小松左京と高階秀爾の対談集
どうも、ねじまき(@nejimakiblog)です。
せっかくヨーロッパにも訪れるので、旅行前に西洋美術に関していろんな本を読んでました。
その中でも、古本屋で何気なく手に取った『絵の言葉』という古本がかなり心に刺さっ
たので、軽く感想を書いてみようと思います。
ちなみにこの本は、あのSF作家の小松左京と美術家 高階秀爾の対談集となります。
小松左京は『地球になった男』とかがわりかし好きなので、
それを理由に手に取ったということもあるのですが、やっぱり名著でした。
読書感想・書評
美術に関しての対談ってけっこうお互いの知識を披露するような形で、素人には「うーん」となる部分が多いのですが、この本はそれほどウンチク語りになってないところが非常によかったなと。
さっそく印象に残った部分をまとめておこうと思います。
とくに中世の西洋美術で言えば、挿絵というのは決して本文に付随するだけのものではなくて、それ事態に意味があった。
高階(敬称略) P16
よく言われることではあるのですが、当時は識字率も相当低かったので、
聖書の内容を誰でも理解できる「絵」にすることが非常に大切だったようです。
当時の人々が、どんな気持ちで絵を眺めていたのかを考えると、絵に対する意識もおのずと変わってきます。
ルネッサンスの絵なんかも、同性愛の理解がないと読めないというのが多いと思います。 フィレンツェでは盛んだったのですからね。(高階) P34
日本でもアヌスを菊にたとえますが、西洋ではデイジーですよ。
(小松) P34
こんな感じで、ゲイ的な要素にもしっかり触れてくれている部分もポイント高し。
ひっそりと同性愛的シンボルを潜ませた絵も多いのかもしれません。
薔薇はゲイっぽいですが、キクもそうなんですね・・。
ほめる連中がいたからこそまた一生懸命に絵を描く連中が出てきたという相互作用もあって、あのルネッサンス美術が大きな力になっていった。
高階 P121
あのルネッサンスも、結局はちゃんといいものを批評してくれる人がいて、お金を出資してくれる金持ちがいたから成り立ったもの。
作品を語るのは、そういった意味でもアーティストのためになるのかもしれません。
歌舞伎で雨とか雪を太鼓の音で表現するというのは見事なシンボリズムですよ。 高階 P134
歌舞伎、実は一回も見たことないのですが、そんな表現があるんですね。
でもいまだに高校の頃に学校の課外授業で見た能の間の取り方は、非常に印象に残ってます。
西洋は背景の違った連中が寄り集まって、ある程度普遍的なものを作らなければどうしようもないという重要な社会的課題を抱え続けてきた。 (中略) しかし日本ではみんなの背景が同じだから、そんな必要はないわけです。 高階 P100
やっぱりこの差は大きいですよね。
日本人は同じバックグラウンドをずっと持ち続けたからこそできた文化があります。
そういった部分は、ガラパゴスだと卑下せずに誇るべきかと思います。
西洋は神が自分の姿に似せて人間を作ったという思想だから、当然、神をつくる時には人間の姿に似せてつくる。 高階 P110
なんとなく『千と千尋の神隠し』の映像が頭に浮かびました。
日本の場合は「自然は美しい」という、美と自然との結びつきが実に強固なんです。 P156 小松
自然への意識の違いも、欧米と日本では大きく異なります。
神が創った自然、という自然と人間の対立という構図に対して、
日本では一体感や肯定感というものがかなり強い。
もちろん西洋のほうも、論理だけではだめだということに気がついてはいます。 P187
禅に取り組んでみたり、ドラッグで意識を拡張しようととしたのは、
論理的な部分を超えようとした試みだと思うとちょっと感慨深いですね。
外国にしても、一度行ったところは心理的距離として近くなるということがある。 つまり、物理的には空間の拡大であることが、感覚の方では縮小になるのですね。 P205 高階
旅行中の身としては非常に共感できる一文。
『絵の言葉』というタイトルながらも、あらゆるジャンルの物事に関して書かれているので、好奇心が十分に満たされます。
小松左京を知らないという方にもおすすめです。
芸術に触れる方におすすめ
1976年発売のわりかし古めの本なのですが、現代でも十二分に通じる内容かと思います。古い本ですがぜひ。
- 作者: 小松左京,高階秀爾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1976/09
- メディア: 文庫
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