【「ファントーム」 8年振りの最新作】
ついに発売。8年振り宇多田ヒカルの新アルバム『ファントーム』。
「ファントム」と読みたくなりますが、本当は「Fantôme」と点(アクサン)がついており「ファントーム」が正しい読み方です。
意味はフランス語で"幻"や"気配"を表すとのこと。亡くなった母である藤圭子さんを意識していることは言うまでもありません。
※(2018.6.26追記):新アルバム『初恋』が発売されました!
【全曲感想】
特に音楽に詳しいわけではありませんが、せっかくなので、
発売前に僕なりのアルバム全曲レビューを書いてみたいと思います。
Track1 : 道
サントリー天然水のCMソングにもなった「道」。
アルバムジャケットやアルバムタイトルからは想像できない明るく力強い曲調でアルバムは幕を開けます。
It's a lonely road
But I'm not alone
シンプルかつ前を向いた歌詞が印象的。宇多田ヒカル自身のバックコーラスも聴きどころ。
自殺した母、について歌われていますが、こういう持っていきかたをするとは思っていませんでした。
「道」一曲でこのアルバムがただ者ではないことを感じさせてくれます。
オープニングはこの曲以外あり得ないでしょう。
サントリー天然水のCMもあわせてご覧ください。
Track2 : 俺の彼女
ジャズの名盤『プリーズ・リクエスト』を思わせる、
オスカー・ピーターソン・トリオばりの分厚く大人なベースから、
「俺の彼女」は始まります。
4曲目の「二時間だけのバカンス」が椎名林檎とのコラボ曲となっておりますが、
この「俺の彼女」も椎名林檎の歌い方・サウンドを意識しているように感じました。
歌詞に合わせて男女の歌い方を変えているところや、フランス語の歌詞がかっこいいです。
3:34~から急にドラムやストリングスが強くなり、大きな展開をみせてくれます。
Track3 : 花束を君に
NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌にもなった、「花束を君に」(Hanataba Wo Kimini)。
休日によく行くカツ丼屋さんでしょっちゅう流れていたため、聞くと思わずカツ丼を思い出してしまうというエピソードが恥ずかしくて書けないほどの名曲。
亡くなった母の藤圭子さんに向けた一曲。
この曲については他の方がさんざん語られているのでこの辺りで。
後半のアレンジも見事です。
VRに対応した360°のメイキングビデオもぜひ。
Track4 : 二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎
椎名林檎とのコラボでPVと共に話題となった「二時間だけのバカンス」(Nijikan Dake no Vacance)。
歌詞も明るい曲調とは裏腹に不倫を歌った一曲。歌詞については下記の記事をどうぞ。
お伽話の続きなんてだれも聞きたくない
のフレーズから耳に飛び込んでくる椎名林檎のボーカルに思わず興奮してしまいます。
現在の邦楽界を代表する二人のコラボ、聞き逃せません。
椎名林檎はやっぱり『無罪モラトリアム』からが入るのがおすすめです。
Track5 : 人魚
優しく包み込むようなハープから始まる一曲。
「人魚」というタイトルやハープの音から、ゼルダの伝説の「妖精の泉」を思い出したのは僕だけじゃないはず。
歌詞からもそれとなく死のイメージがつきまといます。
それでも、夕日に照らされながら、海岸で聴いてみたい一曲です。
Track6 : ともだち with 小袋成彬
NHKのSONGSで観ていたのよりも強い電子ビートで始まる6曲目の「ともだち」(Tomodachi)。
以前の記事に書いたように、同性愛に触れた一曲というのはこの曲を聴く上で外すことができないポイントです。歌詞については以下の記事をどうぞ。
動画で見ていたよりテナーサックスが前に出てきており、
より大人な響きが強まっています。
初期の平井堅の曲に近いものを感じるので、ぜひ平井堅とのデュエットも聴いてみたいところ。
というかいっそのこと同性愛のテーマの意味や話題性も含め
バックコーラスを平井堅にすればよかったのではないでしょうか?(もちろんこの曲の男性のコーラスも素晴らしいです)
また、録音の良さが見て(聴いて)とれるのもこの曲ではないでしょうか。
開始10秒から裏拍で入るパーカッションや、2:23~辺りのカスタネット、そして全編にわたるアコギの音がとても生々しいです。
ローリングストーンズの「悪魔を憐れむ歌」に現れるような生々しいパーカッションフェチな僕に、この一曲はたまりません。
Track7 : 真夏の通り雨
日本テレビの「NEWS ZERO」テーマ曲にもなった「真夏の通り雨」(Manatsu no Tooriame)。
とりあえず、宇多田ヒカルのボーカルの表現力がすごいの一言。
微妙にエフェクトがかけられているピアノの音がさらに泣かせます。
単純に悲しいイメージを与えるだけでなく、3:34~の力強く鳴らされるビートやベースがシンプルなこの曲に深みを与えています。
Track8 : 荒野の狼
首輪つながれて生きるのはご免だね
満たされぬ心だけ与えられたのは何故?
という歌詞が印象的な一曲。
「車輪の下」で有名なドイツ作家ヘッセの『荒野のおおかみ』のタイトルから作られた曲だそうです。
宇多田ヒカル初期の洋楽っぽさを感じます。
とても聴きやすく、かつアルバムの雰囲気を壊していないところが◎。
Track9 : 忘却 featuring KOHH
ピンクフロイドの「狂気」のように、力強い心臓の鼓動から「忘却」は始まります。
好きな人はいないもう
天国か地獄
記憶なんてゴミ箱へ捨てる
ガソリンかけて燃やしちゃえ
生きてんのは死ぬ為
そんで産まれてくる それだけ
お墓ん中へ 行ければ幸せ
KOHHのラップから歌が進むのですが、上にあるように本当に歌詞が重い。
繰り返し聞くのは辛いものがあります。
昔の宇多田ヒカルには作れなかったような新境地かつ異端な一曲。
※追記(1/19):『忘却』の公式PVが公開されました。
DJ KOHHさんかっこよすぎます。
Track10 : 人生最高の日
9曲目の「忘却 featuring KOHH」とは打って変わって
明るい曲調の一曲思わぬ展開に驚かされます。メロディーも素晴らしい。
歌詞にある通り、
シェイクスピアだって驚きの展開
That's life
ということでしょうか。ヘルマン・ヘッセもびっくりです。
ここから次の曲「桜流し」に続くのですが、この「人生最高の日」がなければ
「重たいアルバムだったな」という印象で終わってしまったかもしれません。
曲順が本当によく練られたアルバムだと改めて思いました。
Track11 : 桜流し
「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のテーマソングとして話題になった「桜流し」(Sakura Nagashi)。
エヴァについてはほとんど知らないのですが、24時間限定で公開されたミュージックビデオも素晴らしい出来でした。
以前コラボした「Beautiful World」の組み合わせもこれ以上ないというほどのハマりっぷり。
Everybody finds love in the end
アルバムのラストを飾る「桜流し」には感涙せざるを得ません。
音質について
SHM-CDにどれほどの意味があるのかはさておき、
最近流行りの音圧を無理に上げて華やかにした録音ではなく、しっかり音一つひとつの分離に気を配ったマスタリングになっているかと思います。
音作りはそれほど似ていない気がします。
噂には聞いていましたが、「プレイパス」は実際初めて見ました。書籍にも同様のサービスが出てきているので、少しづつ浸透してくるのではないでしょうか。
【Hikaru Utadaのニューアルバム】
いかがだったでしょうか?
アルバムの感想はもう少し後に書こうと思ったのですが、フラゲしたことやアルバムの出来が良すぎる勢いでここまで3000字以上書いてしまいました。
Twitterで評判・評価をみていますが、発売前から賞賛の声で盛り上がっています。
売上も景気の良い数字が出るといいですね。
8年振りのニューアルバム『ファントーム』、絶品の出来です。
本日9/28発売。ぜひご一聴を。
※追記(2017.12.10):なんと宇多田ヒカルが2018年にライブツアーを行うとのこと。
生でコンサートを観てみたいですね・・・。
※追記(2018.1.10):宇多田ヒカルのオリジナルアルバム全て、APPLE MUSCIやGoogle Play Music、Spotifyなどの月額制ストリーミング配信サービスで配信されました。
聴き放題の衝撃です・・。
Mr.Childrenやイエモンの最新シングルの全曲レビューの記事もどうぞ。
iPhoneやスマホで使える話題のVRヘッドセットもぜひ。
ポッドキャストはじめました。洋楽についても熱く語ってます
「こいつどんな声しとんねん!」と思った方はぜひ聴いてみてください。
iPhone/iTunesで聴く→https://itunes.apple.com/jp/podcast/世界のねじを巻くラジオ-ゲイのねじまきラジオ/id1409236261?l=en
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