世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/電子書籍/Lifehack/Podcastなどについてお伝えします。ポッドキャスト「ねじまきラジオ」配信中。

2017年に心を揺さぶられたKindleの電子書籍10選

【キンドルの名著まとめ】

2017年も残すところあとわずか。
せっかくのなので、今年読んだKindle本の中で、特に心を揺り動かされた10冊を厳選した記事を書いてみました。

いずれもまだブログで紹介していない電子書籍ばかりですので、キンドルをお持ちの方はぜひチェックしてみてください。

【メディア論からワイン、LGBTまで】

 まずはブログ記事らしく、この本から紹介してみます。

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

シリコンバレーでの経験を踏まえ書かれた佐々木俊尚さんのメディア論。

 つまり家族や恋人、友人、同僚といった仲間たちと共有したり、議論したいと思うコンテンツを提供する最適化が必要だという主張なのである。
-286ページより

アップル・グーグル・フェイスブックの関係や 「Buzzfeed」の戦略についても書かれ、ブロガーなら一度は読んで欲しい一冊。

 

Do you talk funny? (英語)
Do You Talk Funny?: 7 Comedy Habits to Become a Better (and Funnier) Public Speaker

Do You Talk Funny?: 7 Comedy Habits to Become a Better (and Funnier) Public Speaker

作家や起業をこなすDavid Nihillというアメリカ人によって書かれた本。
アメリカの漫談である「スタンダップコメディ」を日常生活にいかそう、という視点で
非常に深い洞察をもって書かれた一冊です。
最近Netflixでスタンダップコメディばかり見てるので、僕個人としてはど真ん中の内容でした。

“The human race has only one really effective weapon and that is laughter.” — Mark Twain
人はただ一つ有効な武器を持っている、それは笑いだ。
ーマーク・トゥイン   位置:528

上記のような引用をいくつも交え、日常生活における「笑い」の有効性を説いていきます。
ブログのライティングにも活かせる内容なので、また機会があれば紹介したいと思います。 

 

The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド
The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド

The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド

今年はナパ・バレーでの火災やEUとのEPAで大枠合意など、ワインを愛する人にとって色んなニュースが舞い込んできた一年でした。
僕自身もワイン好きなのですが、正直品種や味など理解せずに飲んでいるだけなので、少しずつ知識を身につけたい、と思い購入した一冊。

ビジュアルが見入ってしまうほど美しく、好きなページから気軽に何度読み返せます。
アマゾンのページで「なか見!検索」で一度中身みてからの購入をおすすめします。

 

弟の夫(全4巻完結)
弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

2018年に佐藤隆太×把瑠都で実写ドラマ化されるゲイ漫画『弟の夫』
「死んだ弟 の恋人であるゲイのカナダ人男性が日本にやってくる」という話。
4巻でコンパクトに話がまとめられ、世の中の無意識な偏見を浮き彫りにします。

「男同士の恋愛ってどうなの?」と思う方に特に読んで欲しい名作。

下記に最終巻のレビューもしてみたので、あわせてご覧ください。

『弟の夫』 第4巻(最終巻)発売、実写化も【ゲイ漫画】

『ゲイ・カルチャーの未来へ』田亀源五郎さん最新作の感想

 

Nature Fix 自然が最高の脳をつくる
NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

 最近、スマホやパソコンに夢中で自然に触れてない、という方におすすめの一冊。

「自然に触れることがいかに大切か」ということを、最新の研究結果を踏まえて教えてくれます。

人には本来、自然との触れあいが欠かせない──その事実をきちんと理解すればするほど、得るものも大きくなる。キンドル版 位置:5026 より

とりあえず、1カ月に最低5時間は自然とふれあう時間をつくりましょう。

 こちらのレビュー記事もあわせてどうぞ。

僕自身もこの本を読んでから、ランニングコースはなるべく自然に満ちた場所を選ぶようになりました。

 

GO WILD 野生の体を取り戻せ!
GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

 上の本と同じく、「野生に立ち帰る」ことの大切さを説いた本。
トレイルランニングにも触れた一冊だったので、トレランにハマりはじめた僕にとってたまらない内容でした。

この違いの多くは、トレイルランニングが自然の中で行なわれるという点と、進化上の習性(狩猟)にならっているという点にあるはずだ。 位置:2820

 このスポーツの基本的要素が、進化によってわたしたちの中にコードされた根深い欲求に訴えかけるのだ。 位置:2831

 人間の本能を忘れず、日常生活を送っていこうと思いました。


天才たちの日課
天才たちの日課

天才たちの日課

  • 作者: メイソン・カリー,金原瑞人,石田文子
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2016/10/24
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る

 古今東西の小説家、詩人、芸術家、哲学者たちが、どのようにして創作活動を続けていくのか、普段の日課に着目した一冊。
モーツァルトやカフカ、村上春樹やピカソなどあらゆる有名人の生活に触れることが出来ます。

この本を読むと、どんな偉人達も自分と変わらない人間なんだな、ということを実感しました。
モチベーションを失ってしまった方に、心からおすすめしたい一冊。

 「習慣は聡明な人間においては野心の表れである」
 ーオーデン(詩人)


わたしを離さないで
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: Kindle版
  • 購入: 1人 クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る

2017年のノーベル文学賞受賞、カズオ・イシグロの代表作『わたしを離さないで』です。
ネタバレをするとこの小説の価値が落ちてしまうので多くは語りませんが、最後の展開は涙なしでは読めませんでした。

またブログでも紹介したいのですが、重くて再び読見返すのが辛いぐらいです。
ノーベル文学賞のニュース後は品薄が続いたのですが、電子書籍なら一瞬で購入できたのも印象的な思い出。

 

ライフハック大全―人生と仕事を変える小さな習慣250
ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250

ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250

人生と仕事を大きく変えるライフハックが、これでもか!と詰め込まれています
「Pocketの読み上げ機能」は英語の記事を読む上でもっと活用していきたいですね…
この本を読むと、デジタルスキャナーの「Scan Snap」がさらに欲しくなってきました。。

 

WIRED(ワイアード)
WIRED(ワイアード)VOL.19 [雑誌]

WIRED(ワイアード)VOL.19 [雑誌]

  • 作者: Condé Nast Japan (コンデナスト・ジャパン)
  • 出版社/メーカー: コンデナスト・ジャパン
  • 発売日: 2015/11/10
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る

知る人ぞ知る、名雑誌WIREDが今年でなんと、休刊してしまうということなので、最後にこれを挙げておきましょう。

個人的には音楽について特集されたVOL.21、 
VOL.26「ワイアードTV:映像ビジネスの新時代」

などが印象的でした。

ゲイの自分としては、アイデンティティーを特集した最新刊も非常に気になります。
どの巻も本当に心揺さぶられるものばかりで、休刊がほんとうに悔やまれます。。

バックナンバーも全て電子書籍で出版されていますので、気になる方は必見です。

【2018年こそ電子書籍元年に?】

2016年にはKindle Unlimitedという黒船が来航し、
2017年にはPrime Readingが開始され、さらには新型のKindle Oasisまで発売されました。まだ全体を占める割合としては少ないですが、電子書籍の浸透は誰にも止められません。

今後はどう電子書籍が広まっていくのか、2018年も楽しみです。

良い電子書籍ライフを!

Kindle Unlimitedが英語学習に最も効果的だった件

www.nejimakiblog.com

 

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『すべての男は消耗品である。/ 村上龍』完全版の感想【キンドル】

【名エッセイの記念版】

『限りなく青に近いブルー』や『コインロッカーベイビーズ』などドラッグや性描写で溢れた長編が有名な村上龍。

彼は長編だけでなく、映画や短編、そしてエッセイの書き手としても有名です。

今回紹介するのは、ファッション雑誌等に掲載された『すべての男は消耗品である。』というエッセイ集。
30周年記念版、ということで、13冊分がまるまる収録されています。
こういうのがキンドルの良いところですね。

暇なときに気になる部分をちょこちょこ読み進め、ようやく読み終えたので、感想を書いてみたいと思います。

Kindle Unlimitedで読めますので、気になる方はぜひ。
『すべての男は消耗品である。』30周年記念 完全版

Kindle版レビュー

 あまりにボリュームがあるので、気に入った部分をかいつまんで紹介したいと思います。

まずはこの文章から。 

男の犯罪と芸術はすべて勃起をおさめるために発生する 位置1,840

いかにも村上龍らしい一文。
まあ、ある意味核心を突いているのかも知れません。
Ryu Murakami自身の芸術へのスタンスがはっきり示されているように思えます。

 

「日本文学が潰れても、文学が潰れるわけじゃない」の章より

考えてみれば、村上春樹も吉本ばななも、そして彼らの主人公達も、ポジショニングを拒否している。 位置5,182

いつまでも飽きられることなく、世界中で支持される作家は、ひとつのレッテルを貼られることを嫌うのでしょうか。
確かに村上春樹も吉本ばななも、毎回違ったアプローチで小説を書くように思われます。

 

「自分が見たいと思うものは全世界が見たがる」そう思うところから映画は始まる 位置7,456

最近の映画で言うと、 『ブレードランナー2049』も監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが見たいがままの世界観が、そのまま表現されているように思えます。
AIの恋人が新しいソフトをインストールするシーンは、ただならぬ執念を感じました。

 

すべての兵士が消耗品であるのとまったく同じように、私達オスはどうあがいても消耗品であることから逃れることはできない。 位置7,745

代わりはいくらでもいるし、子供を産めるわけでもないし、いつか必ず死ぬし、死と隣り合わせのような無謀なことをやらなければ、必要な情報は得られない。位置7747

しかしだからこそ、自由な存在になれる可能性を持つ。それが私の言う消耗品なのである。 位置7748

『すべての男は消耗品である』というタイトルには、実は下の句があって、それは「だから自由だ」というものだ。 位置20,303

 このエッセイのタイトルである"消耗品"というワードに焦点を当てた文章。

なるほど、「消耗品」をネガティブに捉えるな、というのが村上龍の意図のようですね。

ゲイの僕からすると、女性に振り回されずに済むゲイは、ちょっとズルい立ち位置にいるのかな、とも思ったり。

 

日記は小説に敵対している。 小説家は、情報を物語の力によって強化するために虚構をつくる。  位置9756

なるほど、そのように認識したことはなかったです。

 

日本を象徴する言葉を一つだけ上げるとしたら、「間」だろう。  9907

日本文化を代表する庭園や建築、能や歌舞伎という面を見ても、「間」というものが根幹をなしていることに気づかされます。

もう一つあげるなら、「呼吸」というワードがあらわれるのかもしれませんね。

 

日本人は外圧がなければ、物事を考えたり、制度を変えようとしたりしない、とよく言われるが、それはどこの国も同じだ。物事を必死で考えたり、制度を変えたりするのは骨が折れる作業なので、できれば誰もそんなことなしで済ませたい。この国は外圧がなさすぎたのだ。  10,201

以前、『ゲイ・カルチャーの未来へ』という本を紹介しましたが、もう一度この文章を記載しておきます。

台湾の場合は、反中国というのをプッシュしているところがあるように思えるんです。それはたとえば、ウクライナが反ロシア的な形でEUに寄りたいからLGBTの権利運動が進んでいるというのと似ています。 そう考えると、日本は逆張りをするような相手がとくにいない気がするので、そういう意味では、推進力に欠けるのかもしれません。
『ゲイ・カルチャーの未来へ』 P.203より

ただ単に権利向上だけを訴える動きだけでは社会を動かす力にならず、何か外圧に対して反発するような別の要因がなければ、人・社会派変わることが出来ないということでしょうか。

 

また、"草食系男子"という言葉の出現について、

きっと日本社会においては、「どうでもいいような象徴的な表現」が常に必要とされているのだと思う。 20,309

最近でも "充実している上司"を表す"ボス充"なる聞き慣れないワードが生み出されたり、「象徴的な表現」が収まる気配はありません。

みんな”所属していないもの”を恐れているのでしょうか?

 

だが、社会的怒りは「しょうがない」という言葉では消えない。変質して、どこかに沈殿する。 23,191

最後にこの文章を。
なぜだかオウム真理教による「地下鉄サリン事件」を思い出しました。 

エッセイストなRyu Murakami

 男・女という性に対する概念がゆらいでいる現代に、改めて読んでみましたが、なお輝きを増したかのように興味深く読むことができました。

村上龍のエッセイは、重い内容もも軽いこともサクッと読める魅力がたまりませんね、

今回紹介したのは完全版、ということで、なんと13冊分がまるまる収録されています。

まさか、30年も連載が続くとは思わなかった。 」と本人も驚いていくボリューム。

 Kindle Unlimitedの読み放題対象の電子書籍なので、気になる方はぜひ。

すべての男は消耗品である。VOL.1?VOL.13: 1984年8月?2013年9月 連載30周年記念・完全版

すべての男は消耗品である。VOL.1?VOL.13: 1984年8月?2013年9月 連載30周年記念・完全版

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「こいつどんな声しとんねん!」と思った方はぜひ聴いてみてください。

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世界のねじを巻くラジオ【ゲイのねじまきラジオ】

『トコトンやさしい人工知能の本』文系にもおすすめのAIに関する本

【ディープラーニングも解説】

最近、世界を騒がす人工知能。
何となく理解はできるけど、でも正直「人工知能ってなに?」という問いにはっきり答えられない文系の方。
今回はそんなあなたにおすすめの一冊を紹介したいと思います。

【人工知能ってなに?】

今回紹介するのは、『 トコトンやさしい人工知能の本 (今日からモノ知りシリーズ)』[辻井 潤一 (監修), 産業技術総合研究所 人工知能研究センター (編集)]という本。

トコトンやさしい人工知能の本 (今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしい人工知能の本 (今日からモノ知りシリーズ)

  • 作者: 辻井潤一,産業技術総合研究所人工知能研究センター
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

ぼんやりとした知識の方が多いかと思いますが、全編にわたり、イラストつきで非常にわかりやすく書かれております。
知識のない中学生あたりでも十分に理解できるのではないでしょうか。
さっそく、感想を軽く書いてみたいと思います。

【レビュー・書評】

この本を読めば、「機械学習とはなにか?」というような基礎的な知識は身につけることができると思います。

特に印象に残った部分を箇条書きで書きたいと思います。

  • "人工知能"というワードに、厳密な定義があるわけではない
  • 昔から人工知能は期待→失望の波を何度か繰り返してきた
  • 今回騒がれているのはビックデータが手に入るようになったため
  • ディープラーニングの"ディープ"は「多層」であること
  • 「意味の計算」が成り立つ分散表現の面白さ
    「4月-2月」=「桜-梅」なんてことも可能
  • テロ対策がテキストマイニング研究を後押ししている

まずは「人工知能って何?」という基礎的な部分から、仕組み、直面する課題、今後の展開、何が便利になるのか?というあらゆる疑問に答えてくれます。

2016年12月23日と比較的新しい書籍なので、最新の研究内容についても盛り込まれているところがいいですね。

特に深掘りされていたのが「人工知能にどうすれば人間的な認識をさせることが可能か」というところ。

まだ現代でもAIが活用できていない大きな原因のひとつに、"人とAIとの認識の違い"が挙げられます。

例えば、「上り坂」と「下り坂」は小学生でも簡単に認識出来ますが、
人工知能からすれば、「同じ傾斜の坂」でしかなく、判断するのが非常に難しいのです。

自動運転での事故や、SFで描かれるようなロボットの反乱を防ぐためにも、「どこまで複雑で不確実な外界を防ぐか」という「フレーム問題」も触れられており、非常に興味深かったです。

【理系でなくても楽しめる】

いかがだったでしょうか?AIはじめての一冊にぴったりの本だと思います。
ワトソンやらNEC WISEやらいろいろ人工知能が第四次産業革命を起こすといわれていますが、現状のように数百億円もするスーパーコンピュータがヒト一人分の仕事ができるようになったとしても、世の中はまだまだ変わりません。
ぜひ今後の発展に期待したいですね。
気になる方はぜひ本を手に取ってみてください。

トコトンやさしい人工知能の本 (今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしい人工知能の本 (今日からモノ知りシリーズ)

  • 作者: 辻井潤一,産業技術総合研究所人工知能研究センター
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

GPSとKindleを組み合わせれば、さらに読書体験が広がるはず

『クララとお日さま』カズオイシグロの最新作が気になるという話 - 世界のねじを巻くブログ@世界一周

~自然が最高の脳をつくる~『Nature Fix』書評

【脳科学に基づいた本】

最近、パソコンやスマホに夢中であまり外出できてない、という方。
そんな方におすすめな、"自然"に対する意識を大きく変えてくれる本を紹介したいと思います。

今回紹介する『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方/フローレンス・ウィリアムズ著』という本の原題は『The Nature Fix』、つまり「自然が回復させる」的な意味が込められています。

人には本来、自然との触れあいが欠かせない──その事実をきちんと理解すればするほど、得るものも大きくなる。キンドル版 位置:5026 より

古い時代からアリストテレスやベートーベンなどの哲学的者や音楽家が、なぜ自然の中を歩いてきたのか、その理由をしっかり説明してくれます。

かなり心揺さぶられた一冊なので、書評を書いたみたいと思います。

感想・レビュー

この本を読んでまず印象に残ったのは、アメリカのFlorence Williamsというジャーナリストによって書かれた本にもかかわらず、日本が大々的に取り上げられているところ。

第一章からいきなり日本について書かれていて驚きました。

 

どうやら、"森林浴"という考え方は日本が初めて提唱したものらしいです。

千葉大学教授 宮崎良分さんも、日本語版解説としてこのように記載しています。

最近、自然セラピーにおける脳、自律神経、内分泌、免疫を指標とした論文を総説としてまとめたところ、その研究論文の多くは日本発であることが分かった。 位置:5449より

 日本人としても、誇りに思いますね。他国と比べてかなり研究が進んでいるようです。

 

『ネイチャーフィックス』という本の大きなテーマとして、
自然の中で得られる利益は、過ごした時間と正比例の関係にある、ということです。

マッケロンはある論文で次のように述べた。「平均すると、被験者は都会にいるときより、屋外の緑豊かな場所や自然のなかに身を置いているときのほうが有意に、かつ確実により深い幸福感を覚えている」
Kindle 位置:138より

 

また、この本は「ただ、気分転換が脳に良いってだけじゃないの?」と自然が持つ効果に懐疑的な人の疑問に対する回答も示されています。詳しくは本書で。

 

 こういった本にありがちなのは、「○○は体にいい!」と説明するだけで、実際何をすれば良いかの説明が全くなかったり、というパターン。

 

「結局何をすれば効果があるの?」という読者の疑問に、この『Nature Fix』は簡潔に答えてくれます。

トゥルヴァイネンのチームはある研究で、都会に暮らす三〇〇〇人を対象に、自然のなかですごしたあとの気分の変化とストレスの軽減について尋ねた。すると一か月に五時間、自然のなかですごすと、最大の効果を得られるという結果が出た。
位置:2958

 

1ヶ月に5時間、つまり一回に30分程度を週に2回公園や川沿い・山などの自然の中で過ごせばいい、ということになります。

こう聞くと、意外と簡単にできそうな気がしませんか?

 

ロンドンのハイドパーク、ニューヨークのセントラルパークなど、都会人が自然を大切にする意味がわかる気がします。


日本にも、こうした公園はいくつか見当たります。
大阪でいうと、鶴見緑地・大阪城などがあたるでしょうか。
芝生に横たわりながら、読書するのもいいかもしれませんね。

みなさんも自分の家や職場の近くで、自然に溢れた居場所を探してみてはいかがでしょうか?

トレイルランニングも効果あり?

僕は走るのが好きなので、自然の中でトレイルランニングをすることもあります。

確かに、森や山の中で草木をかき分けながらのランニングは、五感が研ぎ澄まされ野生に還った気分になれます。特に本には言及されてませんが、トレイルランニングにも間違いないなく自然がもたらす効果はあるはずです。
ただ路上を走るランニングよりも断然気持ちいいですしね。なんといっても自然の中は空気が澄んでいるのがたまりません。
最近トレイルランはサボりがちなので、もう少し山へ足を運ぼうと思いました。

【森林や樹木が持つ力】

この書籍を読むと、街の中のにやたらと目がいくようになること間違いなしです。
僕も可能な限り、自然に触れる心掛けをしようと思いました。


昔から観葉植物は好きで部屋にいくつか置いてたりするのですが、オフィスの机にもガジュマルの木を置いてみました。パソコンの画面にうんざりしたとき、目にするとかわいくて癒やされます。

みなさんも一度自然という恵みに触れ、その素晴らしさを再確認してみては。
テクノロジーに悩まされる現代人におすすめの一冊です。Kindle版もあるのでぜひ。

だが身体を動かし、戸外の空気を吸うだけのことなら、だれにでもできるはずだ              ──ウォルト・ホイットマン

NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

  • 作者: フローレンス・ウィリアムズ,栗木さつき,森嶋マリ
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る

『ゲイ・カルチャーの未来へ』田亀源五郎さん最新作の感想

若いLGBTの人におすすめ

ゲイゲートの巨匠として世界的に有名な田亀源五郎さん。
ゲイ文化に関して自身のキャリアを振り返りつつ、現代のゲイ文化に言及した『ゲイ・カルチャーの未来へ』という本を先日出版されたので、さっそく、読んでみました。

 

様々な優れた作品を出し続け、ゲイカルチャーを動かす田亀源五郎さん本人だからこそ語れるような濃いトークがどんどん出てきます。
この本は木津毅さんというライターの方との対談形式をとった内容になってます。

お二人方のその洞察の鋭さに、
何度も「うん、うん。」と唸りながら読み切ってしまいました。


 内容は決して同性愛者 だけに向けたものではなく、ストレートの方にも強くおすすめできるものとなっております。軽くレビュー・書評を書いてみたいと思います。

 

「弟の夫」裏話も

この本は、木津毅さんという方と田亀さんとのインタビューをまとめ、それを本にまとめられたという形をとっています。

※(木津さんはPOP LIFE THE PODCASTやライターの仕事をされておられる方です。)

 

田亀源五郎さんの半生や創作の源、エロティシズムの探求、欧米と日本社会の比較など、幅広いトピックについて知ることができます。

もちろん、2017年の7月に第4巻が出て完結したゲイ漫画『弟の夫』もその例外ではありません。

 この田亀源五郎さん、エロティックなゲイアートのみならず、ゲイを描いた初の「ヘテロ向けゲイ漫画」である『弟の夫』を描いたことで話題になりました。

ちなみにこの『弟の夫』は第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した名作。
『弟の夫』については下記の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はぜひ。

※追記(2017.12.8)NHKプレミアムでなんと実写ドラマ化されるとのこと。原作もぜひチェックしてみてください。

 

上記の『弟の夫』をつくるにあたり、田亀さんはこう考えていたそうです。

そういう意味では、非当事者に何をどうアピールできるか、ということが社会を変えられる鍵になるんだろうなと思っていました。 
『ゲイ・カルチャーの未来へ』 P.26より

ゲイやLGBTだけをターゲットにしても、せいぜい総人口の3%~7%程度。

いかにゲイ的な視点をストレートの方に伝えられるか、そこが重要なのかもしれません。

最近、『僕らの色彩』っていう漫画を書かれてて、ストレートのかたにでも楽しめる作品が増えているのは気のせいじゃないと思います。

 

また、下記のように自分の作品に対するスタンスをはっきり示しているところがさすが。

もし私の作品を読んで「これが入っていない」と思うのだったら、「自分で描いてください」と言うしかないですね。 P48

このねじまきブログでも同様のことがいえます。
「世界のねじを巻くブログ」は基本的にゲイの視点から語った内容になっており、
他のLGBTQAは置いてけぼりになってしまいがち、というのは否めません

なるべく多くの当事者が何かしらの形で"表現"してほしいな
というのが僕の思いです。

他にも、とうの昔からオープンリーな田亀さんのカミングアウト論もこの本の見どころのひとつ。
ゲイカルチャーの未来へ 田亀源五郎

ちなみに田亀さんの英語表記は
Gengorou Tagame ではなく Gengoroh Tagame のようです。

LGBTブームで終わってしまわないように

 また、LGBTブームを流行で終わらせてしまわないためには、
当事者が声をあげていくしかない、と田亀さんは語ります。

たしかにまだまだ変わっていないことは多いですけれども、変わるチャンスはある。ただ、良くも悪くもその鍵を握っているのは当事者でしかないなと考えています。『ゲイ・カルチャーの未来へ』 P198


上にも書いたように、やはりこのままでは日本は変わらないのが現実。
多少うさんくさがられようと、何かしらの形で意志を表明しないと、
社会は動かないという意見には僕も同意です。

 

他にも、日本でLGBT運動が起こりづらい要因も興味深かったです。

台湾の場合は、反中国というのをプッシュしているところがあるように思えるんです。それはたとえば、ウクライナが反ロシア的な形でEUに寄りたいからLGBTの権利運動が進んでいるというのと似ています。
そう考えると、日本は逆張りをするような相手がとくにいない気がするので、そういう意味では、推進力に欠けるのかもしれません。  
P.203より

なるほど、ただ単に権利向上だけを訴える動きだけでは不十分であり、社会的・政治的にLGBT権利運動を動かす別の要因が必要ということでしょうか。

そうすると、やはり日本にとっては海外からの視線が気になる2020年の東京オリンピックが大きなマイルストーンになるはず。


逆にいえば、このタイミングを逃すと同性婚などといった議論は影を潜め、"過ぎ去ったブーム"となってしまうのかもしれませんね。

 

また、「あとがき」でフジテレビの"保毛尾田保毛男騒動"についても言及されていたのも興味深かったです。

それを見ながら、そういったゲイ表象が世に出てしまう原因として、ひとつには悪意の有無に関わらず存在する偏見という問題があるが、もう一方では、それに意義を申し立てることができるような可視化された当事者が、仕事の現場にいないという問題もあるのではないか、とも思った。 P238より

他にも、色んなアーティストの映画・小説・絵について述べられているので、ゲイカルチャーを学びたいゲイの方は必読の一冊といえるでしょう。

 

異性愛者の方もぜひ

同性愛やLGBTだけでなく、ノンケ・ストレートの方にもぜひ読んで欲しい本。
田亀さんの創作の原動力から何かを得られるはずです。
僕自身何かを生み出せている訳ではないのですが、もっと"何かを表現する"という行為に目を向けていきたいな、と心動かされた本でした。
こういう本こそ、リアル書店では買いにくいので、Kindle版も出るといいですね。※12/9に大阪でたがめげんごろうさん本人のトークショーが開催されるようです。

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)

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「こいつどんな声しとんねん!」と思った方はぜひ聴いてみてください。

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世界のねじを巻くラジオ【ゲイのねじまきラジオ】

ワインソムリエの嗅覚の鍛え方:『言葉にして伝える技術』

【嗅覚の鍛える方法】

 みなさんは普段、嗅覚を意識して使えているでしょうか?
他の五感である視覚や聴覚と比べて、おろそかにしてしまっている人も多いはず。

今日はそんな方に向けて、ワインソムリエの田崎真也さんという方がが教える、「嗅覚を言葉にして伝える技術」を紹介したいと思います。においって大切ですよ。

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

【言語化する大切さ】

 この本で何度も語られるのは、「五感を言葉に表す」ということの大切さ

五感で受け止めた感覚は、潜在的な記憶にとどまることがあっても、それだけでは、自由自在に引き出せる記憶にはなっていません。
いつでも思い出し、より明確に呼び起こすためには、言葉が必要なのです。P4

 やはり感じるだけでは自分のライブラリに蓄えることはできません。
ブログでもそうですね。実際に文章にしてみて初めて、深く理解できることは多々あります。

もう一つ、「嗅覚」の本質を捉えるために書かれていたのが、「常套句を使わない」ということ。

味わいを表現する時には、表現する語彙も大事ですが、
その前に持つべきは、先入観ではなく、自分自身のモノサシだと思います。 P48

 味や香りに関するボキャブラリーなんて知れたものですが、
自分なりの表現を広げていきたいと思いました。

f:id:popmusik3141:20171027210018p:plain

 嗅覚の鍛え方も非常に印象的でした。

そのような場所で、もし花や緑を見つけたら、すぐに近くに寄って香りを嗅ぐのではなく、まずは遠巻きに香りを意識することがトレーニングになります。
そして次ぐに近くに寄って、あらためて花の香りを嗅いでみるということを習慣づけると、しだいに嗅覚のセンサーが鋭くなっていくと思います。 P187
なるほど、遠巻きにみて香りを嗅ごうとするのが大切なんですね。
なにごとも経験・練習が重要。
 
五感の鍛え方について、

・紋切り型の表現や先入観を捨てること
・五感で感じたことをそれぞれの言葉に置き換えていくこと
・言葉を増やし、分類して言語化し、記憶すること
・相手や状況に合わせて、より受け取りやすい、適切な表現を選ぶこと
・基本は、ポジティブなものの見方に立って表現すること

などが挙げられていました。
10月の目標のひとつとして「五感を鍛える」をあげていましたが、「言葉にする」ということはおろそかにしがちでした。
しっかり五感で情報をキャッチして、より深く自分の五感に触れていくようにしたいと思います。

【鼻が弱い方にも】

ワインソムリエが書いた本ですが、難しいことばなしに、「嗅覚」という五感につきわかりやすく優れた本でした。
「日常生活で匂いは意識していないなあ」というや鼻に自信のない方にもぜひおすすめです。

言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)

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Kindle Oasisの次世代モデルがすごい!【防水】

【キンドルオアシスニューモデル】

 2017年10月11日、アマゾンが電子書籍端末Kindleの次世代モデルである『Kindle Oasis (Newモデル)』を発表しました。予約はすでにこちらで開始されています。

発売日は2017年10月31日。価格は33980円から。
さっそくスペック詳細を見てみましょう。

【新モデルの特徴】

Kindleとしては第9世代となる、Kindle Oasis 2の大きな特徴を書いていきたいと思います。

防水機能搭載

今回発表された新型キンドルオアシスの大きな変更点として、防水機能を搭載したことがあげられるでしょう。IPX8の防水機能を備えており、水深2メートルまで最大60分耐えられるようです。お風呂やプールでも安心して読めますね。

楽天のKobo Aura H2Oに対抗して、やはりAmazonも防水モデルを投入してきました。

お風呂で読めるのは大きなポイントです。
アメリカ含む海外でうけるかどうかはわかりませんが、
日本人にとって、これはかなりうれしい新機能ではないでしょうか?

7インチの大画面

2017年版Kindle Oasisは、なんと7インチのE-ink液晶を搭載。
現状ラインナップは6インチまでなので、ひとまわり大きく感じられることでしょう。

このKindle Oasis次機種が発売されれば、現行ラインナップの中では最大の液晶サイズとなります。(昔発売されていたKindle DXが懐かしいですね・・)

重さ・軽量化

7インチの大画面かつ、他モデルと遜色ないバッテリーの持ち、かつ防水。
それでも、現行のKindle Paperwhite(205g)と比較してもさらに軽量化された194gという軽さ。194gといえば、普通の文庫本ぐらいのイメージです。
重量・薄さに関しては相当なこだわりをもって作られたのではないでしょうか。

防水というとどうしても機構的に重たくなってしまう傾向がある中、個人的にこの点は大きく評価したいと思います。

マンガはシリーズごとにまとめて表示

ソフトウェアの面でも改善点があります。
どうしても冊数が多くなりがちな漫画・コミックも、シリーズごとにまとめて表示ができるようになるようです。
いわばフォルダ機能のようなものでしょうか。
小説・書籍にもフォルダ分けできればいうことはないのですが。

 

片手で読める

タッチパネルのみならず、物理キーがついており、片手だけでもページめくり/ページ戻しが簡単に行えます。両手で持たなくて良いのもキンドルオアシスの長所です。
上下反転も自動で感知してくれるので、右手左手どちらでも対応可能です。

 

価格

価格も前機種である初代キンドルオアシス(35980円)と比べると、33980円と少しお買い得にはなっております。フラグシップモデルのため安いとはいえないですが、新型は値段でもかなりがんばっている方ではないでしょうか。

【マンガ用にもおすすめ】

大画面かつ32GBの大容量、そしてお風呂でも読めるKindleのニューモデル。
スペック的に前機種と比較しても史上最高のKindeであることは間違いありません。
CPUも変更され、さらにサクサクになっているとの噂も。

漫画・コミック、雑誌用にもベストな選択と言えるのではないでしょうか。

Amazonの新サービス「Prime Reading」もはじまりましたので、買うにはよい機会だと思います!
在庫もなくなってきているようなので、気になる方はい今のうちに。

Kindle Oasis (Newモデル) 8GB、Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル、電子書籍リーダー

 こちらの記事もあわせてどうぞ。

ブロガーや小説家なら類義語辞典を持っておくべき5つの理由

【類語実用辞典/三省堂】

 ブロガーや物書きの方なら最低、辞書の一つや二つは持ってますよね?
文章を書く方なら必須アイテムである類義語辞典。

「え?持ってないや。」という方におすすめの類義語辞典を今回紹介したいと思います。 

【ウェブライター・物書きにおすすめ】

 今回紹介するのは三省堂から出版されている、『必携 類語実用辞典』。

こんなやつです。詳細はアマゾンのページへ。

必携 類語実用辞典

必携 類語実用辞典

はてなブロガーや小説家なら辞書を持っておくべき5つの理由を書いていきたいと思います。

1:「知っている」から「使える」語彙に

この辞書の収録語句数は51,000語。といえども、見慣れた分厚く重たい辞書と比べると、手のひらサイズの小型版なので、収録語句は絞られています。
そのため、知っている語句がわりかし出てきます。

でもこれがこの類語実用辞典のミソ。

「知ってる」言葉ではあるけれども、実際に"使える"となると怪しい、そんなことば語彙がたくさん収録されています。
ブログやウェブ記事・ツイッターに使う語彙は十分すぎる程カバーしてくれています。
本を書きたいという小説家にも必要最低限の語彙はそろっています。

あまり難しすぎるワードは載ってないところがいいですね。

 

2:ポケットサイズ

今回紹介する『必携 類語実用辞典』は、"辞書"と聞くと思い浮かべるような人を殴れる凶器のゴツさではなく、スマホより少しだけ大きいポケットサイズのハンディタイプになります。

必携 類語実用辞典 三省堂

文庫本よりも一回り小さいです。鞄の隅に忍ばせても全く負担になりません。
「辞書を持ち歩くのはちょっとなあ」というライターの方におすすめです。

 

3:お手頃価格

たいてい辞書って二千円~三千円以上するのが当たりまえですが、
この三省堂の『必携 類語実用辞典』たったの1080円。
普通の書籍より安いです。
アマゾンでもサッと購入できるのでぜひ。

 

4:ことばとの距離が縮まる

上にも述べたように、かなりお手頃なサイズの辞書なため、
暇なときや隙間時間を用いて新しい言葉に触れることができます。

普段ブログ記事を書いたり、ツイッターでつぶやいたりするなかで、「同じような言葉しか使ってないな~」と心当たりのある方は、ぜひ辞書をカバンの隅に忍ばせてみてはいかがでしょうか?

ことばに対する認識が大きく変わることでしょう。

 

5:知らない語彙に毎日出会える

1では「収録語彙が限られている」と書きましたが、
それでも51,000語が収録されています。

例えば、今パッと開けた21ページのなかで知らない語彙をあげてみると、

遁辞  弁疎  金殿玉楼  陋宅 

などがでてきます。

一日に1~2ページを眺めるだけでも、どんどん使える語彙が増えていくことは間違いありません。

知らない単語に線を引いて、使える語彙を増やしていきましょう。

【ポケットに忍ばせて】

法律をかじったことがある方ならご存じであろうタイトル騙しの 『ポケット六法』とは異なり、きちんとポケットに収まるサイズです。というかむしろ手のひらサイズ。

類語実用辞典、文章を書く方なら持っていてまず損はしないので、この機会にぜひ購入してみてはいかがでしょうか?

必携 類語実用辞典

必携 類語実用辞典

『泥の河/宮本輝』映画版の感想・レビュー:大阪人なら必見

【小栗康平監督による劇場版】

 2017年9月6日より、「午前十時の映画祭」で宮本輝の名作『泥の河』が公開されます。(※地域により公開日が異なります)

原作の小説『泥の河』は学生の頃からの愛読書なのですが、
映画の再上映に備えまた読んでみたので、改めて感想を書きたいと思います。
[※追記(2017.9.23):映画版を観てきたので箇条書きで軽く感想を追記しました。]

 「午前十時の映画祭って何?」という方は下記の記事をどうぞ。

 

【宮本輝の処女作】

 この『泥の河』は戦後の大阪・安治川の河口に住む少年と、川の"舟"に住む貧しい少年との交流を描いた作品。

映画は1991年に公開された、小栗康平監督による白黒映画になります。
まだ映画版は観たことないのですが、かなりしっかり戦後の時代が描かれてそうです。
映画の内容はまだ書けないので、小説版について書きたいと思います。

原作『泥の河』は100ページ以下なのに、話の展開もかなり濃く、
冒頭の馬車の場面、お化けの鯉、天神祭、ハイライトである蟹のシーンなど見所がたくさん。
映画でどこまで再現されているのかわかりませんが、非常に楽しみです。

降りしきる雨が粘土色の川面に無数の波紋を落としていた。濃い藍色の水がその中で縞模様を描きつつ渦巻いている。汚物の群れが橋げたにぶつかってくるくる廻っていた。信雄はしたたる雫を掌でぬぐうと、必死になって川面を探った。 「うわあ!」 そして思わず叫んだ。薄墨色の巨大な鯉が、まるで雨に打たれるために浮きあがってきたかのように、水面でゆっくりと円を描いていたのである。
 宮本輝 『泥の河』より  位置:163

「もう戦争はこりごりや」
「そのうちどこかのアホが、退屈しのぎにやり始めよるで」 
 宮本輝 『泥の河』より  位置: 81


アニメ映画『この世界の片隅に』を観て思いましたが、
一般市民の心に響くのは、やはり戦争そのものより戦争に振る舞わされる人々の姿。
『ハクソー・リッジ』や『プライベート・ライアン』ももちろん迫力があってよいのですが、共感できるのは、一般市民が生き抜く姿でしょう。
まあ、そうはいっても明日は迫力たっぷりの『ダンケルク』見に行きますが笑

【川三部作】

宮本輝の小説といえば、やはり"川三部作"が有名です。

『泥の河』『蛍川』『道頓堀川』の3つ。
いずれも川を舞台にした人々の生活を描いた作品です。

なぜか『泥の河』だけ「泥の川」ではなく 「泥の」なんですよね・・
川三部作の中でも僕は『泥の河』がフェイバリットです。
他にも短編や『青が散る』など名作揃いの宮本輝、読んだことがない方はぜひ。
文章が綺麗でかつ読みづらくもなく、登場人物の心情をそこはかとなく描くのが本当に巧いと小説家だと思います。

 

【レビュー・感想】

※追記(2017.9.23):「午前十時の映画祭」で映画版を観てきたので箇条書きで軽く感想をネタバレ注意。

  • 全体的に小説の雰囲気をしっかり再現している
  • みんな演技がうまい。
  • 子役も良い味でてる。
  • 馬でさえ演技がうまい笑
  • 手品のシーンもしっかり健在
  • 小説以上に戦争と向き合う感じだった。戦争の傷跡のクローズアップとか。
  • 原作にある、幼鳥を潰すシーンがなかった。飛行機を盗むシーンもカット。
  • 天神祭のシーンの再現度はかなりのもの。
  • ところどころで出てくるユーモアが映画の暗い雰囲気をうまく和らげている
  • 病院や学校のシーンなど、原作にはなかった場面を空気感を壊さずに加えている
  • お父さん役の田村高廣がかっこよすぎ。
  • 銀子ちゃんも小説通りの静かだけどどこか惹きつける演技がすごかった。
  • 喜一の蟹を燃やすシーンは、もっと狂気的に撮った方がよかったと思う
  • ラストシーンでお化け鯉が出なかったのが意外だった。これは小説どおりにすべきだったのでは?
  • 見てはいけない大人の世界をみて育っていく構図は「アラバマ物語」と似ているかも

映画館で観れててよかった。じんわり心に残る映画でした。

【Netflixでもぜひ】

今回再上映される『泥の河』、「午前十時の映画祭」機会を逃すとなかなか映画館で観ることはできないでしょう。
「でも午前10時に映画は厳しいなぁ」という方は、あの映像配信サービス「Netflix」でも見ることができますので気になる方はネットでもどうぞ。

小説版は 大阪人、いや、関西人なら必読の一冊です。
Kindle版(電子書籍)でも読めるので、気になる方は原作の小説をぜひ。

螢川・泥の河

螢川・泥の河

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『弟の夫』 第4巻(最終巻)発売、実写化も【ゲイ漫画】

【同性愛を描いたマンガ】

先日、ゲイアートの巨匠とよばれる田亀源五郎さんが描いた『弟の夫(4)』、
最新巻が発売されました。

さっそくKindle版を購入してみたので、感想を書いてみたいと思います。

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

弟の夫 : 4 (アクションコミックス)

【あらすじ・ストーリー】

『弟の夫』は、今回発売された最終巻で完結した、全四巻の漫画です。
タイトルでは「ゲイマンガ」と書きましたが、決してLGBTのみ向けられたものではなく、異性愛者でも問題なく楽しめる作品となっております。

第一巻のあらすじは下記の通り。

弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、マイクと名乗る男がカナダからやって来た。マイクは、弥一の双子の弟の結婚相手だった。「パパに双子の弟がいたの?」「男同士で結婚って出来るの?」。幼い夏菜は突如現れたカナダ人の“おじさん”に大興奮。弥一と、“弟の夫”マイクの物語が始まる――。(アマゾンより)

このマンガの面白いところは、死んだ弟の恋人であるカナダ人のマイクと、死んだ弟の兄との交流が描かれるところ。
つまり、ゲイ同士を描いたものではなく、
ゲイと異性愛者の交流を描いたユニークな作品となっております。

他におすすめする理由がこちら。

子供の純粋さと主人公の偏見との対比

小学生の女の子である夏菜は、同性愛というものに全く偏見を持たないのに対して、偏見を持つ父はマイクのことを快く思いません。その対比が、読者に「偏見」というものが何か、ということを教えてくれる大きなカギとなっています。

 ※追記(2017.11.4):田亀原五郎さんの最新作『ゲイ・カルチャーの未来へ』についての感想・レビューを書いてみました。

世の中の偏見を浮き彫りに

マイクと生活する中で、主人公の弥一は世の中に残る偏見に直面します。
異性愛者として生きるだけでは感じることができない小さな偏見。
そんなものをこの漫画は浮き彫りにしてくれます。

 

新しい家族のかたち

弟とマイクの男同士の結婚生活のみならず、離婚し男手ひとつで女の子を育てる主人公。男性と女性が結びつき、二人で暮らすことが必ずしも正しいものではないという作者の声が聞こえるような作風になっております。

単なる同性愛モノではなく、
”家族”を描いた心温まるホームストーリーを描いていることが、この漫画の最大の特徴ではないでしょうか。

【ネタバレなしの感想】

第四巻につき、可能な限りネタバレを押さえた感想を。

話の動きが多かった1,2,3巻と比べ、4巻はおとなしめな展開。
主人公の弟への思いがしっかり描かれていたのが◎

ラストは正直展開が読めたというか、予定調和的な終わり方であることが否めないですが、希望を残す終わり方だったので、いち読者としても非常に勇気づけられました。

 ゲイはもちろん、そうでないストレートの方でも十二分に楽しめる内容となっておりますので、ぜひ読んでみてください。

 

【ドラマ化も NHKで】

※追記(2017.12.5)

なんと佐藤隆太×把瑠都という組み合わせで、実写ドラマ化されるとのこと。
NHK BSプレミアムにて、3月4日から、毎週日曜22時に放映予定です。

これは気になりますね。ドラマの前に、ぜひ原作のマンガをチェックしてみて下さい。
また続報があれば追記したいと思います。

 弟の夫(4)
弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

弟の夫(4) (アクションコミックス(月刊アクション))

第一巻の電子書籍(キンドル版)は270円とお買い得なので、気になる方はぜひ。

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)