【画家の男が主人公】
ついに村上春樹の最新作『騎士団長殺し(英題:Killing Commendatore)』が発売されました。
近くに深夜から発売しているところを見つけたので早速購入し、はじめの5章分ほど(約100ページ程度)を読んでみたので軽く紹介したいと思います。
極力余計なネタバレをしないように書いていますが、
今回ストーリーについては一切語られず発売されたため、どんな情報もネタばれとなってしまいます。
本を真っさらの状態で読みたいという方はこの先を読まないことをおすすめします。
『騎士団長殺し』って何?という方は下記の記事をどうぞ。
【あらすじ・ストーリー】
裏表紙に書かれているあらすじは下記のとおり。
その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた・・・・・それは孤独で静謐な日々であるはずだった。 騎士団長が顕れるまでは。 『騎士団長殺し』背表紙より
これだけストーリーをつかむのは難しいですが、「何が起きるんだろう」と期待させてくれるあらすじですね。
【表紙・背表紙・裏表紙】
単行本のデザインはこんな感じ。
「第1部 顕(あらわ)れるイデア編」「第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」ともに剣が描かれたシンプルな表紙です。フォントも少し凝っていて良いですね。
背表紙
裏表紙
さっぱりとしたデザインです。緑・赤の色は何か意味が含まれているんでしょうか。
【レビュー・感想】
あくまで100ページほど読んだ時点での感想を書きたいと思います。
プロローグはダークな雰囲気で始まり、物語のスケールを感じさせてくれます。
「顔のない男」といういかにも村上ワールドな登場人物も現れたりなんかも。
今回のストーリーは画家の男が主人公。妻と離婚していろんな場所を移動したりで話が進んでいきます。「孤独な中年の男が主人公」という点は往年の村上春樹の作品でもよく見られるパターンだと思います。
画家が主人公ということで、雨田具彦という画家が書いた「騎士団長殺し」という題の絵がタイトルにもあるように、この本の大きなキーとなるでしょう。
雨田具彦という画家の名前が何度も出てくるので実際にいるのかと思って調べてみましたが、グーグルに全くヒットせず、あくまで物語上の人物だと思われます。
また、かなり序盤の方からセックスについて一部描かれる場面があり、性描写が苦手な方はちょっと抵抗感を示してしまうかもしれません。
(まあ性描写は村上春樹に限ったことではないのであまりとやかく言うのはどうかと思いますが。)
他の点に触れるとすれば、いつもの村上春樹の作品のように
ベートーヴェンやシューベルト等のクラシック音楽をはじめ、ローリング・ストーンズの「無情の世界(You Can't Always Get What You Want)」やらシェリル・クロウなど様々な音楽が登場します。
お得意のジャズが(100P読んだ時点では)まだ登場していない以外は、いつも通りと言えるでしょう。
やはり以前の記事でも触れたように、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』がストーリーに大きく関係しているようです。
「遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える」の章タイトルは「1073年のピンボール」を思い起こさせますし、他にも時折、「アンダーグラウンド」など昔の作品のエッセンスが感じられる部分があります。
【初めて読むという方にもおすすめ】
まだ5章ほどしか読んでいませんが、大きな「旋回」を期待させてくれるストーリーです。「おしゃれ感」は今回抑え目な気がするので、他の作品のような主人公のキザな言動が鼻につく、ということも少ないかと思われます。
冒頭だけでも村上春樹の世界観がたっぷり詰め込まれていますが
話自体はそれほど難解ではないので「はじめて村上春樹に挑戦する」という方にもおすすめできそうです。
気になった方はぜひ。第3部は出るんでしょうか…?