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メタファー(笑)が分からなくても楽しめる村上春樹の短編小説5選

【初めての方におすすめの作品】

ひさびさの短編小説集『一人称単数』を発売する村上春樹さん。

けっこうどれもひと癖あるので、
心理学や、文学、音楽などいろんな知識がないと楽しめない面もあります。

 

また、村上春樹の作品は
過去作とリンクしているような小説も少なくないので、
初心者の方にはおすすめできないものがあるのも正直なところ。

 

今回は 
「メタファーって何?」
とハルキワールドがわからない読者に向けて、
おすすめの短編小説を5つほど紹介したいと思います。

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【短篇ベスト5】

単純にストーリーで楽しめる短編小説を、
ベストオブハルキ的な短編集である

『象の消滅』と『めくらやなぎと眠る女』より
5つほど紹介します。

 

まずは短編小説のなかでも特に短いこの作品から。

最近、ホラーブームが再燃しているような気がします。

この「鏡」という短編は7ページほどの超短編なのですが、
ハルキ的な”怪談”として読めたりします。

 

あらすじは
「主人公が職員室の夜の見回りでの奇妙な思い出を語る」
というお話。

深読みするもよし、
怖い話として読むのもあり。 

鏡を見ないで髭が剃れるようになるには結構時間がかかるんだぜ、
本当の話。 『めくらやなぎと眠る女』 P96より

と締めるのはなんともムラカミっぽい終わり方ですね。 

 

沈黙

村上春樹の作品の中でもかなり男臭い部類に入る、
ボクシングに関するストーリー

 

 

 

男勝りな文体で有名なヘミングウェイも、ボクシングをやっていたことで有名であり、
あのコナン・ドイルもボクシング小説を書いていたので、
 アメリカ小説の影響を受け、この短編を書いたのだと思います。 

 

人を殴ったことがあるか?」という主人公のの問いから
この物語は始まります。


人間的に信用できない一人の生徒との確執を描いた作品。

"大沢さん"のことばが珍しく強めにかかれており、
村上春樹さんも力を込めて書いているように思います。

 

ラストの大沢さんの長いセリフは、
今のSNS社会にも響くものがあり、必読かと。

 

・学生の頃いじめられた経験のある方、
・どうしても許せない奴がいる方

に読んでもらいたい一篇です。

かなり異色の作品かと。

 

四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

英語の教科書にも載るほど有名な作品。
有名どころかつ短いので選んでみました。

 

あらすじとしては、

主人公の「僕」には、
50メートルも先からも、
彼女が100パーセントの女の子であることがちゃんとわかっていた。

それにもかかわらず、声をかけずに見送ってしまったという話。

まあそれだけといえばそれだけなんですが、
不思議な世界観のせいか、余韻を感じさせます。

 
解釈は人それぞれだと思いますが、

タイミングを逃すと、
運命は大きく変わってしまうぜ的な話でしょうか。

 

学生時代のうちに読んでおきたい一篇かも。 
今回紹介する中では、
"世間が想像するハルキ像"に最も近い話だと思います。

 

この短編が気に入った方は、
「窓」という作品も気に入るはず。

 

 

中国行きのスロウ・ボート

 学生時代に出会った三人の中国人に関する思い出を中心に
ストーリーが進んでいきます。

”友よ、中国はあまりに遠い。”

という締めくくりは、
今の時代の日中関係にも
当てはまることなのではないでしょうか。


「午後の芝生」や「パン屋再襲撃」と並ぶ、
初期の短編を代表する作品です。

  

 

偶然の旅人

最後に、ゲイとしては外せないお気に入りの作品。

ピアノの調律師であるゲイ男性の主人公の生活を描いた話。
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 ジャズやLGBTに関心のある方にぜひ読んでほしい作品。

最後は江國 香織さんの作品的な終わり方をします。

 

【一人称単数もぜひ】

村上春樹さんは知名度が高すぎて、
いわゆる"読書家"からは不評な作家さんだったりしますが、
 

良くも悪くも世界中の評価を受けている方。
あえて避けるのはどうなのかな、と個人的には思います。

 

新作の短編小説集『一人称単数』には、
「品川猿は語る」という
おそらく短編「品川猿」と関連しているであろう
小説が収録されるということで、楽しみにしてます。

気になった方は、
初期短編集の『象の消滅』から読んでみては。

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2005/03/31
  • メディア: 単行本