レビュー:ブログ記事の参考に
今回紹介するのは、明治から昭和時代に活躍した、物理学者であり随筆家でもある寺田寅彦の随筆集「柿の種」です。
本の概要は下記をご覧下さい。
日常の中の不思議を研究した物理学者で随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という願いのこめられた、味わいの深い一七六篇。 (Amazon「BOOK」データベースより)
明治・昭和時代の随筆集
さて、さっそく内容・感想に触れていきたいと思います。
まず冒頭でこんな記述が。
元来が、ほとんど同人雑誌のような俳句雑誌のために、きわめて気楽に気ままに書き流したものである。 Read more at location 11(Kindle内でのページ数)
しかし、これだけ集めてみて、そうしてそれを、そういう一つの全体として客観して見ると、その間に一人の人間を通して見た現代世相の推移の反映のようなものも見られるようである。そういう意味で読んでもらえるものならば、これを上梓するのも全く無用ではあるまいと思った次第である。 Read more at location 16
雑記ブログを書いている人は、心を支えられる文章だと思います。
ブログ記事は、一人の人間というフィルターを通して出てきたものであるからこそ、意味があるのではないでしょうか。
僕自身も単に情報が書かれているだけの記事よりも、
個人の意見が少しでも込められた記事に惹かれます。
してみると、銀座というものの「内容」は、つまりただ商品と往来の人とだけであって、ほかには何もなかったということになる。Read more at location 429
何気ない文章ですが、鋭い洞察が込められていると思います。
この文章が書かれた大正・昭和の時代でも、すでに東京はこんな見方をされていたんだなぁと。
鳥の先祖の時代にはガラスというものはこの世界になかった。ガラス戸というものができてから今日までの年月は鳥に「ガラス教育」を施すにはあまりに短かった。Read more at location 1687
あくまで随筆集という形なので、こういったユーモアも頻繁に現れます。
「庭の植え込みの中などで、しゃがんで草をむしっていると、不思議な性的の衝動を感じることがある」Read more at location 98
なんてユニークな文章も。いかにも雑記ブログらしい文章です。
はてなダイアリー等でもウケそうな内容かと。
ふと妙な事を考えることがある。 この広い日本の、この広い東京の、この片すみの、きまった位置に、自分の家という、ちゃんときまった住み家があり、そこには、自分と特別な関係にある人々が住んでいて、そこへ、今自分は、さも当然のことらしく帰って来るのである。 しかし、これはなんという偶然なことであろう。Read more at location 683
自分も似たようなことを考えたことがあります。
ブログでいえば、"オピニオン記事"として一本書けそうな考え方。
昔も今も、考えることは一緒なのかもしれません。
そして文章はこう締めくくられます。
そんな事を考えながら、門をくぐって内へはいると、もうわが家の存在の必然性に関する疑いは消滅するのである。Read more at location 690
なんか人間味が出ていて、ホッとしますよね。
AI(人工知能)が小説を書き始めたそうですが、こういう「人臭さ」の地点に辿り着くまではまだまだ時間がかかるのではないでしょうか?
ブロガーの方にも
読書の秋、ゆったりとした余裕のある時間に、さくっと一節読んでみてはいかがでしょうか。
「人間らしく書く」とはどういうことかを教えてくれる一冊でした。
Kindle端末やスマホ・iPhoneで無料で読めるので、ぜひどうぞ。
- 作者: 寺田寅彦
- 発売日: 2012/09/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 出版社/メーカー: 亀田製菓
- 発売日: 2016/01/20
- メディア: 食品&飲料
- この商品を含むブログを見る