世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/Kindle/Lifehackなどについてお伝えします。

『ゲイ・カルチャーの未来へ』田亀源五郎さん最新作の感想

【若いLGBTに読んでほしい本】

ゲイゲートの巨匠として世界的に有名な田亀源五郎さん。
ゲイ文化に関して自身のキャリアを振り返りつつ、現代のゲイ文化に言及した『ゲイ・カルチャーの未来へ』という本を先日出版されたので、さっそく、読んでみました。

様々な優れた作品を出し続け、ゲイカルチャーを動かす田亀源五郎さん本人だからこそ語れるような濃いトークがどんどん出てきます。
その洞察の鋭さに、何度も「うん、うん。」と唸りながら読み切ってしまいました。

 内容は決して同性愛者 だけに向けたものではなく、ストレートの方にも強くおすすめできるものとなっております。軽くレビュー・書評を書いてみたいと思います。

【「弟の夫」裏話も】

この本は、木津毅さんという方と田亀さんとのインタビューをまとめ、それを本にまとめられたという形をとっています。

田亀源五郎さんの半生や創作の源、エロティシズムの探求、欧米と日本社会の比較など、幅広いトピックについて知ることができます。

もちろん、2017年の7月に第4巻が出て完結したゲイ漫画『弟の夫』もその例外ではありません。

 この田亀源五郎さん、エロティックなゲイアートのみならず、ゲイを描いた初の「ヘテロ向けゲイ漫画」である『弟の夫』を描いたことで話題になりました。
ちなみにこの『弟の夫』は第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した名作。
『弟の夫』については下記の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はぜひ。

上記の『弟の夫』をつくるにあたり、田亀さんはこう考えていたそうです。

そういう意味では、非当事者に何をどうアピールできるか、ということが社会を変えられる鍵になるんだろうなと思っていました。 
『ゲイ・カルチャーの未来へ』 P.26より

ゲイやLGBTだけをターゲットにしても、せいぜい総人口の3%~7%程度。

いかにゲイ的な視点をストレートの方に伝えられるか、そこが重要なのかもしれません。

また、下記のように自分の作品に対するスタンスをはっきり示しているところがさすが。

もし私の作品を読んで「これが入っていない」と思うのだったら、「自分で描いてください」と言うしかないですね。 P48

僕が書くこのねじまきブログでも同様のことがいえます。
この「世界のねじを巻くブログ」は基本的にゲイの視点から語った内容になっており、他のLGBTQAは置いてけぼりになってしまいがち、というのは否めません。

なるべく多くの当事者が何かしらの形で"表現"してほしいな、というのが僕の思いです。

他にも、とうの昔からオープンリーな田亀さんのカミングアウト論もこの本の見どころのひとつ。
ゲイカルチャーの未来へ 田亀源五郎

ちなみに田亀さんの英語表記は
Gengorou Tagame ではなく Gengoroh Tagame のようです。

【LGBTブームで終わってしまわないように】

 また、LGBTブームを流行で終わらせてしまわないためには、当事者が声をあげていくしかない、と田亀さんは語ります。

たしかにまだまだ変わっていないことは多いですけれども、変わるチャンスはある。ただ、良くも悪くもその鍵を握っているのは当事者でしかないなと考えています。『ゲイ・カルチャーの未来へ』 P198

上にも書いたように、やはりこのままでは日本は変わりません。
多少うさんくさがられようと、何かしらの形で意志を表明しないと、社会は動かないという意見には僕も同意です。

 

他にも、日本でLGBT運動が起こりづらい要因として、田亀さんはこう語ります。

台湾の場合は、反中国というのをプッシュしているところがあるように思えるんです。それはたとえば、ウクライナが反ロシア的な形でEUに寄りたいからLGBTの権利運動が進んでいるというのと似ています。
そう考えると、日本は逆張りをするような相手がとくにいない気がするので、そういう意味では、推進力に欠けるのかもしれません。  
P.203より

なるほど、ただ単に権利向上だけを訴える動きだけでは不十分であり、社会的・政治的にLGBT権利運動を動かす別の要因が必要ということでしょうか。

そうすると、やはり日本にとっては海外からの視線が気になる2020年の東京オリンピックが大きなマイルストーンになるはず。
逆にいえば、このタイミングを逃すと同性婚などといった議論は影を潜め、"過ぎ去ったブーム"となってしまうのかもしれませんね。

 

また、「あとがき」でフジテレビの"保毛尾田保毛男騒動"についても言及されていたのも興味深かったです。

それを見ながら、そういったゲイ表象が世に出てしまう原因として、ひとつには悪意の有無に関わらず存在する偏見という問題があるが、もう一方では、それに意義を申し立てることができるような可視化された当事者が、仕事の現場にいないという問題もあるのではないか、とも思った。 P238より

他にも、色んなアーティストの映画・小説・絵について述べられているので、ゲイカルチャーを学びたいゲイの方は必読の一冊といえるでしょう。

【異性愛者の方もぜひ】

同性愛やLGBTだけでなく、ノンケ・ストレートの方にもぜひ読んで欲しい本。
田亀さんの創作の原動力から何かを得られるはずです。
僕自身何かを生み出せている訳ではないのですが、もっと"何かを表現する"という行為に目を向けていきたいな、と心動かされた本でした。
こういう本こそ、リアル書店では買いにくいので、Kindle版も出るといいですね。

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)