男らしさとポップカルチャー
ハリウッド映画でみるジェンダー論を書いた本、
『マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画(英宝社)』が発売されたので、
さっそく読んでみた感想を書いてみたいと思います。
この書籍の内容としては、マスキュリニティー(男性性・男らしさ)の問題を中心に、
アメリカ映画と文化を辿っていくという本。
感想・レビュー
個人的な感想をざっくり簡単に書いてみたいと思います。
タイトルから想像すると、ちょっと男臭い本なのかと思いきや、
エマワトソンの国連スピーチを軸に、
女性への配慮もある導入文ではじまる点が好感触でした。
基本的な流れとしてはいくつかのトピックのもと、
『ファイトクラブ』など有名タイトルから
はじめて聞くような映画までジャンルや年代問わず紹介され、
その作品の背景やジャンダー論的な分析が分かりやすく書かれています。
オタク文化、#MeToo、メトロセクシュアルとブロマンス、イクメン、LGBTQなどなど、
あらゆる視点で"アメリカの男らしさ"というものを揺さぶる一冊。
自身と強さを見せつける男性の時代は去り、
これからは迷い、傷つきながらも、民主的で誠実であろうとすることが、
これからの男らしさなのです。 P156
ホモソーシャルやゲイカルチャーなど男性的な部分だけでなく、
フェミニズムへのバックラッシュやスポーツ、政治など
あらゆる分野に話が広がっていくのも◎
後半の "クィア・リーディングで読む『フォースの覚醒』"というパートは、
そんな視点があるのか、と正直驚かされました。
タイトルの通り、
アメリカの映画がメインの内容なので、
海外ドラマや本、音楽などの分析ついても読んでみたいなぁと思ったり。
・・・あとちょっと気になったのが、
まだ見てない映画のネタバレが多数含まれるので、
もうちょっと抑えめにしてあるとよかったかな、と思わなくもなかったです笑
また、僕個人としては学術的なジェンダー論の用語をあまり知らなかったので、
そういう意味でも楽しめました。
コンシャスレイジング
トロプス
レイシャルプロフェイリング
スラッシュフィクション
など知らなかったワードがたくさん。
この本を通して、
個人的に気になった映画を10本選ぶと、
- 透明人間
- レッドピル
- ROOM
- スーパーバッド
- ジ・アート・オブ・セルフディフェンス
- 本当の僕を教えて
- 40歳の童貞男
- ファミリーツリー
- 私の中のあなた
- ザ・イースト
あたりは今すぐにでも見てみたいなぁ、と思いました。
なにより見たい映画がたくさん増えたのが、一番よかったことかもしれません。
ほんの少しジャンダー論の知識があるだけで
映画の見方って大きく変わったりしますし、
特に男性/女性という性別の壁に挟まれやすい
ゲイの方には読んで欲しい一冊です。
以上『マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画』のざっくりレビューでした。
- 作者:國友 万裕
- 発売日: 2021/03/25
- メディア: 単行本