ガルシア=マルケスの楽しみ方
いよいよ、文庫版の『百年の孤独』が本日発売。
あくまで一度挫折した自分がちゃんと楽しめるように、
予備知識を調べてため込んでいたものを、ブログにまとめておこうかなと。
これからはじめて読む方も、参考にしていただければ。
新潮社の『百年の孤独』読み解き支援キット
池澤夏樹が百年の孤独について書いている 『ブッキッシュな世界像』を62円でゲットしたのでそれについても書いていきたいなと。
・・・と思いきや、
新潮社からなんと『百年の孤独』読み解き支援キットが!笑
僕がわざわざまとめる必要もなくなってしまったので、リンク載せておきます。
・Twitterで見かけた人物相関図
『百年の孤独』といえば、たくさんの登場人物が出てくるのがややこしく、
僕自身もそれが原因で挫折したようなもの。
物語と人物の奇怪な魅力にとりつかれ、ぐいぐい読んだ。とくに死の描写はもう……どれもあまりにも幻想的で美しい。誰の死様がいちばんすき?という話を読んだ人としたい。そして今回も人物相関図をつくった。物語の解像度がぐんっと上がる、この余韻のたのしみ方がすきなのです。 #百年の孤独 pic.twitter.com/JSAZd7P8Td
— たま子 (@tama_co_co) February 18, 2023
単行本だと冒頭に人物相関図が載っているけれど、
念のためTwitterで検索して出てきたのを貼っておきます。
・・・こういうの、自分でメモ取りながら覚えるのが一番かもね。
『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』
ガルシア=マルケスの全講演集。
昔読んだ読書メモの中で、いくつか気になった部分を。
成否はわからないのですが、私は自分の書く一行一行の文章の中でつねに逃れやすい詩の精神を呼び覚まそうとしています。
また、鋭い洞察力を備え、不気味な死の力を打ち砕いて 永遠の勝利をもたらす時に対して崇敬の念を抱いていますが、自分の書く一語一語にその証言となるものを刻み付けようと心掛けています。
今回の受賞は私のそうした試みが決して無 意味なものでなかったことを証明してくれていると思われ、大いに励まされました。
そうし た思いを込めて今回の受賞を謙虚に受け止めたいと思っております。
『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』P43 より ストックホルムにて
今挙げた最初の作品から最後の一冊まで――そして、これから書くつもりの多くの本の中でも ――――私は権力の性質についてずっと問いかけていくことになるでしょう。
けれども、こうしたことを本当に自覚しはじめたのは、『百年の孤独」を書いている時だ ったと思います。
あの時、私の背中を押したのは、おそらく法と秩序の勝利をうたっている 公式の歴史に逆らってでも、悲劇的なあの事件の犠牲になった人たちを歴史の闇から救い出せるかもしれないという思いでした。
『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』 P127
中短篇集を読んで感じたこと
中短篇集を読んで感じたことを軽く。
・コロンビアの風習みたいなもの
・町の雰囲気
・出来事に対する街の人の反応、
・起こりえないことがバンバン起きていく
・・・こういうのを、あまり深く考えずに、
コロンビアの空気感みたいなものをあわせて楽しむだけでも十分読んだ価値があるかなと。
ストーリーテリングがやっぱりめちゃ巧くて、
『エレンディラ』『大佐に手紙はこない』『この世でいちばん美しい水死人』
あたりが個人的ベスト3。
・・・なんというか、ほら吹きのウマい作家なことで笑 (※褒め言葉)
中短篇集はわりと展開も早いので、
ガルシアマルケスが影響されたウィリアム・フォークナーを読んだことがある人は、わりとすんなり読めるかも?
「なぜは百年の孤独を読むべきか」@ TedEd
Tedにて概要がまとめられているので軽く覚書き。
・架空の村マコンドでの非現実的な現象が、実在するコロンビアでおきた史実と一致する
・亡霊になるか、次の世代に生まれ変わるか
→ 時が繰り返す物語
・1928年の バナナ労働者虐殺事件
・分断された時代に育ったガルシアマルケス
・独裁時代のメキシコをみたり、クーデターも経験したり
・祖父は千日戦争を経験した退役軍人
反旗を翻した祖父をみて、社会主義的な視線へ
本の概要
注意した方がいいのは、だいたい次の内容くらいだろうか。
男の名前は「アルカディオ」「アウレリャノ」のほぼ二通りだが、同じ名前を持っている一族は、似たような性格を共通して持っている。 最低限覚えておくべきなのは「ウルスラ」「メルキアデス」「デ・ラ・ピエダ」。特にウルスラは「第一世代」にもかかわらず、物語終盤まで生き続ける事実上の最重要人物。
あとポップに予備知識を入れておくなら、この動画が良さげだった。
・ホセ・アルカディオ・ブエンディア 主人公の男 夢を追い求めすぎる性格
・ウルスラ・イグアラン 妻
→ これが初代ブエンディア家
・アマランタ 娘
・レベーカ 孤児
[アルカディオ] となづけられた子供は外交的 日々ぶっとんだ行動をとりがち。
それに対して [アウレリャノ] と名付けられた登場人物は内向的。
・登場人物がたくさん出てくるけれど、そのクセを楽しみながら読むといいらしい。
・それぞれ濃いキャラクターであるけれど、各々が孤独を抱えている
→ 孤独が癒し、快楽でもあることもあるし、別の人にとってはそれが・・・
昔自分が途中で読むのを止めてしまったのは、
その登場人物の多さとキャラの掴めなさ具合にあった気がするので、
あまりムキにならず気軽に楽しみたいなと。
話の筋が難解というよりは、登場人物が多過ぎて難しいパターンなので、ちゃんと本筋のキャラクターを追えてたらなんとかなるはず。
質問集
ディスカッションするための「質問集」みたいなのも、
海外サイトに転がっていたので、
これを参考に読書会進めていくのもありかも。
とっても"国語の授業"っぽい感じだけど。笑
→ One Hundred Years of Solitude: Part One of Discussion
・・・ちなみにスペイン語圏、ということで、
メキシコの友人に『百年の孤独』を読んだことがあるか聞いたら、
「学校の授業で無理やり読まされたので好きじゃない」、という話だった。
日本でいうと、『舞姫』とか『こころ』みたいなアレなのかも。笑
無理やり読まされる本ほどつまらないものはないしね。
『予告された殺人の記録』の方が短くて面白いよ、別のおすすめをされてしまった。
世界のブックカバー一覧
とあるポッドキャスト番組で、
「日本版の表紙は『百年の孤独』をより難解そうにみせてしまっている」
という話をしていて、確かになと。
紹介されていた世界の表紙まとめを見てみると、
どれもデザインからそそられるというか、
「全然違うじゃん!」とツッコミたくなるレベルでバラバラ。
・100 Covers of Gabriel García Márquez’s One Hundred Years of Solitude
こちらより海外各地の表紙を見られます。
どれも南米っぽい濃さがあって、
日本のアレとはちょっとイメージが違うのかな~
今回の文庫版のカバーデザインは、
単行本よりもはるかに楽しく読めそうなのが良いなと笑
そもそもガルシアマルケスが、
おばあちゃんのおとぎ話の"語りのうまさ"を再現したような小説だそうなので、
『日本昔ばなし』ぐらいに気軽に読むと良いのかも?
バナナ戦争
『百年の孤独』について言及している本を読むと、
「バナナ戦争」がキーワードとのことなので、
(中短編でもよくバナナ農園が登場する)
ググって見つけた良さげなページを載せておきます。
それはバナナは今私たちが目にしている黄色いバナナは中南米に固有にあった作物ではないということや、植えかえねば永続性が保てない作物だったことも知らなかった。そして何よりも、今現在バナナの歴史を知ることがいわゆる多国籍企業による効率による企業活動がいかに土着の農産業と政治、経済を破壊するかの見本を見事に見せてくれていてそれゆえの重要な問題を見せてくれているからである。
"ユナイテッド・フルーツは鉄道と抱き合わせで土地を取得し、鉄道は国のインフラではなく、バナナの積み出しのための鉄道であるため、バナナプランテーションがバナナの病気で一気に全滅すれば(バナナの病気はしばしば全滅させたということだ)、鉄道もまた放棄され、プランテーションごと移動してしまうということが当然のこととして行われていた。"
ラテンアメリカの安い労働力を利用しながらユナイテッド・フルーツ(UFCO)はリンゴやオレンジより栄養価が高く、厚い皮に包まれて持ち運びに便利なバナナをアメリカ国内のファストフードとして定着させていった。
結局1930年までにUFCOはグアテマラ、ホンジュラス、コスタリカ、パナマの中米諸国、そして南米コロンビアも含めた「バナナ共和国」(実態は「帝国」)を築き上げた。もちろんその労働は過酷を極めていて労働者の反乱も頻発していたのだが、いずれもが反共、独裁政権の軍事的な介入で粉砕されていった。
あとは「バナナ大虐殺」についても。
バナナ農園の労働者たちがストライキを起こした事件。
この場合、ストライキで困っていたのはアメリカの大企業だが、その顔色を忖度してコロンビア軍の指揮官が「自発的に」同国人を虐殺する判断をした、というのがポイントである。
収集がつかなくなってきたので、なんか良さげなページ見つけたら、
また随時追記していこうかなと。
本日発売の『百年の孤独』文庫版はこちらより。
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