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映画『ベストセラー』と『トランボ』についての感想【レビュー】

【小説家トマス・ウルフと編集者パーキンズ】

この映画は、アメリカの天才小説家トマス・ウルフと編集者パーキンズの交流を描いた作品です。詳細は下記の動画をどうぞ。

上の動画を見るとわかるように、キャストはコリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマンとかなり豪華な顔ぶれです。
個人的にジュード・ロウの演技を久々にみようと映画館に足を運びました。

この映画は『名編集者パーキンズに捧ぐ』というタイトルですが、天才作家のトマス・ウルフに重点を置きたいのか、編集者パーキンズに注目させたいのか、二人の交流を描きたいのか、いまいち軸がぶれていた気がします。この映画の元になった原作『名編集者パーキンズ』という本があるようですが、原作はどんな感じに話が進められるのでしょうか。

原作は上下合わせて1000ページ近いボリュームなのに、映画は104分と一般的な長さ。
おそらく多くのエピソードを削ってるのではないかと思います。
それでも、「僕のひらめきの原点だ」とウルフが連れていくジャズバーのシーンは大胆に10分近く時間が割かれており、編集者マックスパーキンズ・にとっての人生の一曲『アフトン川の流れ』が演奏されるシーンは見事でした。監督もここはかなり力を入れたのだと思います。

正直なところ、トーマス・ウルフの著作は一度も読んだことがなかったので、何か買ってみようかとアマゾンで調べたところ、ほとんど絶版になっていました。
つまり中古で買うか英語で読むしか選択肢がありません。

『グレート・ギャツビー』の作者スコット・フィッツジェラルドも何度も出てきましたが、「悩める作家」という枠でしか捉えられていないところが少し寂しい感じです。
妻が精神的に病んでいたということは初めて知りました。
「パーティーで夜通し遊んでその合間に小説を書いていた」という逸話が有名なので、優雅な遊び人気質の方なのかと思っていましたが、この映画を見たあと、フィッツジェラルドに対するイメージが少し変わりました。

コリン・ファースの演技は流石に安定感ありますね。「頼れる感」は年を重ねるごとに増している気がします。
ジュード・ロウも天才作家トマス・ウルフの人物像をうまく演じきれていたのではないかと思います。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』と見比べて

 ユダヤ人の映画脚本家を描いた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』と比較すると、ちょっと話のスケールが弱いと感じました。
「トランボ」がハリウッドのユダヤ人脚本家達が自由を得るために闘う話に対して、こちらは小説家が小説をいかに削ってモノにするか、という話です。
トランボが風呂の中でも書き続けたシーンがあったのに対し、トマス・ウルフの執筆に苦労するシーンがそれほどなく、ドサッと大量に仕上げた作品を削除・編集するシーンばかりが出てきます。
もう少し、ウルフが執筆に苦心する様子のシーンがあれば、観る側も感情移入出来たのではないでしょうか。

タイプライターで執筆するシーンの気持ちよさや、ジャズ等音楽の使い方も「トランボ」の方が上回っていたように思います。

【DVDでもぜひ】

いかがだったでしょうか?
割りと辛口になってしまいましたが、編集者や小説家になりたいという方には『ベストセラー』は良い刺激になることは間違いありません。1920~30年代のジャズ・エイジのNYの雰囲気が好きな方もせひ。

文庫 名編集者パーキンズ