世界のねじを巻くブログ

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『ホビットの冒険』(岩波版)を読んだ感想

指輪物語の前日譚

ホビットの冒険(新版:瀬田貞二訳) がキンドルの電子書籍で発売されたので、
ドラマ版『力の指輪』予習のために読んでみました。

子供の頃にリアルタイムで映画版『ロードオブザリング』をみて
原作の『指輪物語』に挑むも挫折。

今回ドラマ版にあわせて『ホビットの冒険』から読み直してみよう
とあわててトールキン原作の世界に飛び込んでみたという流れ。

レビュー・印象に残った部分

ざっくりと感想を書いてみようかと。

 

「一まことに残念ですが──」とビルボがいいました。「 帽子 をかぶってきませんし、ハンケチも 忘れました。お金も持ってこないのです。

 冒険に誘われ、最後まで家に帰ろうとするビルボの有名なハンケチの台詞

 

 

それは、月の光が 裏 から照りつける時にだけ、読めるのです。そればかりではない、まことに手のこんだくふうがしてあって、その文字を書いた時と同じ形の月、同じ季節の月がささなければ、だめなのだね。

いかにもドラクエ風というか、RPG的な設定。いいよねこういうの。

 

エルフたちは、剣をオルクリスト、つまりゴブリン 退治 とよんでいましたが、ゴブリンたちはこれをただ、「かみつき丸」とよびました。そしてこの剣をにくみ、この剣を持った者をにくみました。

もちろんファンタジーということで、伝説の剣もでてきます。

 

ガンダルフがこの時代も大活躍。
魔法というよりかは、打撃でガンガンいこうぜ、なところも意外でした。

 

コロコロ、コロコロ、ころげたる。 ころげてコロンと 穴 の中。

ところどころ挿入される歌や詩も、
ユーモアまじりだったり、神話的だったり。

樽にのって飛び降りるところなど、シンプソンズかよ!と思うぐらい
コミカルだったり。

この辺、ちょっとエルフ族が嫌いになります。笑

 

それで、スマウグのいかりは、たとえようもありませんでした。使いきれないほどお金を持っている人たちが、ろくに使いもせず、ほしくもないくせに、長いこと持っていた品物を、ある時ふいになくしてしまった時にむちゃくちゃにおこりますね。あんなおこり方でした。

シリアスな場面もユーモアを忘れないトールキン。

 

すべての者に、おそろしいことがおこったぞ! やんぬるかな! わしの思っておった時より早く来たわい。

ガンダルフの古めかしい話し方ひとつとっても良い。

 

ビルボにしてみれば、あれほど待ちのぞんだ 家路 につくわけですが、今はビヨルンの庭の花々が、夏のさかりにおとらないすばらしさで 咲きほこっていて、ビルボは旅立つのに心残りなほどでした。

ジブリと同じく、自然の描写や食事シーンは抜群によい。

 

最後の闘いもアツいのなんの。
頭の中でロードオブザリングさながらあの戦いの様子が流れます。

 

全体的に和訳の言い回しがケストナーの児童文学に似ている気がするんですが、
英語を児童書風に訳するときはこういう訳し方になるんでしょうか?

英語の原文はどうなっているかわからないですが、
独特のユーモアとおとぎ話的な文体がファンタジーの世界にぴったりで。

児童書だからか、新訳なおかげか、
指輪物語のような読みにくさはなかったかな。

 

 

訳者・瀬田貞二さんのあとがきも興味深い。

もっともおもしろいのは、この世を第一の世界、ファンタジーの 舞台 を第二の世界として、その深いつながりを説いたところで、第二世界というのは、 宮沢賢治 のいわゆる 心象 世界 にあたるといえましょう。

そして画家の 寺島竜一さんの挿絵も。

 

ビルボとゴラムのなぞなぞの場面や指輪を"拾って"しまうシーンはやっぱり興奮。

エルフとドワーフの仲が悪い理由や、昔の英雄の話、
ドワーフのあの広間など、指輪物語にもばっちり話が繋がります。

 

また、ドラゴンはほんとに強欲で悪いやつ な感じなのが
意外というか。

日本だと"宝を守るかっこよくて強いヤツ的"なイメージが強いですが、

もともと北欧神話・ジークフリート伝説などから来たモンスターなので、
当然といえばそうなんですけども。

 

また森=危険という設定はいかにもヨーロッパらしいというか。

日本だと森や自然は「神のいるところ・畏敬」というイメージがあるので、
恐れる対象物としても、日本とは描かれ方はちょっと違うように感じました。

 

ドラゴンあり、エルフあり、お城や森、魔法や剣ありーのな、
王道ファンタジー。

 

子供向けの児童文学といえども、
濃密なファンタジー設定や、ユーモアあふれる言い回し、
ピンチが何度も来る感じ、
人情の温かさなど、
大人でも十二分に楽しめる一冊。

 

"指輪をはめると誘惑にかられる、または サウロンにみつかる"

・・・などの指輪をはめるデメリット的な設定
指輪物語からの後付け設定なのかな?と疑問に思ったり。

(詳しい方にまた聞いてみようかなと)

 

Kindle版は上下一冊にまとめられてます。
現在なら半額分ポイントが付与されるのでお得に読めます。

 

映画版『ホビット』シリーズ、中途半端にしかみてないのでもう一度見返そうかと。

 

昔、図書館で『ホビットの冒険』の絵物語(コミック版)を読んだ記憶があるのですが、
あれもかなり忠実に再現してたんだな・・・といまさらながらふと思い出したり。
(蜘蛛に木からぶらさげられるシーンで読んだのをはっきりと思い出しました)

 

読み終わったあと図書館で借りた

The Atlas of Middle-Earth 「中つ国」歴史地図 ― トールキン世界のすべて』の地図をみながら、想像をふくらませて読んでました。

子供の頃にかえったようなワクワク感を思い出したり。

ファンタジーっていいよね、とひさびさに思う一冊でした。

 

力の指輪 の予習にも

アマゾンプライムのドラマ『力の指輪』に
おそらく登場するであろう、

エルロンド、ゴンドリン、上のエルフ、オーク、
ドゥリン、モリア、ガンダルフ、死人占い師、指輪 
・・・などなど、
指輪物語やホビットの冒険より古い時代に言及した部分もあり、
なんだかんだ重要な位置を占めるホビットの冒険。

 

トールキンいわく、
はじめはホビットの冒険だけ書くつもりが、
言語学的な関心、つまり エルフの言語に「歴史」的背景を与えるために
『指輪物語』を描きはじめた
と書いていて (王の帰還 著者ことわりがき を参照)

それもまたとんでもない話だな、と思いながら指輪物語の世界の広さに震えてます。

 

ドラマ版『力の指輪』をより楽しむためにホビットの冒険も読んで損はないかと。

 

「空飛ぶ海外コメディ」のブログで、
力の指輪について色々まとめていこうと思うので、
ロードオブザリング好きなかたはぜひ。

www.flyingcomedy.com

 

※追記(2022.9.3)ついに公開。さっそく観た感想をざっくり書いてみました。

www.flyingcomedy.com