世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/電子書籍/Lifehack/Podcastなどについてお伝えします。ポッドキャスト「ねじまきラジオ」配信中。

2019年に心揺さぶられたKindleの電子書籍10選

キンドルおすすめ本

令和元年に読んだおすすめのKindle本をまとめてみました。
毎年恒例のブログ記事、読書好きの方はぜひ読んでみてください。

Kindle本を買い漁る人だけにわかる"電子書籍あるある" - 世界のねじを巻くブログ

まずはこの食に関する本から。

最後の晩餐 - 開高健

最後の晩餐 (文春文庫)

最後の晩餐 (文春文庫)

  • 作者:開高 健
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: Kindle版

 「食」をテーマに歴史、文学、政治まで駆けまわる一冊。

開高健の経験による洞察で、改めて食欲というものの奥深さを思い知ることができる一冊。

一番印象に残ったのは、アンデス山で起こった「人食」について触れた部分。

P・P・リードの『生存者』より多くの引用がなされ、
開高建による解説が書かれています。

死体が肉になるかならないかは最初の一片を呑みこむか呑みこまないかにかかっていたようである。
位置 5167 『最後の晩餐』より  原文は(P・P・リード著・永井淳訳『生存者』平凡社)

 

味は強烈でしょっぱかった。あるものはそれを骨に巻いて、火で焼いてみた。腐った肉はあとで食べてみるとチーズに似た味がした〟

位置 5176 『最後の晩餐』より  原文は(P・P・リード著・永井淳訳『生存者』平凡社) 

 谷崎潤一郎の名作『美食俱楽部』にも言及。

食べるのがそんなに好きではない、という人にこそ読んでほしい一冊

 

しぶちん - 山崎豊子

しぶちん(新潮文庫)

しぶちん(新潮文庫)

  • 作者:山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/05/30
  • メディア: Kindle版

 『白い巨塔』『沈まぬ太陽』などの長編小説でが有名な山崎豊子さん。
今回はじめて短編小説を読んでみました。

初期作品なんだけど質の高さはピカイチ。

おすすめは冒頭の「船場」。
大阪の船場狂いのおばさんを書いた一作
狂気を感じますが、ほんとにこんな人いそうだと思わせる筆力。

「若旦那 はん、やっと、しっかりして来はりましたか、体がようなりはったら、真っ先に、あの船場の焼跡へ、もと通りの店建てまひょな」

位置: 409 『しぶちん』

短篇でもしっかり取材もしてなきゃ書けないのだろうな、
というのが文飾からしっかり伝わってきます。

『遺留品』ではミステリーも書かれてます。
 え?という笑えるオチもまたいいのよね。 

 

新訳 マクベス - シェイクスピア

新訳 マクベス (角川文庫)

新訳 マクベス (角川文庫)

シェイクスピアの作品のなかで、
短くて濃い作品を読みたいならマクベスかハムレットが一番いいかもしれません。
ベニスの商人もありかも。

マクベス、黒澤明が映画化するほど有名な一作

妻の有名な台詞とか、ラストの畳み掛けとか、今読んでも超面白い。
とりあえず"舞台を前提とした作品"ということを頭に入れて読んでみてください。

「女の股から生まれたものには負けない」

などの魔女の予言もこの物語のキモだったり。
スコットランドに行ってから、さらにシェイクスピア欲が高まってます。

→スコットランド旅行写真まとめ【エディンバラ・グラスゴー】

来年は『リア王』を読もうかな,と。

 

植物はなぜ薬をつくるのか - 斉藤和季
植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)

植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)

  • 作者:斉藤和季
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: Kindle版

植物から生まれる"薬"に焦点を当てた一冊。

漢方からアヘン、カフェイン、アスピリンまで幅広く解説してくれます。。

化学式のモデルがでてきたり、かなり専門的な場面も出てきますが、
非常にわかりやすい一冊。

このように、地球上の植物種の数が 22 万~ 26 万種あるなかで、それぞれの植物が作る化学成分の生物活性が一部でも調べられている植物種は、全体の 10%に過ぎません。

位置;1229 『植物はなぜ薬をつくるのか』

ほんとにあらゆる面で植物に支えられてるんだな、と痛感。
これからの植物へのポテンシャルにも期待。 

 

万延元年のフットボール - 大江健三郎

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

  • 作者:大江健三郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/29
  • メディア: Kindle版

大江健三郎の代表作。実は一度学生の頃読もうと挫折し、
令和元年に再挑戦。タイトルにかけたお陰か、無事読破出来ました。

ジンや村人の朝鮮人に対する無駄な敵対心やら。
一揆にフットボールの若者を追従させる鷹の行動など人間心理の描き方がすごい。
狭いムラの話なのにここまで重厚にかけるのはもうね。

そしてすべての暴徒は声を揃えてとくに僕を非難した。  
──おまえは、ネズミそっくりだ!
位置: 2206

大江健三郎さん特有の嗅覚やの描写がさすが。

ラスト怒涛の展開、伏線の回収が見事というか読めないわこれは。
読後の達成感が半端なかったです。

 

 のちにレビューを書くかもしれません。

 

坂口安吾『日本文化私観』

日本文化私観

日本文化私観

  • 作者:坂口 安吾
  • 発売日: 2012/09/13
  • メディア: Kindle版
 

 極論すぎる気もしますが、核心をついた批評。

日本の美意識を解体していきます。
当時どういう受け取られ方をしたのか気になります。
いわゆる"炎上系ブロガー"みたいな感じでしょうか。

古いもの、退屈なものは、亡びるか、生れ変るのが当然だ。
位置: 364 『日本文化私観』より

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と比較して読みたい一冊。

 

日の名残り / カズオ・イシグロ

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 ノーベル文学賞受賞のカズオイシグロ代表作。

執事という生き方をする意味を、主人公の生涯から絞り出すような一作。

日系イギリス人というバックグラウンドを持ったカズオイシグロさん
しかかけなかった作品かと。

直接は言及されてませんが、
武士とイギリス人執事の共通点をうまく物語に乗せたという試みは流石。

「信頼できない語り手」という手法、
そういうことだったのか、とその巧みさに驚かされるばかりでした。

30年後ぐらいに再読して、
どう感想が変化するのかが楽しみだったり。

わたしを離さないで』以上のものは期待してませんでしたが、
ツートップにおすすめ出来るほどの超名作。

日本語で読みましたが、
英語で読むとさらに品格を感じさせる文章になってるそう。

ファラディ様はアメリカの方で、なさり方がいろいろと違います。
意地悪のつもりなど毛頭なかったことは、私がよく存じております。
が、それにしても、私にとってどれほど居心地の悪い一瞬だったか、ご想像いただけるでしょうか。

位置:243 『日の名残り』より

アメリカ文化に主人公がとまどうシーンも笑えます。

 名作なんだけど、どうしてもカズオイシグロさんの本は
クセが強いので人に勧めにくいのが弱点だったり。
わりと本好きの人でも、「どれもダメだった」という人を何人も見てます。

あと、カズオイシグロさん絶対に性格悪いでしょ、と思ったのは僕だけでしょうか・・・

読んだ後の余韻が消えない、不思議な魅力をもつ一作。

 

絶対に失敗しない料理のコツ おいしさの科学 - 松本仲子

絶対に失敗しない料理のコツ おいしさの科学 (幻冬舎単行本)

絶対に失敗しない料理のコツ おいしさの科学 (幻冬舎単行本)

  • 作者:松本仲子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/05/24
  • メディア: Kindle版

世界一周旅行中に料理をする際、ずっと参考にしてた料理本。
料理の基礎を科学的な側面からレクチャーしてくれます。

例えば、

酵素が働く温度は 60 ~ 80 ℃で、
この温度をキープしている間は酵素が作用しているのでうまみがよく出る

とかそんなことをやさしく解説してくれます。

いまさら人に聞けない細かいネタがのっていてよかったです。
これでその辺にいる人よりもうまくステーキが焼けるようになった気がします。
(海外の安いお肉で毎晩練習したので・・・笑)

とりあえず言えるのは、
料理の細かい手順ひとつにも、
それなりの理由があるので省略しないできちんと調理しましょう、ということ。

世界一周した感謝のきもちも込めて、
今後いろんな国の料理をつくろうと思ってます。

 

夜間飛行 / サン・テグジュペリ

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

 メルボルン行きの飛行機の中で深夜読了。
当時の気持ちも相まって、思わず涙。思ってたよりよかった。

有名な『星の王子さま』があんまり好きじゃないので、
サンテグジュペリの作品はほとんど読んでなかったのですが、これは一気読み。

技巧的には映画『ダンケルク』的な時間の扱いの巧さを文章の中に見た気がします。
緊迫感の扱い方がほんとすごい。

作者自身が飛行機乗りということもあって、
とにかく描写が生々しい。

風景を描く一文でもなにか生きているような感覚を覚えます。
おそらくこういう風景を毎日のように見てきたのだなという説得力がこの本にはあります。

宵闇が近づいている。船を迎える港の 水面 と、おなじ気配が空にはあった。
位置:24 『夜間飛行』より

ブエノスアイレスの 街の魅力もビシビシ伝わってきます。

 

How to Design いちばん面白いデザインの教科書 改訂版 / カイシトモヤ

How to Design いちばん面白いデザインの教科書 改訂版

How to Design いちばん面白いデザインの教科書 改訂版

  • 作者:カイシ トモヤ
  • 出版社/メーカー: エムディエヌコーポレーション(MdN)
  • 発売日: 2017/03/22
  • メディア: Kindle版

 Kindle Unlimitedの読み放題対象本なので、
30分ぐらいで読み飛ばそうかな、と何気なくダウンロードしたデザイン本。
意外と専門的で、図が多くて勉強になりました。

・伝達力の高いアイコンを作るには、’’多くの人と共感できるような、類似性の発見と強調’’が必要
・CMYの3色を混ぜても、完全な黒にはならない。なのでKで補う
・デッドスペースをなくすには、風通しを考える

 

・・・など参考になる具体的なアドバイスがたくさんあって参考になりました。

 デザイナーではない初心者でも気軽に読めるので、
入門にもおすすめです。

これを読んでからブログのアイコン案をいくつか作りましたが、
読んだ成果が出た気がします。

 

電子書籍で読めます

紹介した本にはKindle Unlimited読み放題対象の本もいくつかあるので、
ぜひチェックしてみてください。

ほかにも「この本良かったよ!」というおすすめのキンドル本がある方は、
気軽にコメント頂ければ幸いです。

今週のお題「2019年買ってよかったもの」

 

厳選ニュースやおすすめの音楽・本を紹介するニュースレターを月1回配信してます。
購読(無料)はこちらより。捨てアドでもいいので登録してみてください!