世界のねじを巻くブログ

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太陽の塔の芸術家・岡本太郎が書いた『自分の中に毒を持て』

【内部公開の記念に】

先日エキスポシティに試写会へ行った際、夜の暗闇にボウッと浮かぶ不気味な「太陽の塔」を目にしてきました。
この岡本太郎の「太陽の塔」、2018年3月19日(月)に内部が一般公開されることをご存知でしょうか?
「芸術は爆発だ」ということばで有名な岡本太郎ですが、考え方や生き様も尋常ではありません。

せっかくなので、太陽の塔の内部公開を記念し、昔キンドル版で読んだ岡本太郎の著作『自分の中に毒を持て』の感想を書いてみたいと思います。

【レビュー・感想】

「自分の中に毒を持て」というタイトルからわかるように、かなり癖のある一作。

岡本太郎のドキュメンタリーを見たことがありますが、自分の意志を必ず貫く姿勢が非常に印象的な方でした。
本の文章を読んでも、その印象は決して薄まることなく、彼の常軌を逸した信念の強さがビシビシと伝わってきます。

例えばこういう文章。

ぼくだったらこうする〟というだけだ。それに共感する人、反発する人、それはご自由だ。 
『自分の中に毒を持て』 位置:473より

何気ない一文にも、彼の性格が表れています。

ニブイ人間だけが「しあわせ」なんだ。ぼくは幸福という言葉は大嫌いだ。ぼくはその代りに〝歓喜〟という言葉を使う。 
位置:633


あの「芸術は爆発だ」という有名なフレーズについても、岡本太郎が意図せず、言葉が独り歩きしてしまっていると苦言しています。

ところで一般に「爆発」というと、ドカンと大きな音が響いて、物が飛び散り、周囲を破壊して、人々を血みどろにさせたり、イメージは不吉でおどろおどろしい。が、私の言う「爆発」はまったく違う。音もしない。物も飛び散らない。 
 位置:1867

全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが「爆発」だ。  位置:1867

"爆発"という言葉にも彼独自の世界観があるよう。
宇宙うんぬんの話が出てきたところで、芸術家・横尾忠則のことを思い出しました。

結婚制度に対しても疑問を呈しています。
この本が出版されたのは1993年、つまり今より25年ほど前に書かれたということ。
その当時から結婚制度に"変わった人"と捉えられてしまったことは間違いないでしょう。

ぼくは、結婚という形式が好きじゃない。  男と女の関係は、証明書を登録し、形式的にワクにはめられるようなものではない。
位置:1232

家族というシステムによって、何の保障もされていないことが、真の生きがいであると思う。だからぼくは自由に独身を通してきたのだ。
位置:1257


さらに、職業分化に対しても異議を唱えています。
まるでようやく副業解禁がちらほら見られる今を見据えていたかのよう。

 職業分化の問題。 職業があることは悪いことじゃない。いまの社会人はほとんど職業を持って生きているし、社会もそれに支えられている。 ぼくは今まで一度も職業を持つことが、卑しいなどと言ったことはない。人間が社会で生きていくには、職業を持つことはノーマルなんだから。 しかし、そのために、全人間として生きないで、職業だけにとじこめられてしまうと、結局は社会システムの部品になってしまう。
『自分の中に毒を持て』位置:1867より

いくつか抜粋しましたが、こんなのは序の口で、「えっ?」と驚かされるほど暑苦しい文章が続きます。

体の芯から芸術家肌、悪く言ってしまえば"クセが強い"おっちゃん。
でも、こういうぶれないこだわりがない限り、芸術は生み出せないのでしょう。

余談ですが、この人を人情味あふれた感じに変身させれば建築家の安藤忠雄になるのだ、と勝手に思っています笑

これまた話はずれるのですが、本日、太陽の塔の内部公開を記念して、Dreams Come Trueの無料コンサートがあったのですが、僕も友達も両方ハズレ。
先日の試写会のように、人生続けてうまいことは起きません。
『大阪LOVER』や『決戦は金曜日』も歌ったとのことで、羨ましいかぎり。
内部観覧も予約でいっぱいのようですが、関西人として一度は見てみたいもんですね。

【Kindleの新装版も】

なんと僕がキンドルで当時読んだときにはなかった、『自分の中に毒を持て<新装版>』なるものが出ているようです。
新装版はカラー口絵つきでパワーアップしているとのこと。今から読む方はこちらもおすすめです。

自分の中に毒を持て<新装版>

自分の中に毒を持て<新装版>