【4Kデジタル修復版で再上映】
小津安二郎監督の『東京物語』を神戸で観てきました。
映画好きなら誰もが知る有名作なんですが、いまだに見たことがありませんでした。
そこへちょうど、"小津4K"と称してデジタルリマスター版の上映を行っていたので、
さっそく映画館で観てきました。
1953年の古い映画なのですが、僕なりの感想を書きたいと思います。
(※思いっきりネタバレありですので、まだ見たことがない方はご注意ください)
客層としては、「七人の侍」なんかの時は若者もたくさんいたのですが、
さすがにこの映画のテーマ性もあってか、年齢層は60以上と思わしき老夫婦が多かったです。
【家族の距離感】
まずは映画のトレイラーから。(これだけじゃ中身は掴めませんが・・)
あらすじを簡単に説明すると、
尾道に住む老夫婦が、東京で働く息子達を訪れるために上京します。
始めは丁寧に接してもらうも、それぞれの家庭の事情で忙しく、あまり構ってもらえなくなり・・。
というような内容。
親と子のせっかく上京してくれた両親に対して、
仕事が忙しく「お父さんいつまで東京にいるんだろ?」的な反応をしてしまうところがちょっと寂しい感じがしました。
仕事のため、どこかを案内する時間もなく、お金を出して熱海に泊まらせたりもします。
紀子さん役がほんとに美人で、まさに絵に描いたような"昭和の女優"という感じ。
色んな登場人物の言葉ひとつからにじみ出る人柄の違いが、非常にうまく描かれてるところがさすがでした。
この映画の核は、終盤の紀子さんの「でも、子どもだって大きくなると誰だってみな、自分の生活が一番大事になってくるのよ」的なセリフなんでしょうね。
残酷かも知れませんが、親もそれをしっかり認識して、子ども離れをするべきなのではないでしょうか。
こればっかりは仕方のないことです。
【カメラの構図がバイオハザード】
この映画で興味深いな、と思ったのが、撮影されているショットの構図。
固定カメラで延々と撮影されているので、
誤解を恐れずにいうと、カメラの構図が初代バイオハザードにそっくり。
固定した画面の中を、人が左右前後に動く感じ。
そして人が別の場所にいくと、ようやくカメラが切り替わる感じ。
クローズアップ(拡大)がほとんどなかったような気がします。
たまに地面から撮ったような、
低い視点からの構図があるのもいかにもバイオハザードっぽかったです。
また、登場人物が語るとき、カメラに向かって正面から話しかけてくるような撮り方が
海外ドラマの「Modern Family」っぽくも感じたり笑
登場人物の会話の独特の"間"もいいですね。ハリウッド映画にはない感覚。
英語のタイトルは「TOKYO STORY」。そのまんまですね。
【時代の違い】
映画をみていて個人的に印象に残ったのが、現代との「死」に対する感情の違い。
後半、電報で「ハハキトク」と危篤の連絡があるのですが、
「喪服はどうする?」みたいな会話になるんです。
今だと簡単に電話・メールなどで状況を細かく確認することができます。
しかし当時の電話がない家なら、当時は病状まで伝えることができない。
つまり危篤の連絡があれば、急いで喪服をもって駆けつけるしかない、
と思うとちょっとしたカルチャー・ショックを受けました。
「明日の朝までもつかどうか」と言われた主人公も「そうか、おしまいか。」ぐらいの反応。
昔はここまで来ると、医学も発達していなかったので諦めがつくもんだったんですかね? (もちろん映画の描き方という意味でこうしたのもあると思いますが)
【親孝行をしたくなる】
こんな感想で終わらすのはあれなんですが、
見終わった後、やけに親孝行をしたくなるような映画でした。
鑑賞後、さっそくお盆に実家に帰るときのために、両親へのお土産を購入。
やっぱり家族は大切にしたいですね。
"生産性"とかそんな言葉で一括りにされないような生きた家族の姿が、この映画にはありました。
集まっては離れていくはかなさ。
親はいつでも会える存在ではなくなってしまう、ということを心に留めて、
できる限りの感謝の気持ちを持ちつつ、家族との付き合いをしようと思いました。
白黒映画はつまらない、という若者にぜひみてほしい名作。
関西におられる方は映画感で観られるチャンスなので、ぜひ劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
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