

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

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Kindle Oasisの次世代モデルがすごい!【防水】

【キンドルオアシスニューモデル】

 2017年10月11日、アマゾンが電子書籍端末Kindleの次世代モデルである『Kindle Oasis (Newモデル)』を発表しました。予約はすでにこちらで開始されています。

発売日は2017年10月31日。価格は33980円から。
さっそくスペック詳細を見てみましょう。

【新モデルの特徴】

Kindleとしては第9世代となる、Kindle Oasis 2の大きな特徴を書いていきたいと思います。

防水機能搭載

今回発表された新型キンドルオアシスの大きな変更点として、防水機能を搭載したことがあげられるでしょう。IPX8の防水機能を備えており、水深2メートルまで最大60分耐えられるようです。お風呂やプールでも安心して読めますね。

楽天のKobo Aura H2Oに対抗して、やはりAmazonも防水モデルを投入してきました。

お風呂で読めるのは大きなポイントです。
アメリカ含む海外でうけるかどうかはわかりませんが、
日本人にとって、これはかなりうれしい新機能ではないでしょうか?

7インチの大画面

2017年版Kindle Oasisは、なんと7インチのE-ink液晶を搭載。
現状ラインナップは6インチまでなので、ひとまわり大きく感じられることでしょう。

このKindle Oasis次機種が発売されれば、現行ラインナップの中では最大の液晶サイズとなります。(昔発売されていたKindle DXが懐かしいですね・・)

重さ・軽量化

7インチの大画面かつ、他モデルと遜色ないバッテリーの持ち、かつ防水。
それでも、現行のKindle Paperwhite(205g)と比較してもさらに軽量化された194gという軽さ。194gといえば、普通の文庫本ぐらいのイメージです。
重量・薄さに関しては相当なこだわりをもって作られたのではないでしょうか。

防水というとどうしても機構的に重たくなってしまう傾向がある中、個人的にこの点は大きく評価したいと思います。

マンガはシリーズごとにまとめて表示

ソフトウェアの面でも改善点があります。
どうしても冊数が多くなりがちな漫画・コミックも、シリーズごとにまとめて表示ができるようになるようです。
いわばフォルダ機能のようなものでしょうか。
小説・書籍にもフォルダ分けできればいうことはないのですが。

 

片手で読める

タッチパネルのみならず、物理キーがついており、片手だけでもページめくり/ページ戻しが簡単に行えます。両手で持たなくて良いのもキンドルオアシスの長所です。
上下反転も自動で感知してくれるので、右手左手どちらでも対応可能です。

 

価格

価格も前機種である初代キンドルオアシス(35980円)と比べると、33980円と少しお買い得にはなっております。フラグシップモデルのため安いとはいえないですが、新型は値段でもかなりがんばっている方ではないでしょうか。

【マンガ用にもおすすめ】

大画面かつ32GBの大容量、そしてお風呂でも読めるKindleのニューモデル。
スペック的に前機種と比較しても史上最高のKindeであることは間違いありません。
CPUも変更され、さらにサクサクになっているとの噂も。

漫画・コミック、雑誌用にもベストな選択と言えるのではないでしょうか。

Amazonの新サービス「Prime Reading」もはじまりましたので、買うにはよい機会だと思います!
在庫もなくなってきているようなので、気になる方はい今のうちに。

Kindle Oasis (Newモデル) 8GB、Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル、電子書籍リーダー

 こちらの記事もあわせてどうぞ。

ブロガーや小説家なら類義語辞典を持っておくべき5つの理由

【類語実用辞典/三省堂】

 ブロガーや物書きの方なら最低、辞書の一つや二つは持ってますよね?
文章を書く方なら必須アイテムである類義語辞典。

「え?持ってないや。」という方におすすめの類義語辞典を今回紹介したいと思います。 

【ウェブライター・物書きにおすすめ】

 今回紹介するのは三省堂から出版されている、『必携 類語実用辞典』。

こんなやつです。詳細はアマゾンのページへ。

必携 類語実用辞典

必携 類語実用辞典

はてなブロガーや小説家なら辞書を持っておくべき5つの理由を書いていきたいと思います。

1:「知っている」から「使える」語彙に

この辞書の収録語句数は51,000語。といえども、見慣れた分厚く重たい辞書と比べると、手のひらサイズの小型版なので、収録語句は絞られています。
そのため、知っている語句がわりかし出てきます。

でもこれがこの類語実用辞典のミソ。

「知ってる」言葉ではあるけれども、実際に"使える"となると怪しい、そんなことば語彙がたくさん収録されています。
ブログやウェブ記事・ツイッターに使う語彙は十分すぎる程カバーしてくれています。
本を書きたいという小説家にも必要最低限の語彙はそろっています。

あまり難しすぎるワードは載ってないところがいいですね。

 

2:ポケットサイズ

今回紹介する『必携 類語実用辞典』は、"辞書"と聞くと思い浮かべるような人を殴れる凶器のゴツさではなく、スマホより少しだけ大きいポケットサイズのハンディタイプになります。

必携 類語実用辞典 三省堂

文庫本よりも一回り小さいです。鞄の隅に忍ばせても全く負担になりません。
「辞書を持ち歩くのはちょっとなあ」というライターの方におすすめです。

 

3:お手頃価格

たいてい辞書って二千円~三千円以上するのが当たりまえですが、
この三省堂の『必携 類語実用辞典』たったの1080円。
普通の書籍より安いです。
アマゾンでもサッと購入できるのでぜひ。

 

4:ことばとの距離が縮まる

上にも述べたように、かなりお手頃なサイズの辞書なため、
暇なときや隙間時間を用いて新しい言葉に触れることができます。

普段ブログ記事を書いたり、ツイッターでつぶやいたりするなかで、「同じような言葉しか使ってないな~」と心当たりのある方は、ぜひ辞書をカバンの隅に忍ばせてみてはいかがでしょうか?

ことばに対する認識が大きく変わることでしょう。

 

5:知らない語彙に毎日出会える

1では「収録語彙が限られている」と書きましたが、
それでも51,000語が収録されています。

例えば、今パッと開けた21ページのなかで知らない語彙をあげてみると、

遁辞  弁疎  金殿玉楼  陋宅 

などがでてきます。

一日に1~2ページを眺めるだけでも、どんどん使える語彙が増えていくことは間違いありません。

知らない単語に線を引いて、使える語彙を増やしていきましょう。

【ポケットに忍ばせて】

法律をかじったことがある方ならご存じであろうタイトル騙しの 『ポケット六法』とは異なり、きちんとポケットに収まるサイズです。というかむしろ手のひらサイズ。

類語実用辞典、文章を書く方なら持っていてまず損はしないので、この機会にぜひ購入してみてはいかがでしょうか?

必携 類語実用辞典

必携 類語実用辞典

『泥の河/宮本輝』映画版の感想・レビュー:大阪人なら必見

【小栗康平監督による劇場版】

 2017年9月6日より、「午前十時の映画祭」で宮本輝の名作『泥の河』が公開されます。(※地域により公開日が異なります)

原作の小説『泥の河』は学生の頃からの愛読書なのですが、
映画の再上映に備えまた読んでみたので、改めて感想を書きたいと思います。
[※追記(2017.9.23):映画版を観てきたので箇条書きで軽く感想を追記しました。]

 「午前十時の映画祭って何?」という方は下記の記事をどうぞ。

 

【宮本輝の処女作】

 この『泥の河』は戦後の大阪・安治川の河口に住む少年と、川の"舟"に住む貧しい少年との交流を描いた作品。

映画は1991年に公開された、小栗康平監督による白黒映画になります。
まだ映画版は観たことないのですが、かなりしっかり戦後の時代が描かれてそうです。
映画の内容はまだ書けないので、小説版について書きたいと思います。

原作『泥の河』は100ページ以下なのに、話の展開もかなり濃く、
冒頭の馬車の場面、お化けの鯉、天神祭、ハイライトである蟹のシーンなど見所がたくさん。
映画でどこまで再現されているのかわかりませんが、非常に楽しみです。

降りしきる雨が粘土色の川面に無数の波紋を落としていた。濃い藍色の水がその中で縞模様を描きつつ渦巻いている。汚物の群れが橋げたにぶつかってくるくる廻っていた。信雄はしたたる雫を掌でぬぐうと、必死になって川面を探った。 「うわあ!」 そして思わず叫んだ。薄墨色の巨大な鯉が、まるで雨に打たれるために浮きあがってきたかのように、水面でゆっくりと円を描いていたのである。
 宮本輝 『泥の河』より  位置:163

「もう戦争はこりごりや」
「そのうちどこかのアホが、退屈しのぎにやり始めよるで」 
 宮本輝 『泥の河』より  位置: 81


アニメ映画『この世界の片隅に』を観て思いましたが、
一般市民の心に響くのは、やはり戦争そのものより戦争に振る舞わされる人々の姿。
『ハクソー・リッジ』や『プライベート・ライアン』ももちろん迫力があってよいのですが、共感できるのは、一般市民が生き抜く姿でしょう。
まあ、そうはいっても明日は迫力たっぷりの『ダンケルク』見に行きますが笑

【川三部作】

宮本輝の小説といえば、やはり"川三部作"が有名です。

『泥の河』『蛍川』『道頓堀川』の3つ。
いずれも川を舞台にした人々の生活を描いた作品です。

なぜか『泥の河』だけ「泥の川」ではなく 「泥の」なんですよね・・
川三部作の中でも僕は『泥の河』がフェイバリットです。
他にも短編や『青が散る』など名作揃いの宮本輝、読んだことがない方はぜひ。
文章が綺麗でかつ読みづらくもなく、登場人物の心情をそこはかとなく描くのが本当に巧いと小説家だと思います。

 

【レビュー・感想】

※追記(2017.9.23):「午前十時の映画祭」で映画版を観てきたので箇条書きで軽く感想をネタバレ注意。

  • 全体的に小説の雰囲気をしっかり再現している
  • みんな演技がうまい。
  • 子役も良い味でてる。
  • 馬でさえ演技がうまい笑
  • 手品のシーンもしっかり健在
  • 小説以上に戦争と向き合う感じだった。戦争の傷跡のクローズアップとか。
  • 原作にある、幼鳥を潰すシーンがなかった。飛行機を盗むシーンもカット。
  • 天神祭のシーンの再現度はかなりのもの。
  • ところどころで出てくるユーモアが映画の暗い雰囲気をうまく和らげている
  • 病院や学校のシーンなど、原作にはなかった場面を空気感を壊さずに加えている
  • お父さん役の田村高廣がかっこよすぎ。
  • 銀子ちゃんも小説通りの静かだけどどこか惹きつける演技がすごかった。
  • 喜一の蟹を燃やすシーンは、もっと狂気的に撮った方がよかったと思う
  • ラストシーンでお化け鯉が出なかったのが意外だった。これは小説どおりにすべきだったのでは?
  • 見てはいけない大人の世界をみて育っていく構図は「アラバマ物語」と似ているかも

映画館で観れててよかった。じんわり心に残る映画でした。

【Netflixでもぜひ】

今回再上映される『泥の河』、「午前十時の映画祭」機会を逃すとなかなか映画館で観ることはできないでしょう。
「でも午前10時に映画は厳しいなぁ」という方は、あの映像配信サービス「Netflix」でも見ることができますので気になる方はネットでもどうぞ。

小説版は 大阪人、いや、関西人なら必読の一冊です。
Kindle版(電子書籍)でも読めるので、気になる方は原作の小説をぜひ。

螢川・泥の河

螢川・泥の河

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『弟の夫』 第4巻(最終巻)発売、実写化も【ゲイ漫画】

【同性愛を描いたマンガ】

先日、ゲイアートの巨匠とよばれる田亀源五郎さんが描いた『弟の夫(4)』、
最新巻が発売されました。

さっそくKindle版を購入してみたので、感想を書いてみたいと思います。

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

【あらすじ・ストーリー】

『弟の夫』は、今回発売された最終巻で完結した、全四巻の漫画です。
タイトルでは「ゲイマンガ」と書きましたが、決してLGBTのみ向けられたものではなく、異性愛者でも問題なく楽しめる作品となっております。

第一巻のあらすじは下記の通り。

弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、マイクと名乗る男がカナダからやって来た。マイクは、弥一の双子の弟の結婚相手だった。「パパに双子の弟がいたの?」「男同士で結婚って出来るの?」。幼い夏菜は突如現れたカナダ人の“おじさん”に大興奮。弥一と、“弟の夫”マイクの物語が始まる――。(アマゾンより)

このマンガの面白いところは、死んだ弟の恋人であるカナダ人のマイクと、死んだ弟の兄との交流が描かれるところ。
つまり、ゲイ同士を描いたものではなく、
ゲイと異性愛者の交流を描いたユニークな作品となっております。

他におすすめする理由がこちら。

子供の純粋さと主人公の偏見との対比

小学生の女の子である夏菜は、同性愛というものに全く偏見を持たないのに対して、偏見を持つ父はマイクのことを快く思いません。その対比が、読者に「偏見」というものが何か、ということを教えてくれる大きなカギとなっています。

 ※追記(2017.11.4):田亀原五郎さんの最新作『ゲイ・カルチャーの未来へ』についての感想・レビューを書いてみました。

世の中の偏見を浮き彫りに

マイクと生活する中で、主人公の弥一は世の中に残る偏見に直面します。
異性愛者として生きるだけでは感じることができない小さな偏見。
そんなものをこの漫画は浮き彫りにしてくれます。

 

新しい家族のかたち

弟とマイクの男同士の結婚生活のみならず、離婚し男手ひとつで女の子を育てる主人公。男性と女性が結びつき、二人で暮らすことが必ずしも正しいものではないという作者の声が聞こえるような作風になっております。

単なる同性愛モノではなく、
”家族”を描いた心温まるホームストーリーを描いていることが、この漫画の最大の特徴ではないでしょうか。

【ネタバレなしの感想】

第四巻につき、可能な限りネタバレを押さえた感想を。

話の動きが多かった1,2,3巻と比べ、4巻はおとなしめな展開。
主人公の弟への思いがしっかり描かれていたのが◎

ラストは正直展開が読めたというか、予定調和的な終わり方であることが否めないですが、希望を残す終わり方だったので、いち読者としても非常に勇気づけられました。

 ゲイはもちろん、そうでないストレートの方でも十二分に楽しめる内容となっておりますので、ぜひ読んでみてください。

 

【ドラマ化も NHKで】

※追記(2017.12.5)

なんと佐藤隆太×把瑠都という組み合わせで、実写ドラマ化されるとのこと。
NHK BSプレミアムにて、3月4日から、毎週日曜22時に放映予定です。

これは気になりますね。ドラマの前に、ぜひ原作のマンガをチェックしてみて下さい。
また続報があれば追記したいと思います。

 弟の夫(4)
弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

第一巻の電子書籍(キンドル版)は270円とお買い得なので、気になる方はぜひ。

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

地下鉄サリン事件から22年『終わりなき日常を生きろ/宮台真司』感想

【世界初のバイオテロ】

今日2017年3月20日は、あの「地下鉄オウムサリン事件」からちょうど22年とのこと。
以前、オウム真理教について書かれた本を読んだので、少し感想を書きたいと思います。

まず、地下鉄サリン事件とは何だったんでしょうか?
僕の世代ではぼんやりとしか知らない方も多いかと思いますので、詳しく知りたい人はウィキペディアを読んでみてください。
地下鉄サリン事件 - Wikipedia

 地下鉄サリン事件が大きく取り上げられた理由としては、死者数13人・被害者6,300人という数ももちろんですが、「世界初の無差別バイオテロ事件」であったこと、
また、オウム真理教の幹部がいわゆる”高学歴”の大学出身の人ばかりで構成され、さらに医者という人の命を最も深く考えるはずの職業である人も、この無差別テロ事件に加担していたことなどが理由に挙げられます。

【感想・レビュー】

今回紹介する本は、宮台真司さんという方が書かれた『終わりなき日常を生きろ』というタイトルの著作。
この著者の名前は初めて知ったのですが、宮台真司さんは当時女子高生の行動を社会構造の変化から考察して話題を呼んだ社会学者とのことです。
紹介する著作も、ブルセラショップに通う女子高生とサリン事件の間には密接な関係がある等独自の視点で書かれていました。

この本の中で特に印象に残ったのは下記の文章。

私たちの時代には「良きことをしたい」という良心への志向が強ければ強いほど、「何が良いことなのか分からない」という不透明感が切迫し、透明な「心理」への希求が高まる。その結果、たとえば彼らが救済という「良きこと」に向けて強く動機づけられていればいるほど、児戯のようなフックに引っかかって世界観を受容する。
『終わりなき日常を生きろ』 P62 

「良心的でありたいのに、何が良きことなのか分からない」時代の中、「終わりなき日常」に適応しそこなった人たちは「必ずや訪れる未来の救済の日」を信じざるを得なかったのだ、という内容。

ハルマゲドンと称された『大いなる救済のための犠牲』という図式を信者がなぜ信じ込んだのか、少し理解できた気がします。
あの「尊師マーチ」を見ても馬鹿馬鹿しいと思えないレベルまで洗脳されていれば、サリン事件が起こるのは当然だったかもしれませんね。

「終わりなき日常を生きる知恵」をブルセラショップに通う女子高生から見いだそうとする作者の試みは今の時代から読んでも非常に斬新でした。

他にもマインドコントロールはどのようにして為されるのか、「末端の信者はいい人」ではない、等オウム問題を深く考察した内容が書かれていました。

【信者数を増やすオウム】

サブカルチャーの「動き」の中にこそ、オウム問題の真の姿がある、とする独自の視点から書かれた本ですが、リアルタイムではそれほど記憶がない僕でも非常に興味深く読めました。

最後に、この不安定な世の中に警告をならす意味で、下記文章を引用しておきたいと思います。村上春樹さんがオウム信者へのインタビューをし集めた『約束された場所で』という本より。

私たちの日常生活と、危険性をはらんだカルト宗教を隔てている一枚の壁は、我々が想像しているよりも遙かに薄っぺらなものであるかもしれないのだ。 
村上春樹著『約束された場所で』 P332より

今なお、オウム真理教は世界各地で信者数を増やしているそうですが、
二度とあのような惨事が起こらないことを心から祈ります。

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)

村上春樹が地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめた本の感想もどうぞ。

ナショナル・ジオグラフィック誌の"性特集"を読んだ感想

【LGBTに限らない性別】

僕は昔から暇な時にナショナル・ジオグラフィックという雑誌を読むのがの習慣なのですが、(そういや村上春樹の最新作にも登場しました)今回特に気になった号を紹介したいと思います。

少し古いですが、今回紹介するのは「ジェンダー革命」と題した特集を組んだ2017年1月号のナショナル・ジオグラフィック日本版。

文化や社会、科学といった多様な側面から、「性」について書かれた特集です。 

曖昧になる男女の境界

 まずは性を定める定義から詳細に説明されています。
例えばこんな感じ。

ノンバイナリー

性辞任や性別表現は明確な境界がない連続的な概念だとする考え方 P12

それなりに知っているつもりだった僕も初めて聞くような用語がちらほら。

 

「研究者から見たジェンダー」というコーナーで

どの文化圏でも、奇数は男性的、偶数は女性的と見なされる。 P29


とあったのですが、日本ではあまり意識しないような・・・。
僕が無知なだけかもしれませんが。

また、他にも「一人前の男」への道 と題したコーナーでは、
戦士として忠誠心を高めるため年長者と性的関係を結び、殴打に耐えて根性を鍛えたという紀元前800年頃のスパルタからアメリカ・イタリアのマフィアまで解説が書かれています。
 

また、「男らしさ」を獲得するための通過儀礼として、割礼の紹介がされていました。

オーストラリアのアボリジニの一部族 マドゥジュラ族の少年たちは切り取られた自分の包皮をのみ込まなければならない。 P95

なんと。やはり世界は広いですね。

他に興味深かった内容として、
ディズニー映画のせりふを分析した結果、技能に関する褒め言葉は増加傾向にあり、容姿に関するものは減少してきている、など興味深い分析がたくさん。

 

1974年に初めて父親の育児休暇を導入したスウェーデンで、
父親が家事や子育てに奮闘する様子を写真で捉えた「パパたちの育休」も見応えありました。

ナショナル・ジオグラフィックを読むと、日本という場所にいることをふと忘れさせてくれるので個人的には欠かせない雑誌です。
疲れたとき・旅行したい気分になった時は特におすすめです。

電子書籍・Kindleでも

National Geographicの特集は表紙のタイトルで買うと思ったよりページ数が少ない、ということがたまにあるのですが、今回のジェンダー特集はなかなかのボリュームです。
気になる方はぜひ。

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2017年 1月号 [雑誌]

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  • 作者: ナショナルジオグラフィック
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  • 発売日: 2016/12/29
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www.nejimakiblog.com 

『騎士団長殺し』村上春樹の新作を5章読んだ感想【ネタバレ含む】

【画家の男が主人公】

 ついに村上春樹の最新作『騎士団長殺し(英題:Killing Commendatore)』が発売されました。

近くに深夜から発売しているところを見つけたので早速購入し、はじめの5章分ほど(約100ページ程度)を読んでみたので軽く紹介したいと思います。

極力余計なネタバレをしないように書いていますが、
今回ストーリーについては一切語られず発売されたため、どんな情報もネタばれとなってしまいます。
本を真っさらの状態で読みたいという方はこの先を読まないことをおすすめします。

『騎士団長殺し』って何?という方は下記の記事をどうぞ。

【あらすじ・ストーリー】

裏表紙に書かれているあらすじは下記のとおり。

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた・・・・・それは孤独で静謐な日々であるはずだった。 騎士団長が顕れるまでは。 『騎士団長殺し』背表紙より

 これだけストーリーをつかむのは難しいですが、「何が起きるんだろう」と期待させてくれるあらすじですね。

【表紙・背表紙・裏表紙】

単行本のデザインはこんな感じ。
「第1部 顕(あらわ)れるイデア編」「第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」ともに剣が描かれたシンプルな表紙です。フォントも少し凝っていて良いですね。

騎士団長殺し表紙

背表紙

騎士団長殺し背表紙

裏表紙

騎士団長殺し背表紙

さっぱりとしたデザインです。緑・赤の色は何か意味が含まれているんでしょうか。

【レビュー・感想】

あくまで100ページほど読んだ時点での感想を書きたいと思います。

プロローグはダークな雰囲気で始まり、物語のスケールを感じさせてくれます。
「顔のない男」といういかにも村上ワールドな登場人物も現れたりなんかも。

今回のストーリーは画家の男が主人公。妻と離婚していろんな場所を移動したりで話が進んでいきます。「孤独な中年の男が主人公」という点は往年の村上春樹の作品でもよく見られるパターンだと思います。

画家が主人公ということで、雨田具彦という画家が書いた「騎士団長殺し」という題の絵がタイトルにもあるように、この本の大きなキーとなるでしょう。

雨田具彦という画家の名前が何度も出てくるので実際にいるのかと思って調べてみましたが、グーグルに全くヒットせず、あくまで物語上の人物だと思われます。

また、かなり序盤の方からセックスについて一部描かれる場面があり、性描写が苦手な方はちょっと抵抗感を示してしまうかもしれません。
(まあ性描写は村上春樹に限ったことではないのであまりとやかく言うのはどうかと思いますが。)

他の点に触れるとすれば、いつもの村上春樹の作品のように
ベートーヴェンやシューベルト等のクラシック音楽をはじめ、ローリング・ストーンズの「無情の世界(You Can't Always Get What You Want)」やらシェリル・クロウなど様々な音楽が登場します。

お得意のジャズが(100P読んだ時点では)まだ登場していない以外は、いつも通りと言えるでしょう。

やはり以前の記事でも触れたように、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』がストーリーに大きく関係しているようです。

「遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える」の章タイトルは「1073年のピンボール」を思い起こさせますし、他にも時折、「アンダーグラウンド」など昔の作品のエッセンスが感じられる部分があります。

【初めて読むという方にもおすすめ】

まだ5章ほどしか読んでいませんが、大きな「旋回」を期待させてくれるストーリーです。「おしゃれ感」は今回抑え目な気がするので、他の作品のような主人公のキザな言動が鼻につく、ということも少ないかと思われます。

冒頭だけでも村上春樹の世界観がたっぷり詰め込まれていますが
話自体はそれほど難解ではないので「はじめて村上春樹に挑戦する」という方にもおすすめできそうです。
気になった方はぜひ。第3部は出るんでしょうか…?

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

『これで駄目なら』作家カート・ヴォネガットによる卒業式スピーチ集

【村上春樹も影響を受けた作家】

今回紹介するのは、現代アメリカ文学を体現する小説家の一人であるカート・ヴォネガットの卒業式スピーチをまとめた本です。
カート・ヴォネガットといえば、『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』 等の衝撃作をいくつも書いたSF作家であり、『モンキー・ハウスへようこそ』は特に何度も読み返しました。

そんなヴォネガットが独特のブラック・ユーモアを交えながら人生の教訓を示してくれるのがこの『これで駄目なら』という本です。

原題は『IF THIS ISN'T NICE WHAT IS?』であり、スピーチの際中に色んな文脈で何度も登場するセリフになっております。

現代アメリカ文学を体現する小説家

まずはダン・ウェイクフィールドという方による「序文」から。

彼は「芸術家の社会的機能は、人々が以前にも増して人生を好きになるようにすることだ」と書いている。たとえばと訊かれて、「ビートルズがやったことだね」と答えた。 location52

 こういうことを言いながら、実際に体現しているところがかっこいいですね。
僕もブログを読んでくれる方が「以前にも増して人生を好きになる」ような記事を書いていきたいと思います。

 

「……わざわざわたしの本を読んで、教育を受けた人のように振る舞おうという人にお知らせします。わたしの本には性的なことも、いかなる形でも暴力を擁護するような議論も書かれていません。人々により親切に、責任をもって行動するようにお願いしているだけです。登場人物の口が悪いのは本当です。実際、現実の人間は口汚いわけですから。特に兵士と肉体労働者は口が悪い。どう隠したって子供たちはちゃんと知っています。実際、そういう言葉が子供を大きく傷つけることはないのです。自分たちが若かった頃を思い出して下さい。我々を傷つけるのは、凶悪な行為と嘘なのです location 155

こういった彼のとにかく素直な部分が、いろんな層から人気を集める理由の一つともいえます。
実際、ヴォネガットの小説がSFという形を取りながらも妙にリアルな雰囲気を持っているのはそのためでしょうか。

実体験を元にしてSFを書き、サイエンス・フィクションでありながらも嘘がない、
そんなイメージです。

また、本の中でも言及されますが、卒業式スピーチをする人物としては人気があったものの、ヴォネガット自身は大学を卒業していないそうです。

本を読むことをやめてはいけない。本はいいものだ──ちょうどいい感じの重さがある。指先でやさしくページをめくるときのためらい。わたしたちの脳の大部分は手が触れているものが自分にとっていいものなのか悪いものなのかを見定めるのに使われている。どんなちっちゃな脳でも、本はいいものだとわかるんだ。 location 458

 僕はこの本を電子書籍で読んでいたため若干の罪悪感を感じましたが、読書をする人にとっては救われる言葉ではないでしょうか。
電子書籍だけでなく、指先でページを感じる本も大切にしていきたいですね、

 

わたしたちの政府と企業とメディアとウォールストリートと信仰と慈善事業団体がどれほど堕落し貪欲になったとしても、音楽は完璧に素晴らしい存在のままだろう。 location 682

ブルースは抑鬱を家から掃き出してくれるんじゃなく、部屋の隅に追いやってくれる。location 707

ヴォネガットは音楽が好きなことでも有名であり、特にジャズとブルースについてはなんども言及しています。ジャズ好きの村上春樹がカート・ヴォネガットの文体に大きく影響を受けていることは有名ですが、音楽が二人の文体を支えていることは間違いないでしょう。

 ブルースを聴いたことがないという方は、下記の記事からブルースを聴き始めてみることをおすすめします。

 

www.nejimakiblog.com

 

芸術にかかわることで、うまくできてもできなくても、魂は成長する。ほんとのことだ。シャワーを浴びるときは歌い、ラジオを聞いて踊るんだ。語り手になろう。 location 1312

「芸術」なんてレベルには遥かに及ばないですが、ブログを書いたり、絵を描いたり、小説を書いたりする人にとっては大きな励みになる言葉かと思います。
上記のような文章を読むと、僕も小説を書かねば、という気持ちは高まるばかり。
物語を語れるって素晴らしいですよね~

 何日かいいことが続いたなら、いいほうの異常が続いたってことだ。location 1327

 こういったシニカルな思考がヴォネガットらしくて好きです。

村上春樹が好きな方にもおすすめ

ところどころブラックジョークで挑発したり、場を和ましたりする彼のスピーチがまとめられた一冊。読めばヴォネガット流の人生の教訓というものを学ぶことができるでしょう。 Kindle版で気軽に読めるのでぜひ。

これで駄目なら

これで駄目なら

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『沈黙-サイレンス-』遠藤周作の原作を踏まえた映画版の見どころ

【映画の前に小説版のおすすめ】

遠藤周作といえばやはり『海と毒薬』が有名ですが、
この作者の傑作としてもう一つよく挙げられるのが、キリスト教がテーマの『沈黙』。

なんとこの小説が2017年1月21日(土)に『沈黙-サイレンス-』としてあのマーティン・スコセッシ監督によりハリウッド映画化したものが公開されます。

マーティン・スコセッシ監督といえば、『ディパーテッド』や『タクシードライバー』、『グッドフェローズ』等名作を生み出す映画界の巨匠

窪塚洋介や浅野忠信など、日本人の俳優も出演します。

今回せっかくなので、『沈黙』を初めて知ったという方や、原作を読んだことがない方に向け、ネタバレなしで軽く紹介してみたいと思います。

【あらすじ・ストーリー】

キリスト教宣教師の間に、「ある有名なキリスト教父が鎖国時代の日本でキリスト教を棄教した」という驚くべき報告が知れ渡ります。
主人公ロドリゴは、自分が小さい頃お世話になった方がキリスト教を裏切ったことが信じられず、真実を確かめるべく、宣教師としてロドリゴは日本へ上陸しますが・・・。

 ネタバレなしで書くとあまり大したことは書けないのですが始まりはこのような内容。

【小説を踏まえた映画版のみどころ】

原作の『沈黙』を踏まえ、映画で個人的に注目している点をいくつか書きたいと思います。

  1. 主人公ロドリゴの心情の変化をうまく捉えられているか?
    神はなぜ、このような苦難を信徒たちの上にお与えになるのか、私にわからなくなることがあります。 『沈黙』 location577
    小説版ではロドリゴの内面の感情の変化が事細かに描写されており、読者は主人公の心情の揺れに入り込むことができます。
    しかし映画となると、これはかなり難しいでしょう。
    主人公に自分の感情を込めたセリフを延々と言わせるわけにもいかず、どのように主人公の内面を描くのか。
    あなた(=神)はいつまでも沈黙を守られたが、あなたはいつまでも黙っていられない筈だ。『沈黙』 location 1980
    スコセッシ監督の手腕が大きく問われます。


  2. 欧米から見た当時の日本のキリスト教とは?
    遠藤周作自身は「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」に悩み続けました。その影響もあってか、この小説では日本でのキリスト教がすごく歪なものとして描かれています。江戸時代なので仕方ありませんが、遠藤周作はこの舞台を用いて「日本の異質さ」を強調して描いているように思います。
    欧米人(=スコセッシ監督)の視点からすると、「異国のキリスト教」というのはどのように映るのでしょうか。
    映画版(=映像)では小説以上にこの部分が剥き出しになると個人的に考えており、見逃せないポイントの一つです。


  3. キチジローのキャラクター描写

    人間のうちでも最もうす汚いこんな人間まで基督は探し求められたのだろうかと司祭はふと考えた。悪人にはまた悪人の強さや美しさがある。しかし、このキチジローは悪人にも価しないのだ。
    『沈黙』 location 2262

    やっかいものだが人間の弱さを抱えたところが憎めないキチジローというキリシタンが小説には登場します。
    話が進むとわかりますが、キチジローは言うまでもなく、イエスキリストを裏切ったユダがモチーフ。
    主人公とキチジローの関係はこの物語に大きく関わってきます。
    映像であのキチジローの行動を見せられるとなると、ただの嫌な男に映ってしまうのではないか、と個人的に心配しています。

    主人公以上に、キチジロー役である窪塚洋介の演技がこの映画の出来不出来を左右すると言っても過言ではないでしょう。
    日本人役者としての実力を見せてほしいところです。

最後に、遠藤周作が『海と毒薬』で神について書かれたお気に入りの引用を。

 「神というものはあるのかなあ」 「神?」
「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものから──運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」
『海と毒薬』 location 965 

【Kindle版もぜひ】

あのスコセッシ監督も絶賛する遠藤周作の『沈黙』。
実はKindle等の電子書籍でも出版されています。
日本の小説を原作としたハリウッド映画は珍しく、遠藤周作を読んだことがないという方も作品に触れてみる絶好の機会と言えるでしょう。
これから映画を観る予定の方も、映画を見終わったという方も、ぜひKindle版にて原作を振り返ってみてはいかがでしょうか。

沈黙(新潮文庫)

沈黙(新潮文庫)