ゲイ的表現の鋭さ
日本の文学界を代表する作家、大江健三郎。
意外と同性愛的視点で読んだ解説などが少ないので、
今回はLGBT的視点から大江文学について語りたいと思います。
ノーベル文学賞受賞の著者
ノーベル文学賞が話題になったので日本を代表する文豪、大江健三郎について書くことにしました。
僕自身、大江健三郎の大ファンではないので、全ての作品を網羅したわけではないですが
著書のいたる部分で同性愛者的表現が目立ちます。
ペ○スの描写も不自然なほど登場し、BL的な臭いもする作品があったりも。
LGBTというよりも、同性愛に限られてます。
生々しさを重視したものなので、
よりホモセクシュアルが強調されたような描写が特徴的。
初期の代表作『飼育』(芥川賞受賞)もそんな傾向を凝縮したような短編です。
あらすじとしては、
「戦争の時代、四国の村にアメリカの軍機が墜落し、
黒人兵が捕虜が村の捕虜となる。僕は監視役になり・・・」という話。
黒人兵を飼う、僕は躰を自分の腕でだきしめた。僕は裸になって叫びたかった。 黒人兵を獣のように飼う……
『死者の奢り/飼育 (大江健三郎)』 位置:1179
わりかし冒頭から濃いホモ臭さが。
腐蝕性の毒のようにあらゆるものにしみとおってくる黒人兵の体臭、それは僕の 頬 をほてらせ、狂気のような感情をきらめかせる……
『死者の奢り/飼育 (大江健三郎)』 位置:1349
"嗅覚"についての描写もやたらと多く。
なかなか強烈な描写だったり・・。
開高健なんかも戦争の話が多いのですが、やはり匂いに関する描写がよく出てきます。
それから急に僕らは、黒人兵が堂々として英雄的で壮大な信じられないほど美しいセクスを持っていることを発見するのだった。
『死者の奢り/飼育 (大江健三郎)』 位置:1606 より
「セクス」というワードは大江の小説でよく出てくるのですが、
言うまでもなく「おにんにん」のこと。
こんな感じの描写がいたるところにあったりします。
こちらは「人間の羊」という短編より。
子供らは、裸になった外国兵の体を驚嘆して見つめた。兵隊たちはまっ白な皮膚と陽に輝やく金色の体毛とをもっていた。
『死者の奢り/飼育 (大江健三郎)』 「人間の羊」より
何気ない描写もこんな感じ。
確か大江健三郎さんは女性と結婚しており、
おそらくホモセクシュアルではないはず。
各所の描写が完全にゲイの視点のそれで、
「ゲイじゃないのにここまで書ける作家というのはホントにすごいなぁ」と読む度に思います。
大江健三郎さんの書き方として、
わざと文章を読みにくくすることで精神のいらだちや困惑を表現することもあるので、なかなかの読みにくさがあります。
『万延元年のフットボール』なんてまさにそんな感じ。
はっきり"悪文"なんて批判もされたりします。(※ノーベル賞受賞者です)
そういった意味で、村上龍の「コインロッカーベイビーズ」の同性愛者的描写も、
大江健三郎の影響を強く受けているように気がしたり。
人種差別と同等に、抑圧された側の衝動みたいな力を、
小説の原動力として用いているのでしょうか。
そういや、村上春樹の作品でも、以前紹介したように
『偶然の旅人』や『ノルウェイの森』『スプートニクの恋人』などあらゆる作品に色んな形の「性」が登場します。
~LGBTと村上春樹~「偶然の旅人」『東京奇譚集』より - 世界のねじを巻くブログ
やはり大江文学の話の筋として、"普通"の色恋では役不足で、
突き詰めるとこういう方向に進むんでしょうか?
小説家のアタマん中ってほんとにすごいよなぁ。
Kindleで読める作品
今回紹介したのは
ゲイ的なクセが強い大江健三郎の作品でしたが、
大江健三郎の短編小説は比較的読みやすいかと思うので、
秋の夜長にぜひトライしてみてください。
大江文学入門には
『死者の奢り・飼育』か『見るまえに跳べ』がおすすめ。
同性愛や人種差別、社会批判など様々なテーマを描いた初期短編集です。

- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/14
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