世界のねじを巻くブログ

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「十二月の十日 / ジョージ・ソーンダーズ」の短編小説を12月10日に読んだ感想

George Saundersの短篇

アメリカの小説家ジョージ・ソーンダースの短篇小説集『十二月の十日』(岸本佐知子訳)に収められている表題作を読んだ感想を書いてみようかなと。

(※この記事は 読書感想文 Advent Calendar 2025 10日目のブログ記事となります)

せっかくなので、12月10日の当日に読んでみたいな、とふと思ったので、
ようやく当日に読んだ感想つらつらと。

 

「十二月の十日 / ジョージ・ソーンダーズ」の短編小説を12/10に読んだ感想

 

「十二月の十日」は短編集の最後に収録されている作品。

あらすじを一言で書いておくと、

英雄になった空想にふける孤独な少年と、自殺を願う癌の患者が同じ森を散歩していたが・・・。

という感じ。

 

ここから先はネタバレありなので、未読の方はご注意を。

感想・レビュー

読みながら思った感想を引用交えてちょこちょこ書いていきます。

 

・はじめ、少年の妄想が続くので、いまいちストーリーがつかめなかった。

地底人をやっつけるごっこを一人でしながら歩いていると、
極寒の中、はげた男がコートを脱いでいるのを見かける少年。

 

ぼくは誰かを助けるんだ。たぶん、今度こそ、本当に。

 

でも昔の英雄たちだって、若いころみんなこういう恐怖に直面したんじゃないだろうか? この恐怖を克服することこそ、真の勇気の証なんじゃないだろうか?

 

湖の上を歩きだす、禿げた男。

そのまま湖に入って自殺しようとしたところを、
男の子が助けてくれる。

 

そして、男性が目を覚まし、

子供が自分を助けてくれたせいで、
水にびしょびしょになりながら氷の上に横たわっている。

この子のふるえに比べれば、自分のふるえなど無に等しかった。
手持ち削岩機で掘削しているみたいだった。
体を温めないと。どうやって? 体を抱く、それとも上に覆いかぶさる?
だがそれじゃアイスキャンディにアイスキャンディを重ねるみたいなものだ。

 

目を覚まして家に一目散に帰る少年、
ただ、少年も男性を残して家に帰ってしまったことを後悔し、恥じる。

それで・・・。

 

最後に再び希死念慮が、彼を襲う。

大変だ。
おれは大変なことを。
おれは自殺しようとしている。自殺しようとしている、知らない子供まで巻きこんで。冷えきった体で森に消えていった、あの子。クリスマスまであと二週間という日に、おれは自殺しようとしている。モリーが一年でいちばん好きなクリスマス。
モリーは心臓が弱い、パニック症の気もある、もしもこんなことが―

 

これから先にはきっといろんなつらいことがある。
それでもおれは望むのか? それでもまだ生きたいか?
ああそうとも、生きたい、おれは生きたい。
神様、どうかおれを生きさせてください。

なぜならおれにはわかったんだ、今やっとわかった、少しずつわかりかけてる ――――もしも誰かが最後の最後に壊れてしまって、ひどいことを言ったりやったり、 他人の世話に、それもすごいレベルで世話にならなきゃならなくなったとして、それで彼は思い出した。あの茶色の染みがあいかわらず自分の頭の中にあることを。 これから先にはきっといろんなつらいことがある。 それでもおれは望むのか? それでもまだ生きたいか? ああそうとも、生きたい、おれは生きたい。神様、どうかおれを生きさせてください。

なぜならおれにはわかったんだ、今やっとわかった、少しずつわかりかけてる──もしも誰かが最後の最後に壊れてしまって、ひどいことを言ったりやったり、他人の世話に、それもすごいレベルで世話にならなきゃならなくなったとして、それがなんだ? なんぼのものだ? 奇妙なことを言ったり、やったり、不気味で醜い姿になることの、なにが悪い? 糞が脚をつたって流れて、なにが悪い? 家族に抱きかかえられ、向きを変えられ、食べさせてもらい、下の世話をしてもらうことのなにが悪い、逆だったらおれは喜んで同じことをするのに?

 

それでもおれにはわかったんだ、そこには同時にたくさんの──たくさんの良いことのしずく、そうおれには思えた──何滴もの幸せな、良い絆のしずくがきっとこの先にはあって、そしてその絆のしずくは──今までも、これからも──おれが勝手に距離できるものじゃないんだ。

 

よく聞くんだ、エバーはかすれ声で言った。きみはすばらしかった。パーフェクトだった。おじさんはちゃんと生きてる。誰のおかげだと思う? ほら。おれにもできることがあるじゃないか。この子を元気にしてやれたじゃないか? おれが言った一言で? だからだよ。だから生きる意味がある。そうじゃないか? 生きてなかったら、誰のことも勇気づけられないじゃないか? 死んじまったら、なに一つできないじゃないか?

 

短くて恐ろしいフィルの時代』や『リンカーンとさまよえる霊魂たち

けっこう皮肉や政治批判みたいなのを込めたブラックコメディー的な物語が多い印象があったけれど、この最後の話に関しては、わりとストレートな「泣ける話」だった。

十二月の十日』の短編集の中ではわりとシンプルな設定なのも印象的。

なぜ12月10日というタイトルなんだろう?と思ったら、
「クリスマスまであと2週間なのに、こんな悲惨な状況の男性」
というのを強調する舞台設定なんだろうなと思った。

 

映画『素晴らしき哉、人生!』でも、クリスマスイブの日に、男が絶望している話だったのをふと思い出したけど、
聖夜を前にして絶望する男が希望を見出す、みたいな話はアメリカの定番なのかもしれないな~と読みながら思った12月10日だった。

 

ちなみに、原文(English)はニューヨーカーで無料で読めたりするので
英語いける方はこちらでもどうぞ。

But wasn’t this feeling of fear the exact feeling all heroes had to confront early in life? Wasn’t overcoming this feeling of fear what truly distinguished the brave?

 

「Talks At Google」のYoutube / Podcastにて、
ジョージソーンダース自身がこの本について語る講演も上がっていたので、
聴き終えたら備忘録がてらまたブログ書こうかなと。

 

BookStack』にて、『十二月の十日』ニュースレター読書会を開催中です。

一か月かけてみんなで同じ本を読む試み、
まだまだ間に合う(僕も読んでる途中)なので気軽に参加してみてください。

Netflixで映像化もされた「スパイダーヘッドからの逃走」が良すぎたので、
またニュースレターで語るつもり。

明日、第一回目のメールを配信予定です。

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