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レディオヘッド最新作『A Moon Shaped Pool』全曲レビュー

【Radioheadの新アルバム発売!】

本日5/9の日本時間午前3時に発売された、
レディオヘッドの最新作、『A Moon Shaped Pool』(ア・ムーン・シェイプト・プール)。
タイトルは直訳すると「月の形をした水たまり」となります。
何を意味するのでしょうか。
早速iTunesでダウンロードして聴いてみました。

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Amazon.co.jp: Radiohead : A Moon Shaped Pool - ミュージック

【新作全曲レビュー】

Track 1: Burn the Witch

ミュージック・ビデオと共に先行で公開された「Burn the Witch」。
MVはかわいい人形の世界ですが、「犠牲なくしては繁栄なし」的な
恐ろしいメッセージを突き付けます。

以前の記事でも触れたように、スティーブ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」や「Different Train」を思い浮かばせるストリングスでアルバムは始まります。

 アルバムの開始としてはベストな選曲だと思います。
「魔女を焼け、お前がどこにいるかはわかっているんだ」という怖い歌詞も
トム・ヨークはきれいに歌い上げます。魔女はいったい何を意味するのでしょうか。

Track 2: Daydreaming

曲調は「Videotape」、そして全編にわたって聞こえるピアノは、
なんだかブライアン・イーノの「An Arc of Doves」の想起させます、
というかそのままです。

落ち着いた開始ですが、4:00~頃からキツ目のシンセサイザー、後期ビートルズの逆回転テープを再現したようなサウンド、女性ボーカルが混ざり合い、幻想的な世界へと誘います。
歌詞はどうしようもない嘆きを表現しています。*1

Track 3:Decks Dark

マッシブ・アタックの名曲「Teardrop」を思わせる電子ビートで始まります。

君の人生に暗闇がくる/宇宙船が空を覆い/逃げる場所はなくなる/君は逃げて耳を覆うが/今まで聞いたことのないほどのけたたましい音が/僕たちは囚われた/僕たちは暗黒の雲だ/僕たちは最も暗い時間から逃れるすべがない

レディオヘッドらしい憂鬱な歌詞です。
3:45に渋く切り込んでくるギターがいいですね
個人的にアルバムのベスト3に挙げられます。

Track 4:Desert Island Disk

ラストの「True Love Waits」と並び、”難しくない曲”ではないでしょうか。
アコギから曲が始まり、アンビエントな残響が主体のこの曲にずっと身を委ねていたいです。

僕のいうことがわかるかい?違った形の愛は叶いうるんだ

と最後に何度も繰り返される一節は「Now as I go upon my way」や「Through an open doorway」等の歌詞からLGBTを示唆しているとするのは考えすぎでしょうか。

Track 5:Ful Stop

クラフトワークの「Abzug」を思わせるドラムスから始まり、残響音が重なり、
やがてカオスへと突っ走ります。

本作では2曲目の「Daydream」に次いで
二番目に長い曲になりますが、6分という長さを感じさせません。
「ヘイル・トゥ・ザ・シーフ」に収録されてそうな曲と言えるでしょう。

Take me back / You really messed up

と何度も最後に繰り返される歌詞は
トム・ヨークの23年間の結婚生活の末の離婚を歌った相手に対するあてつけと考えることもできるでしょう。

Track 6:Glass Eyes

浮遊感のあるストリングスと、優しいピアノが白黒映画の世界を思わせ、
たまらないです。
こういった曲だけを集めたアルバムも聴いてみたいですね。
電車から降りた後、急に内側からわいてきたパニックに襲われる男についての歌詞です。

Track 7:Identikit

数年前コンサートで発表された曲。
好きな曲でしたが、ライブ版のアレンジから聞き始めたので、
そっちの方が良いように感じます。スリリングさがなくなってしまったような。
でもタカタカと鳴るドラムを聴くだけで心地良いです。
恋に破れ投げやりになった男の曲でしょうか。

Track 8:The Numbers

本作の中では希望が少し見えるような軽やかなサウンド。
「ポロロン」と割り込んでくるピアノが心地よいです。
0:45~辺りからかすかに香る、ニール・ヤングの匂い
後半のストリングスが曲を引っ張っていくところは圧巻です。

未来は僕達の中にある/どこかにあるのではなく

私たちは取り戻す/何が私達の物なのかを

上記のように希望のある内容が歌われまています。

Motion Picture Soundtrack」をよりアンビエントにした感じの曲です。

 Track 9:Present Tense

「In Rainbows」の「Reckoner」に雰囲気がかなり似ていますが、
「Reckoner」ほどは突き抜けてない感じ。
少しボサノヴァやジャズのテイストを感じ、かなり聴きやすい曲です。
歌詞もかなりユニーク。

 Track 10:Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Thief

タイトルの長さに驚きますが、曲の長さは5分程度。
ラジオが途切れるようなプツプツという音から始まり、
「How to disappear completely」を思わせる残響音と、
ピアノ、ストリングス、ボーカル、ドラムスが絡み合います。
後半のストリングスの盛り上げるこのような曲に弱いです僕。
3:52~のドラムスにビートルズの「ストロベリー・フィールズ」を
感じるのは僕だけでしょうか。
”手遅れになる前に僕の元に来るんだ”や"ただ君の出来ることはイェーというだけ"
と意味深な歌詞。

 Track 11:True Love Waits

アルバムのラストを飾るのは、
Radiohead公式ライブアルバム「I Might Be Wrong」に収められているこの曲。
ライブ版がアコギ一本のアレンジであったのに対し、
今作では波打つクラシカルなピアノをバックにトム・ヨークのボーカル。
レディオヘッドとしては珍しくひねりのないストレートな歌詞の曲です。
愛する何かを喪失するような余韻を残し、幕を閉じます。

【アルバム全体として】

アルバムを聴いてみると過去に作った曲の寄せ集めのはずなのに
前作の「King of Lims」のごった煮感とは異なり、
アルバムを通してどこか一貫したコンセプトがあるように聞こえます。

トム・ヨークのボーカルは全く劣化の素振りを全く見せず、
気持良さそうに楽器と楽器の間を泳ぐように歌います

 5年振りのアルバムということで、
今までのレディへの『Kid A』や『OK Computer』等の時代を切り裂く尖ったアルバムを期待した方は肩透かしを食うかもしれませんが、
『In Rainbows』の「Videotape」のような曲が好きな人にはハマるアルバムではないでしょうか。

一聴して世界観にはまり込めない方も、何度も通して聴いてみると、
「いつものレディオヘッド」のサウンドであることに気づくでしょう。
”いつもの”が何を指すのかは横に置いといて。

【サマソニに備えて】

イギリス、いや世界を代表するレディオヘッドの最新作、
iTunesからすぐにダウンロードできるので、チェックしない手はないでしょう。
サマソニに行く予定のある方は必聴です。
※日本でもCD版が発売済なので、気になる方はぜひ!

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 レディオヘッド@サマソニ大阪行ってきました!その感想もどうぞ。

*1:歌詞の解釈は個人的なものなので、あくまで参考程度に眺めといてください