世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/電子書籍/Lifehack/Podcastなどについてお伝えします。ポッドキャスト「ねじまきラジオ」配信中。

翻訳してほしい本のリスト (2025年版)

日本語訳してほしい洋書まとめ

ゴールデンウィークの定番企画(と言っても二回目だけど)の
「翻訳してほしい本のリスト」。

海外のブックレコメンドや、ニュースレターでおすすめされていた洋書の中から、「良さげだな」と思ったものをまとめてみました。

(※あくまで個人的にレビューを読んで面白そうだなと思ったものを集めただけなので、
実際にこの中で読んだのは2冊ぐらい)

 

yomoyomoさんも2025年版を書かれていたり。

yamdas.hatenablog.com

 

ということで、ジャンル、エリア、年代問わずで色々紹介していきます。

 

All the Living and the Dead: A Personal Investigation into the Death Trade

All the Living and the Dead: A Personal Investigation into the Death Trade (English Edition)

元死刑執行人、大量死事件の捜査員、そして遺族の助産師など、「死」という者に直接関わる職業の人にインタビューをして、そこから得た洞察などを書いた一冊。

僕自身、わりと

スタッズ・ターケルの『死について!』的なものを想像しているけど、
また機会があればこれも読んでみたい。

All the Living and the Dead: A Personal Investigation into the Death Trade (English Edition) [Kindle edition] by Campbell, Hayley

 

『死亡記事を読む / 諸岡達一』(新潮新書)を読んだ感想

 

 

The Hidden Universe: Adventures in Biodiversity

植物学者として植物を探し求めて世界を旅したブラジル人の作者が、
自然界と生物多様性の概念を深堀りするという一冊。

隠された宇宙:生物多様性の冒険(英語版)

生物学の用語とかけっこう難しそうなので、原書で読む自信はないけれど、
テーマは面白そうだなと。

The Hidden Universe: Adventures in Biodiversity | Alexandre Antonelli

 

 

僕自身がゲイなので、LGBTQ+的な作品もいくつか。

We the Animals

We the Animals

1980年代のニューヨーク州北部の田舎で、荒々しく転落した子供時代を過ごす、白人とプエルトリコ人の両親を持つ3人の野生の兄弟についてのデビュー小説。

短い中編の小説ですが、冒頭からなかなか重い展開。

思春期前のクイアな性的指向について、わりとしっかり目にかかれた小説ってなんだかんだ珍しい?ような。

 

実は2018年に映画化もされていたり。

We The Animals (2018) | Official US Trailer HD

 

 

もう一つゲイ的な小説を。

Photo sur demande

breakfast-at-bnn.hatenablog.com

はてなブログで見つけたフランスの小説。

夜の世界で、語り手は様々な男性たちに出会う。単に性行為だけでなく、優しさや話し相手を求める様々な男性たちに出会う。
しかし、簡単に金を稼げることに惹かれ、彼はより頻繁でリスクの高い関係に踏み込んでいく。物語は、新型コロナウイルスのパンデミック、エイズの影、そして病気への根強い恐れといった現代社会の重苦しい背景の中で展開される。

テーマも深く、なかなか面白そう。

 

 

SNS関連の小説も流行っているみたい。

No One Is Talking About This

誰もこれについて語っていない:小説(英語版)

ブッカー賞の最終候補作にも選ばれた一冊。

ソーシャルメディアへの投稿で近年注目を集めるようになった女性が、世界中を旅して熱狂的なファンに出会い・・・みたいな話らしい。

SNS絡めた小説はやっぱり心理的距離も近くて読みたくなるな~

No One Is Talking About This: A Novel (English Edition) [Kindle edition] by Lockwood, Patricia

 

 

FAKE ACCOUNTS

偽アカウント(英語版)

ドナルド・トランプの就任式前夜、ある若い女性が彼氏の携帯を覗き見し、
彼が匿名のインターネット陰謀論者でしかも人気インフルエンサーであることを知り・・・。という話。

インターネット時代の欺瞞ついて書いたデビュー作。

SNS系の現代小説ではこれも面白そう。

Fake Accounts (English Edition) [Kindle edition] by Oyler, Lauren

 

 

I Never Thought of It That Way: How to Have Fearlessly Curious Conversations in Dangerously Divided Times

翻訳してほしい本のリスト洋書英語

「危険なほど分断された時代に、恐れずに好奇心旺盛な会話をする方法」というサブタイトルがついた本。

トランプ支持者であるメキシコ移民の両親を持つジャーナリストが書く一冊で、

アメリカの停滞、選挙の内情、SNSのエコーチェンバーなどについて書かれているらしく、リアルなアメリカを知るにはいいかも。

I Never Thought of It That Way: How to Have Fearlessly Curious Conversations in Dangerously Divided Times

 

 

60 Songs That Explain the '90s

翻訳してほしい海外の本

1990年代の音楽を深掘りしていく、という同タイトルのポッドキャスト番組が本になった、という感じ。

僕も好きな曲のエピソードはいくつか聞いたけど、
しっかり踏み込んだ解説もあって音楽好きならたぶん楽しめるはず。

本は読んでないけどどんな感じなんだろう?

60 Songs That Explain the '90s (English Edition) [Kindle edition] by Harvilla, Rob

 

 

Glory Days

Glory Days: Stories (English Edition)

NYTimesの2024年のベスト・コメディーブックとして挙げられていたので、
それにつられて購入。

サイモン・リッチというユーモア作家の最新作。

ちなみにAudilbe(オーディオブック版)では、
あのジョン・ムレイニーが朗読をしてて
僕は音声版を買いましたが最高でした。

 

 

The Ghost Variations: One Hundred Stories

The Ghost Variations: One Hundred Stories (English Edition)

ほとんどの話で幽霊が主人公?な小説を100話集めた短編小説集。

1話が2ページほどのいわゆるマイクロフィクションなので、
寝る前に読むものとしても面白そう。

積ん読が減ればこれ読んでみようかなと。

The Ghost Variations: One Hundred Stories | Kevin Brockmeier

 

※追記(2025.5.7): 『いろいろな幽霊』という邦題で翻訳が出ていたみたいです。
コメントありがとうございます。

 

 

昔書いた記事の翻訳状況振り返り

2023年に書いた記事の軽い振り返りも。

www.nejimakiblog.com

上の記事で挙げた本がいくつか日本語に訳されていているので、
一応軽く紹介してみたり。

 

In the Cemetery Where Al Jolson Is Buried / Amy Hempel

アル・ジョルスンが眠る墓地で @ MONKEY vol. 31 特集 読書

エイミーヘンペルの短編小説

アメリカの女性小説家、エイミーヘンペルの短篇が柴田元幸さんによる翻訳で読めます。解説も良かった。

短い小説だけど、
この心理描写というか空気感はエイミー・ヘンペルにしか書けないなと。

 

Surrender / U2(Bono)

→『SURRENDER: 40の歌、ひとつの物語

ボノu2 サレンダー

マイクロソフトのビルゲイツもおすめしていたU2のBonoによる自伝。

幼少期のアイルランドの状況も垣間見れたりで、音楽好きにはほんとおすすめ。
お値段にびっくり、ですがこの文字数・ボリュームだと仕方ないのかな。

 

Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow / Gabrielle Zevin

→『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

メタギアの小島監督がおすすめしていたこともあり、日本でもわりと話題になっていた一冊。ゲーム好きの方はぜひとも。

 

最後に、アマゾンの洋書ストアで表紙をよく見たベストセラーも、
日本語訳がちょこちょこ出ているので紹介。(もはやブログタイトルと関係ないけれど)

It Ends With Us / Colleen Hoover

イット・エンズ・ウィズ・アス

bookeater.hatenablog.com

ベストセラーのロマンス小説。どうやら映画にもなったみたい。
DVとかも含まれる内容らしくて、以外と重ためな感じなのかな。

 

Normal People / Sally Rooney
→『ノーマル・ピープル

romancebook.hatenablog.jp

アイルランドでは社会現象になるほどのベストセラーだそう。
確かに日本の洋書コーナーでも、ツナ缶みたいな表紙はかなり見かけたような。

人間の内面にも深く切り込むような重ための恋愛小説なんだとか。

 

こうやって振り返ると、面白そうな小説や話題作の本は
わりとしっかり邦訳されているので、
日本語訳してほしい本をまとめるのは意義のあることなのかも?(と思いたい)

 

長くなってきたのでそろそろこの辺で。

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『グレート・ギャツビー』100周年を記念してオンライン読書会をやろうかなと。

スコット・フィッツジェラルドの代表作

最近、スコット・フィッツジェラルドの長編『グレート・ギャツビー』が発売から100周年ということを知った。

 

アメリカ文学といえば、でよくあげられるぐらい有名なグレート・ギャツビーだけど、僕自身、実は恥ずかしながら未読。

野崎孝さん訳の『フィッツジェラルド短編小説集』しか読んだことがなかったり。

フィツジェラルド短編集 (新潮文庫)

(「乗継ぎのための三時間」はめちゃ好きだった)

 

レオナルド・ディカプリオ×トビー・マグワイアの映画(2013年)なら、
公開当初にみたけれど、
JayZのラップやパーティーが派手だったこと、建築がすごいこと、U2のカバー曲がかっこよかったこと 以外はあまり覚えていないぐらいのレベル。

www.youtube.com

 

・・・ということで、せっかくの百周年という節目に、
ニュースレターでオンライン読書会をすることにしました。

 

フィッツジェラルド体験

村上春樹が「フィッツジェラルド体験」というタイトルのエッセイを書いていたのを、
村上龍のエッセイで偶然知ったので、軽く読んでみたり。

 

フィッツジェラルドの小説の魅力のひとつは、そこに相反する様々な感情が所狭しとひしめきあっていることにある。優しさと傲慢さ、センチメンタリズムとシニシズム、底抜けの楽天性と自己破壊への欲望、上昇志向と下降感覚、都会的洗練と中西部的素朴さ・・・・・・フィッツジェラルドの作品の素晴しさは、彼がこのような様々に対立しあうファクターをいわば本能的に統御し得た点にある。
また逆に言えば、その作品の弱さは彼が本能的にしかそれらを統御し得なかった点にあるとも言えるだろう。

短編小説集『マイ・ロスト・シティー』より

 

実在とは何か? 人の意志がそこを彷徨し、試され、打ちのめされ、変革を強いられる広大な荒野である。しかしフィッツジェラルドにとっての実在とはイマジネーションと幻滅の間に横たわる巨大な空白でしかなかった。そして彼が行なったのはその空白の上に文章という名の美しく脆い橋を架けることであった。

 

ちょうど、はてなブログでフィッツジェラルドについて触れられたブログもよかった。

lumi31.hatenadiary.jp

 

1ヶ月かけて、みんなで『偉大なるギャツビー』を読むという試み。
原文でもどの翻訳でもなんでもOKですが、
僕はいまのところ一番新しい日本語訳である、村上春樹訳で読もうかなと。

 

(※追記:最新訳は小川 高義さんのが最新でした・・・
僕はすでに購入してしまったのでハルキ訳で読もうかなと)

 

グレート・ギャツビー村上春樹訳 100周年 フィッツジェラルド

 

極端な言い方をするなら、僕はこの『グレート・ギャツビー』という小説を翻訳することを最終的な目標にし、そこに焦点を合わせて、これまで翻訳家としての道を歩んできたようなものである。

グレート・ギャツビー』あとがき より

 

ニュースレターで、本の進捗にあわせて月2~3回配信予定です。

2025年5月1日からスタートなので、少しでも興味ある方はお気軽にどうぞ。

 

BookStack」への登録はこちらより。(※もちろん無料です)

 

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100年以上前の短編小説があまりにもAI社会すぎて驚いた話

機械が止まる / E.M.フォスター

ObsidianのCEOであるSteph Ango氏が、E.M.フォスターの「機械が止まる」というSF短編小説おすすめしていた。

ちょうどその本を積ん読していたこともあり、「せっかくだから」と該当の短篇を読んでみると、AI社会、SNS、コロナ禍、ストリーミング配信、ディストピア、みたいなものを予見しているかのような小説だったのでびっくり。

しかもこれ、100年以上前に書かれた作品なのよね・・・。

ということで軽く内容や感想をまとめようかなと。

 

(※ちなみに以前紹介した記事はこちら)

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あらすじはこんな感じ。

人間が五感を通じて直接物事を経験することを恐れて、それぞれが孤独に部屋に閉じこもったまま、機械を通じての連絡だけで満足するようなった未来社会。
あるとき、母ヴァシュティは、地球の裏側にいる息子クーノから電話を受けるが・・。

(僕が考えたあらすじなので色々省いてます)

 

ちなみにこの「The Machine Stops(原題)」が書かれたのは 1909年。

anond.hatelabo.jp

はてな匿名ダイアリーで30年前の日本のSF小説が話題になっていたけれど、
この「機械が止まる」は1世紀以上前(1909年)に書かれた作品。

夏目漱石の『吾輩は猫である』が1907年に完結したと考えると、
EMフォスターが異色すぎて頭の中のライムラインがバグってくるレベル。

 

時代背景としては、19世紀半ばのロンドンはすでに地下鉄が走っていて、
電話が普及し始めていたりする頃。

飛行機はまだ発明されてはないけれど、飛行船は実用化が始まっており
蓄音機やサイレント映画もこの頃から普及が始まったあたり、というイメージ。

 

当時の英国と日本の技術力の差を改めて思い知らされるなと。

 

機械が止まる/E.M.フォスターSF短編小説集

 

「機械が止まる」を読む前は、E.M.フォスターにSFのイメージは一切なかったけれど、
ぐぐってみると、楽観主義的なH.G.ウェルズの批判をしていたらしく、そういう意外な一面もあったらしい。

 

 

・・・ということで下記、印象に残った文章や感想をまとめていこうかなと。
ネタバレも多少込みで書いていくのでご了承を。

 

彼女には数千人の知人がある。ある方向に、 人間との交際が途方もなく進行していた。

まさにSNSっぽい世界観。。

 

「機械」を通してじゃなくて会いたい。うんざりする「機械」を通してじゃなくて話したいんだ」
「ちょっと、あなた!」漠然とした恐怖に襲われた母親が言った。「「機械」を貶すようなことは、絶対に言っちゃ駄目よ」

「機械」では、微妙な表情が伝達できないという設定もあったり。
・・・実際にZoom会議でこれを経験した人も多いはず。

 

機械が監視してそうなところもいかにもディストピア小説っぽい感じ。
ただ、この作品では『1984年』ほど完璧な監視社会、ってわけでもないのが面白い。

 

地球の表面は塵と泥ばかりで、生きてるものは何も残ってないの。それに、人工呼吸器が必要になるわよ。さもないと、外気の寒さで死んでしまう。外気に触れるとすぐに死ぬのよ」

みんな、地下のシェルターみたいな部屋に住んでいる設定。

この頃のSFは、ヴェルヌの『地底旅行』とかウェルズの『タイムマシン』とか、
地下世界に未来を見ていた傾向にある気がする。

 

それらの質問の大部分に、彼女は苛立たし気に答えた。―――苛立ちは、その加速した時代に顕著に現われ出した特徴だった。

加速したネット社会のイライラ感、みたいなのをこの当時から書いていてすごい。

 

「ああ、機械さま! ああ、機械さま!」と呟き、唇に「ご本」を当てた。三度口づけをし、三度お辞儀をし、三度、黙認の生む忘我の境地に達した。

もはや神的な扱いをされている機械。

ChatGPTをこんな感じでもてはやしている人をSNSで見かける気がしなくもない。

 

「「無宿」」処分にするぞって脅されてるんだ。そんなこと、「機械」を通して言えなかったんだ」

「無宿」は死を意味した。その刑を受けた者は大気に曝され、そうして死ぬのである。

「この前お母さんと話したあと、僕ずっと外に出てたんだ。物凄いことが起こったんだけど、見つかっちゃったんだ」

人間は滅多に身体を動かさなくなった世界にもかかわらず、地球の表面に出ていった話をする息子。

 

怖かったのは、電気が通ってるレールに触って感電死するってことじゃなかった。もっと漠然とした――「機械」が考えてなかったことをするってことだった。でも、思ったんだ、「人間が尺度だ」って。

いや、ほんとに今大切なやつ。
蒸気機関車の時代にここまで考えているのは素直にすごい。

 

というのも、クーノは父親になりたいと申請したにも拘わらず、 「委員会」によって却下されていたからである。クーノは、「機械」が次世代に残したいと思うようなタイプの人間ではなかった。

その人に備わる能力で人生が決まるという、映画『ガタカ』みたいな設定も。

 

僕たちの肉体と意思を麻痺させてしまった。そうして否応なしに、僕たちにその 「機械」を崇め祀らせてるんだ。「機械」は進歩してる――でも、僕たちの線に沿ってじゃない。「機械」は進んでる――でも、僕たちが目指すゴールに向かってじゃない。僕たちが存在してるのは、ただ「機械」の血管をめぐる血球としてだけなんだ。だから」 もし「機械」が僕たちなしでも作動できるんなら、僕たちを死なせてしまうだろうな。だけど僕には解決策なんてない――

こういうのを読むと、手放しに人工知能を推し進めるだけなのはやっぱりどうなんだろう、と思ったりもしてしまう。

 

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『「機械」の書』を手にしたときに感じる不思議なやすらぎ、単なる聴覚に対してはほとんど意味をなさない、「ご本」に記されている数字を反復するときの喜悦、どんな些細な用件に関するものであれ、ボタンを押すとえつきに訪れる陶酔、あるいはほんのちょっとでも電動ベルを鳴らすときに覚える無我の境地、について語り始めたのである。

新しいプロンプトをSNSで見つけて気持ちよくなっている人、を揶揄しているように深読みもできる。

 

何人も、「機械」は手に余るものになったと告白しはしなかった。年ごとに、「機械」崇拝の巧妙さ、効率が増し、その知性は減少した。人が 「機械」に対する己が義務について知れば知るほど、隣人の義務については無知になり、 世界中で、その怪物を全体として理解する者は皆無になった。そういう卓越した頭脳はずでに死に絶えていた。

ここはChatGPT以降の現代だからこそ響く文章。

 

...「人類」は安楽さを求めて背伸びをしすぎた。自然が埋蔵する富を使い果たしてしまった。静かに、安らかに「人類」は頽廃の淵に沈みこみ、進歩とはすなわち、 「機械」の進歩に他ならぬことになった。

確かに今の人類も、人類の進歩というよりは機械の進歩に置き換わってないか、と思える節もある。

 

「「機械」が止まってる、ですって?」友人は答えた。「どういう意味なの? そんな言葉、私にはまったく意味をなさないわ」

ChatGPTがある日急に使えなくなる、なんて信じられない人もいるんじゃないかな。

 

 

彼らはしかし、不具合にもう腹を立てることがなかった。欠陥は修復されなかったが、この後半期の人体組織は極めて従順になっていたので、「機械」を襲うどんな気まぐれにもすぐに順応したからである。

交響曲の一番良い部分で"吐息"が混じるようになっても、気にしなくなる母。

ポエムマシーンがでたらめな韻を踏むようになったり、お風呂が悪臭を放ちはじめたり、睡眠用ベッドがセットされなかったり、どんどんガタが出てくる「機械」。

ChatGPTも性能が突如がた落ちすることが度々あったけれど
それを想起させる展開だった。

人間がAIに適応している節はあるよね・・・。

 

 

最終的には「機械」が破綻する日が来る。

ああ、明日―――その明日に、どこかの愚か者が「機械」をまた動かすんだわ」
「絶対そうじゃない。絶対に違う。人類は教訓を学んだんだ」

 

・・・最後は本を読んで見届けてほしいなと。

 

ざっくりまとめると、

・人々は直接顔を合わせずに通信機器を通してコミュニケーションを取っている

・人間関係の希薄化

・SNS社会

・「機械」が不調をきたす

・Spotifyみたいな音楽サービス

・機械を崇拝する人間

・身体を動かさなくなる人間

etc...

それぞれ蜂の巣型の部屋に閉じこもっている≒コロナ禍のロックダウン、という深読みをするのも面白いかも。

 

それはさておき、
AI、SNSの本質的な部分を(1900年代にしては)かなりの精度で予期したような短編小説だった。

 

タイムマシン、 ガタカ、すばらしい新世界、1984年、華氏451、ゼロ・グラビティ、ナウシカ、ブラックミラー etc...

上記のワードにピン、とくるものがあるSF好きの人なら読んで損はないはず。

この短編時代は56ページほどのすぐ読める内容なので、寝る前にでもどうぞ。

E.M.フォスターの作品は実はこの『E.M.フォースター短篇集』しか読んだことがなくて、有名な長編『インドへの道』『眺めのよい部屋』『ハワーズ・エンド』はどれも未読。
どれから読めばいいんだろうな~。

長くなったので、そろそろこの辺で。

sizu.me

『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』を毎日読む試み

時間SFの古典名作

どうも、ねじまきです。

2025年4月は、
『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』(浅倉久志訳)という
時間SFの短編小説集を毎日読んで、軽い感想を書いていくことにしました。

 

『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』(浅倉久志訳) 時間SF

 

あらすじはこんな感じ。

30通りの異様な時間。

若き特許局員アインシュタインが見たかもしれない奇妙な時間の夢を、現役物理学者が詩情豊かに描くー

 

日本ではいまいち知名度が低いですが、
海外では「短編小説の名著」としてよく名前があがるぐらいの名作。

僕自身、数年前に一度読んでいるんですが、
SFの短編小説を書いてみたいなと思っているので、
物語解釈・構成の練習的な意味も込めて、再読してみようかなと。

 

ちょうど30のエピソードで構成された一冊なので、
4月に毎日1章ずつ読んで軽い感想を書いていく予定です。

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プロローグ

物語はこんな感じでスタート。

手にはしわくちゃになった二十ページ分の書類を握りしめている。
きょう、ドイツの〈物理学年報〉宛てに郵送するつもりの新しい時間理論である。

 

四月の中ごろからここ二カ月あまり、彼は毎晩のように時間と関係のある夢を見てきた。その夢が、彼の研究を乗っ取ってしまった。

 

べつの世界には、そうした性質の時間が存在するかもしれない。

 

要するに、アインシュタインが相対性理論を考え出したころに、
彼が見たであろう夢を再現した30の物語が書かれているという一冊。

なのでどれもユニークな時間の流れ方をしているという仕組み。

 

ということで、さっそく第一夜から。(まさに『夢十夜ですね』)

 

1905年4月14日

時間が「始めも終わりもない円環」である世界。

 

世界はその歴史を正確に、かつ無限にくりかえしていく。

「大多数の人は、自分が同じ一生をくりかえしていることに気がつかない」。

おぼろげにこの真実に気がついた人もいて・・・という
ちょっと時間の怖さを知るエピソードだったり。

 

1905年4月16日

時間が「水の流れ」に似ている世界。

突如その流れが変わることがある。

突然過去に飛ばされたり、未来からやってきた者もいたり・・・。

タイムトラベラー = "時間の流刑者"という考え方もなるほどなと。

 

 

1905年4月19日

とある男が、女に再度会う決心をした世界線と、そうでなかった世界戦。

どの未来も現実である。

パラレルワールドの哲学みたいなものを、短い文字数で表していてすごい。

 

 

1905年4月26日

機械時間と肉体時間、二種類の時間がある世界。

ふたつの時間が出会うところには絶望がある。

なるほど・・・一瞬で時間が経つ気がするのは、肉体時間で考えているからなのか。

 

1905年4月24日

地球の中心から遠く隔たるほど、時間の流れが遅くなる世界。

若さをたもちたい一新で山の上に引っ越す人も。
そして高さが地位を示すようになり・・・。という寓話的な話。

 

 

1905年4月28日

時間が絶対の世界、"神のまします証拠"とされる世界。

みんな自分の時間の中に「避難」する、という話。

哲学的でちょっとむずい。

 

1905年5月3日

原因と結果が不安定な世界。

 

この世界の芸術家たちは恵まれている。予測不可能性こそ、絵画や音楽や小説の生前であるからだ。意外な出来事、説明や先例のないハプニングに、彼らは狂喜する。

 

どんなふれあいにも過去と未来がない、そんな空間だと、
今できることをやるしかない、というのもなんだかな。

自分がいるこの空間ももしかするとそうなのかもだけど。

 

1905年5月4日

時間は経過するが、ほとんど何も起こらない世界。

かりに野心をいだいているものがいるとすれば、その人間は、それと知りつつ、だが、ごく緩慢に苦しんでいることになる。

うーん、やっぱり大変だとしても、予想外のことが起こる世界の方が面白いよな。

 

インタールード

友人のベッソーとの会話。

「ぼくが時間を理解したいのは、唯一者に近づきたいからなんだ」

 

1905年5月8日

みんなが世界が終わる日を知っている世界。

世界がまもなく終わることを気にしているようには見えない。だれもがおなじ運命を共有しているからだ。余命一カ月の世界は、平等な世界である。

終末のオチを書かないところもいい。

 

1905年5月10日

町のそれぞれの区間が、別の時間に固定されている世界。
別の時間に面してはいるけれど、みんな孤独。

あんまり意図がわからない話だった。

 

1905年5月11日

時の経過とともに秩序が増していく世界。

哲学者たちはこう論じてきた。秩序に向かう傾向がなければ、時間はその意味を失うだろう。未来は過去と見分けがつかなくなるだろう。

 

春になると、みんな整っているのに飽きてきて、夏まで破壊をつづける、という設定が面白かった。

 

1905年5月14日

時間が静止する世界。
時間は中心から同心円に広がっているので、外側が時間の経過が速い。

中心にいきたがるのは、恋人や子供を連れた家族たち。

時間の中心には近づかないほうが賢明だというものもいる。人生は悲しみの器だが、 それを生きぬくことこそ気高いのであり、時間のないところには人生もない、と。

それに反対を唱えるものもいる。自分は永遠の満足のほうを選ぶという。たとえその永 遠が、標本箱にピンで止められた蝶のように、凍りついて動かないものであっても。

こういうのを読むと、なんだかんだ、24時間平等に進む僕らの世界は悪くないのかもね。

 

1905年5月15日

時間の無い、イメージだけの世界。
淡々と羅列される、詩的な情景描写が美しい。

こういうの真似したいよね。

 

1905年5月20日

記憶がない世界。現在という瞬間の世界。
手帳をもって記録使用とする人もいるし、もう諦めてしなやかな足どりで歩く人も。

妻とのふれあいもはじめてのように鮮やかだったり。

 

1905年5月22日

時間がきまぐれに流れる世界。

自分の未来が見えたり、見えない人もいたり。

未来が見えることへの苦悩。それは幸せなのか?

 

1905年5月29日

動いている者ほど、時間が得られる世界。
家も郵便局も、びゅんびゅん動いている。

諦めて自分の部屋に閉じこもり、外を見ない人もいる。

 

インタールード

友人との何気ない会話。

 

 

1905年6月2日

ぐじょぐじょの茶色になった桃がピンクに戻る、時間の流れが逆の世界。
ノーベル賞を受賞した学者が、若くて活発な"未来"を夢見てすごす。

 

 

訳者あとがき

-

解説

-

 

さっき気づいたんですが、今月が四月なので、
ちょうど120年前にアインシュタインが一般相対性理論を発表したのか・・とびっくり。

 

夏目漱石『夢十夜』×時間SF みたいな感じの一冊。
1章ほんの数分で読める短さなので、普段本を読まない人にもおすすめできるかなと。

どれも独特の時間の流れ方をする話なので、
クリストファーノーラン監督の『TENET』とか好きな方もたぶん楽しめるはず。

時間という異質な空間の中で過ごす人間本質みたいなものが見れて面白いなと。

・・・ということで、毎日更新予定です。

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Netflixが海外文学を"食い荒らす"問題について

ネットフリックスと小説の映像化

ニューヨークタイムズのこんな記事が面白かったので軽く紹介。

簡単にいうと、「ネトフリが世界文学を食い荒らしている」的な話。

 

・Netflix Is Gobbling Up World Literature. What Could Go Wrong?

www.nytimes.com

最近、世界の有名な本を次々と映像化しているネットフリックス。

『百年の孤独』『ペドロ・パラモ』『三体』『山猫』など、
かなり有名どころにどんどん着手しているのは誰がみても明らか。

 

www.youtube.com

 

小説を映像化する傾向は、
ロアルド・ダールの原作の権利を購入したあたりから急に加速したのかな~という印象。

 

世界中にファンを抱える日本のアニメもその例外ではなく、
『幽遊白書』『ワンピース』『寄生獣』など、
どんどん漫画やアニメが映画やドラマ化しているので、
日本人としてもその実感がわく人は多いはず。

 

どうせなら映像化の挫折が続く『AKIRA』を映画化してくれよ、
と思わなくもないし、

日本人として、海外資本にマンガ原作を安売りするのもどうなの?と思ったりもする。
(どうせならU-NEXTで見れたほうがいいと思う)

 

そういえば、Apple TVも『パチンコ』を映像化していたりもするし、
良い小説の権利を購入して、映像化してより多くのファンを取り込む、という方法は
ストリーミング配信サービスの手堅い戦略なのかも。

 

素材がよければ、映像もそれなりには仕上がるので、
といいたいところだけれど、成功している作品はそれほど多くないのは
映像化の宿命というかなんというか。

 

映画やドラマとして見られるのは嬉しいけれど、
だいたいは「オリジナルがよかった」となることが多いので、
何かしらの原作を痛めず、現代風にアレンジをする工夫するとよいのかも?
(※三体はその辺がうまかった)

 

どうぜ映像化するのであれば、
あまり日の当たらない、けど面白い短編小説を30分ぐらいで映像化してくれるシリーズが出てくるととても嬉しいけれど、あまりまだそういう動きは見られないような。

 

・『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』

これはわりとよかった記憶。

 

ニューヨークタイムズの記事がいうように、
どれも「Netflix化」している感じは否めないので、
もうすこし原作への愛を感じさせるアダプテーションがされるといいな、という話。

「gobbling up」(食い荒らす)という英語表現も学べた日曜の夜でした。

 

特にオチもないけどそろそろこの辺で。

 

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Netflixの映画はなぜどれも同じような映像に見えるのか? - 世界のねじを巻くブログ

『族長の秋』オンライン読書会を一カ月かけて行います。

ガルシア=マルケスの長編代表作

ノーベル賞文学賞を受賞したコロンビアの作家、
ガブリエル・ガルシア=マルケス『族長の秋』の文庫版が2月末発売予定。

百年の孤独』ブームに続いての文庫化。

せっかくの機会なので、オンライン読書会を開催することにしました。

「3月1日から一ヶ月かけてみんなで読み通す」という試み。

族長の秋文庫化記念のオンライン読書会

 

このオンライン読書会の方針として、
・単行本でも、文庫本でもどちらでもOK。
・無料で参加できます。
ニュースレター+掲示板という形式で行います。

 

bookstack1.substack.com

 

ニュースレターの配信日は、

3月の
・10日
・20日
・31日 

三回にわけて配信予定。

 

下記に具体的なスケジュール・目標ページ数は発売されてから追記しておきます。

 

※ 章分け・単行本ページ数 ・ (文庫本ページ) の順に記載 ) (※工事中)

 

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◆ ニュースレター(BookStack)
→イントロダクション回配信

まずは文庫版発売日の6月26日(水)
手引き的や読むための予備知識的なものをお届け。

 

章分けを書いておきます。

(※文庫版ページ、訳者あとがき・解説含む)

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1章 P67 
2章 P127
3章 P183
4章 P241
5章 P311
6章 最後まで

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●ニュースレター配信 (3月10日)
→ 第一回 (2章までの振り返り・感想)

P127 まで

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◆ ニュースレター配信  (3月20日頃)
→第二回 (~章までの振り返り・感想)

P241まで

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◆ ニュースレター配信 (3月31日頃)
→ 最終回 (最後までの振り返り・感想)

最後まで

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というイメージ。

感想だけでなく、背景知識など調べながら読んでいこうかなと。

 

・・・解説含め全部で432ページとのことなので、

おおまかな計算ですが、

文庫本:  432ページ  432÷31≒  (一日あたり)  約14ページ

単行本 : 384ページ  384÷31≒ (一日あたり) 約13ページ

 

上記のペースで読めば、
だいたい一カ月で読み終える計算となります。

 

読書会専用の無料掲示板も作ってみましたので、
ちょっとした感想や進捗の確認などを気軽にカキコしてみてください。

→ 『族長の秋』読書会用スレ ねじまきBBS - zawazawa

 

・・・ということでそろそろこの辺で。

『百年の孤独』に負けず劣らずの名作、と名高い小説を読む絶好のタイミングなので、
よければ一ヶ月かけて一緒に読んでみましょう。

 

誰でも参加できる、読書会はこちらより登録できます。(※無料です)

 

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100分de名著 の『ねじまき鳥クロニクル/村上春樹』が発売されるらしい。

ニューヨーカーが100周年を迎えるので、おすすめ記事をまとめてみた。

The NewYorker誌

あの世界的に有名な雑誌「ザ・ニューヨーカー」が、
今月で創立100周年を迎えるらしい。

www.newyorker.com

ドロシー・パーカーやジェームズ・サーバー、村上春樹などあげればキリがないほどたくさんの大物小説家やライターが支えた雑誌。

 

以前ブログで紹介した「カートゥーン・キャプション」もNew Yorkerより。

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これめっちゃ好きなんよね。

 

・・・と、まあそれは置いといて、

今回は百周年記念ということで、
おすすめのニュース記事やコラムを紹介していきたいなと。

 

自分のブックマークアプリを振り返って、
「よかったな」と思う記事をぺたぺた貼っていきます。

 

・クリエイターエコノミーについての記事

www.newyorker.com

やっぱりカルチャーやトレンド系のコラムは面白い記事が多いなと。

 

 

・マイクタイソンについての記事 (1997年)

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当時の雰囲気を詰め込んでいて、臨場感がすごい。

 

 

・ミルトン・グレイザーはいかにしてアメリカをクールにしたのか?

www.newyorker.com

ミスチルもアルバムジャケットでパロディするほど有名な、
あのグラフィックアーティストについての記事。

 

 

・刑務所の中で聴くテイラースウィフト

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こういうドキュメンタリーみたいなのも読み応えある。

 

 

・ザ・シンプソンズの美しさについて

www.newyorker.com

いや、ほんと。エドワードホッパーぐらいアメリカを感じるよね、シンプソンズ。

 

 

・短篇小説「クリーム」に関するインタビュー

www.newyorker.com

日本の小説家でニューヨーカー、といえばやっぱり村上春樹。
探せばけっこう色々出てきたり。

 

・小さな本屋さんは"場所の無駄"なのか?

www.newyorker.com

これは日本でも話題になっていた気がする。

 

 

・新しい時代のキュレーター

www.newyorker.com

 

・ウェブメディアが絶滅の危機に瀕していることについて

www.newyorker.com

 

・AIはなぜアートを作らないのかwww.newyorker.com

AI関連のエッセイも面白い。

 

 

・"古き良きインターネット"についての記事も、みんな好きなはず。

www.newyorker.com

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・ルポールはいかにしてドラァグクイーンをメインストリームに押し上げたのか?

www.newyorker.com

なんと1993年の記事。
当時のこういう分析とかも、ほんと貴重だなと。

 

ということで、アメリカとともに歴史を歩んできた、
ザ・ニューヨーカーおすすめの記事の紹介でした。

祝日の暇つぶしにでもどうぞ。

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Vice Mediaが破綻するそうなので、おすすめの記事を紹介してみる

『パティ・スミス詩集』を毎日読んで感想をまとめる試み

Patti Smith「無垢の予兆」

先日書いた[やりたいことリスト]で「詩を読む習慣をつける」を目標のひとつにしていたので、
2025年2月の月間チャレンジは
図書館で借りたパティスミスの詩集を毎日読むことにしました。

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Patti Smithって誰やねん?という人に向けて一言で書くと、
ニューヨークで大成功した「パンクの女王」。

もともと詩人からミュージシャンになった人なので、
歌詞の語彙力や言葉の組み合わせも、他のアーティストにはない
独特の強さがあるのが特徴。

 

ちなみにこの本のタイトル『無垢の予兆(Auguries of Innocence)』は
ウィリアム・ブレイクの詩集「ピカリング草稿」の中から取られた題。

冒頭に引用されていたりもします。
(この有名な詩をまず読んだけど、全体的に力強くてすごかった)

 

ひばりは羽を傷め ケルビムは歌うのをやめる

 

U2とよくコラボしていたPatti Smith、
根柢にはウィリアム・ブレイクの「無垢」というキーワードがあったんだなぁと。

 

無垢の予兆 パティ・スミス詩集

パティスミス詩集 無垢の予兆

 

この本を借りたときは、
てっきり「その時点のキャリアの歌詞をまとめた一冊」かと思ってたのですが、
そうではなく、完全にパティスミスが書いた「詩」を綴じた本とのこと。

 

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ちょうどポエムが28個収録されていて、
「そうだ、2月は28日までやん」と気づく。
・・・ということで、今月は毎日パティースミスに触れていきます。

 

英語原文で読まないと理解できない部分はたくさんあるだろうけれど、
巻末に訳者の解説もあるので、それもあわせて楽しんで行こうかなと。

 

詩集をもってる人だけにしか伝わらないかもだけど、
あくまで自分のために、思ったことなどを記録していきます。

 

ラブクラフター

記念すべき一編目。
せっかくなので、ゆっくり声に出して読んでみたり。

 

生霊となって嘆くあなたが見えた

古代の者たちの炎をかき立てよ

文字を書く果汁のための

梨やサンザシの小枝でかき傷を作りながら

 

一つひとつの言葉選びに、全く気を抜いてない感じがすごい。

 

ちなみに解説を参考にすると、

開拓期のアメリカにりんごの種をまいて歩いたと伝えられる、
十八世紀生まれの偉人、ジョニー・アップルシードと、

二十世紀の恐怖・幻想小説のあの大御所、H・P・ラブクラフト、
そして現代の社会運動家であり政治活動家でもあるラルフ・ネイダーへのオマージュ
として書かれたんだそう。

ある日、政治集会に向かう飛行機の上で、眼下に広がるアップルシードのもたらした光景を見ながらこの詩を作ったとのこと。

 

英語と日本語はリズムや韻が全然違うはずなのに、不思議と心地よく読める。
「翻訳もすごい」と初めの一編から伝わってくる質の高さ。

 

 

 

我々のためにほふられた貴重な子羊

彼女の悲鳴を聞きながら、その細長いのどを

つかんで持ち上げ、汗でぬめる太い両腕に抱えた。

そして彼、自制心のある男、肩幅が広く

ブレイクのような目をした男は、誰がおまえを育て、誰が

おまえを牧草と花々の中で世話したことかと嘆きながら、引き裂いた


口蹄疫の影響で飼っていた羊を全頭殺処分しなければならなかった、
イギリスの農夫の様子をうたった詩。

ありありとリアルに浮かぶ情景・・・。
短い詩なのにこの力強さはどこからでてくるんだろうか?

 

ドードーの眠り

かなり短めの一編。

太陽が、雲の合間に血を流しながらぶらさがる。

かくも悲しき驚きに満ちた、神の血走った目。

ドードーは目を覚まし、それらを見やり

ふたたびゆっくりと目を閉じる。

十七世紀に絶滅した、モーリシャス島のドードー鳥をしのんで書かれた詩。ドードーは食用には適さなかったので、単に娯楽のために殺され、絶滅に追いやられたらしい。

パティスミスの環境問題への意識はこの頃からあったんだなと。

 

長き道のり

わりと長めの詩。
弟妹に向けてかかれたもので、道なき道を前向きに進んでいく感がよい。

今やわたしたちには一人の母もなく、極細の糸をより上げるようにしゃべり散らし

悪意なき新しい暴力とともに誓いを吐き

生まれ出るために蓄える――動くことと

星の動きへのわたしたちの忠誠。

すげー表現だ。

 

 

ピタゴラス派のトラベラー

世界の美と人間の対比に圧倒される。

美はそれだけで不滅ではない。

それは答えであり、暗号化された言葉であり

音符であり、雲の馬に乗って駆け去る筆先―――

巨大なくじらたちの打撲を負った背のこぶ。

子供時代に見た雲、神の雲が

ばら色に、すみれ色に、金色に浸される。

 

 

砂漠のコーラス

なんのために?

降伏の金箔のために?

こんな言葉出んて。

 

あたなの頭を飾る花輪よ。

あなたの灰を彼にすり込んでやりましょう。

アメリカがリビアを爆撃した直後に書かれた詩。

 

ある湖のほとりで書かれた

元日。ろうそくの芯がよじれる。
しつこい鏡はウィンクする。彼女のまつげと同じく時間といっしょの片目。

若い恋人に振られた女性を描いた詩だそう。
どうりであんまり自分には響かなかったんだなと。

 

 

オラクル

ハンブルクの天使の彫刻をみて書いた詩なんだそう。
少年は姉に能力をたくしてこと切れたってこと? 
短すぎて、かつ難解で自分には読み取り切れなかったな...。

 

セッティング・アンド・ザ・ストーン

タブルミーニングなタイトル。

これも上の詩と同じく難解。
設定がもう少ししっかり書かれていた方が個人的には楽しみやすいかな。

 

マストを倒して

パティースミスの亡くなった夫を描いた詩。

わたしたちは魔法のきかない呪われた草地に横たわり

動的な空に分解してゆく自分たちをなぞる。

わたしがあなたの腕に触れると肉がくずれ落ち

わたしの両手はもはや空っぽではない。

 

わたしたちはなおも暗い航海を取り戻そうとしつつ愛し合う

赤い犬の腹を貪りながら。

 

ブルードール

青い人形を振り回して、実は自分が着ているのは青い洋服だったというやつ。
ホラー的な詩かと思えば、
上に同じく死んだ夫を書いた歌なんだそう。

 

すべての聖者の夜

夫との死の別れを描いた詩。

「書くことのなかった作家」は、まだまだ書ける詩があったのに、
亡くなってしまったことへの惜しみみたい気持ちが含まれたことばで辛い。

聖者を浮き彫りにしたメダルが草むらに雨のように降り注いだ。小さな物乞いたちは袋をメダルでいっぱいにし、その一枚を彼女に手渡した――聖フェデリコ、書くことのなかった作家、

見捨てられた野の保護者。

 

 

 

 

(※随時更新する予定です)

 

1カ月毎日、じっくり詩を読んでいくという試み。

図書館の予約が入ってしまえば残念、なんですが、
その時はそのときということで笑

 

今後の更新をお楽しみに。

 

※まさかのパティスミスが『サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス』で来日予定。

東京と京都で展示とライブパフォーマンスをするんだとか。

 

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「あなたも流行作家になれる」筒井康隆の小説論を読む。

流行りと作家論

以前ブログで紹介した『乱調文学大辞典 / 筒井康隆』の巻末附録として書かれている
「あなたも流行作家になれる」

ネタっぽいけどわりと真面目な作家論としても読めるので、軽く紹介しようかなと。

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・日本では、英米の条件に加え、量産する作家が「流行作家」である

「現代の眼」の話はわりと芯をついている気がした

 

・マンガ一ページは、原稿用紙にして約三十枚の情報量を持っている。

マンガを読むことにより、「マンガよりも視覚的で、マンガよりもスピーディで、マンガよりも面白い、マンガでは表現できなないもの」を発見していただきたい。
それをつかんだら、もうしめたものである。

 

ヘミングウェイの「持つと持たぬと」(To have and have not)という小説の中に、 オ〇ニーをしている女の意識の流れみたいなものが出てくるが、あれを参考にしてもよろしい。男に振られた中年女の自分への哀れみが基調になっていたようである。

 

 

・「流行作家の体質」に改造するための十カ条 も面白かった。

 

1:少年週刊誌二誌、マンガ週刊誌二誌、中間小説誌(月刊)二誌を購読していただきたい。特に少年週刊誌は隅から隅まで読むこと。

 

4:家ではできるだけテレビを見なさい。ただし自分の好きな番組ばかり見てはいけない。

 

7:なるべく歳下の人間と交際しないさい。特に子供とは、できるだけ話すようにしなさい。


ふざけているようで、この辺はわりと真面目な作家論だった。

 

 

原稿の売り込み方」「ライバルの蹴落とし方」まで書いていたりも。

では、いかにして相手を蹴落すか。答は簡単である。あらゆる機会を利用して、相手の小 説を褒めればよいのだ。しかも、的はずれな褒めかたをする。相手は喜び、褒められた部分 にこそ自分の才能があると思って、次からは的はずれな作品を書く。この辺のところは「批 評に対する心構え」の章を読み返し、それを逆手にとればよいのである。

 

 

「入稿遅れの言いわけ」の章より

 

6.怒号型

「こらあっ。原稿はとっくにできてたんだぞうっ。どうして取りにこなかったんだあっ。けしからんじゃないか。あまりけしからんから、よその雑誌に渡した」

 

 

批評とは、読者が読むもので あって、作家の読むものではないということを、この際あなたははっきり認識しておいた方 がよろしい。

 

 

小説も同様である。締切りの日まで、その仕事をしてはいけない。遊んでいればよろし い。

 

いよいよ締切り日の前日、モーあなたは我慢できない。出そうである。立っていられな い。身をよじって苦しむ。眼前の宙を、折り曲げた両手の指さきでバリバリとひっ掻く。頭 の中には、すでにストーリイができあがっていて、細部まで肉づけが終っている。だがここ で、さらにぐっと我慢し、あなたは肛門括約筋をぎゅうっとひき締める。

さあ、いよいよ締切り日当日。あなたは便所にとびこんで、一気に書きあげてしまう。 一気に書きあげるといっても、おのずからそこには、いいウンコを出すためのテクニック というものがある。

 

 

「流行作家」適性検査も爆笑モノで、
一問目からオ〇ニーの回数を聞かれるという。

(古本を買ったので以前の所有者の回答が鉛筆で書かれていたけれど、
ここだけ「?」になっていて面白かった笑)

 

筒井康隆が、ジャンル別に流行作家を分類している章は、
かなり真面目で、ちょっと参考になったり。

 

「流行作家の末路」も良いオチ。

 

ものの80ページ強の巻末附録な「あなたも流行作家になれる」だけれど、
読み物としてもなかなか面白いので、古本屋でみかけたら手に取ってみてください。

 

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ニュースレター読書会で読みたい本のリクエストを募集してます!

Bookstackの課題本について

みんなで一カ月かけて同じ本を読む オンライン読書会「ブックスタック」。

2025年の読書会の課題本がまだあまり決まってないので、
読者のみんなからリクエストを募ってみようかなと。

ニュースレター読書会bookstack

 

・この本積ん読してるので、誰かと読みたい

・難しそうなので、なにかしら読む動機がほしい

・この本面白いって評判なのでおすすめ!


   などのリクエストお待ちしてます。

 

小説、ビジネス本、ノンフィクション、漫画、詩集、など
どんなジャンルでもOKです。

 

ちなみに、来年 2025年1月は フランス文学の
ミシェル・ウェルベックの『ある島の可能性』を読む予定です。

 

2月は『美しい星 / 三島由紀夫

3月は 『族長の秋 / ガルシア=マルケス』(※文庫本が2月末に出るので!)

の三冊だけを予定しています。

 

まだ後半の予定が未定ですので、
みんなの積極的なリクエスト募集してます!

 

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どこからでも結構ですので、気軽にお便り頂ければなと。

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