世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/電子書籍/Lifehack/Podcastなどについてお伝えします。ポッドキャスト「ねじまきラジオ」配信中。

AI時代に読む村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

新作の予習に

最新作『街とその不確かな壁』が明日発売。
タイトルや前情報から、
過去作『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
と関連しているのは間違いなさそうなので、
10年振りぐらいに再読。

 

個人的には初めて読んだ村上春樹の長編が
『世界の終りと~』だったので、わりと思い入れのある作品。

確か『走ることについて~』『象の消滅』そして
本作という順番で読んだ気がするけど、独特の設定に惹かれて
あっという間に読み終わったけど、今回もそんな感じで読めたなと。

代表作のひとつということもあり、今読んでもさすがに面白かった。

全体的には『ねじまき鳥クロニクル』の方が優れていると思うけれど、
主人公への共感度でいうと『世界の終り~』や『羊をめぐる冒険』の方が上。

はまり込んでいく主人公に同情せざるを得ないし、
ラストの選択はもうね・・・。

 

令和の今、改めて読み直してみると、
偶然にも人工知能を暗喩しているようにも読めるし、
ウクライナという言葉もちょいちょいも出てくるしで、

優れた小説というのはどういう解釈でも楽しめる、
村上春樹さんの小説の魅力はやっぱりそこなんだろうなと。

 

だいたいはなんとなく覚えていたけど、
「百科事典棒」や「手風琴」「電力工場」
など全然覚えてなかったところもあってなんだか新鮮だった。

 

「井戸」も『ねじまき鳥クロニクル』以前の本作から少し登場してたんだな、とか
ボブ・ディランこんなに頻繁に登場してたっけ?とか。

 

情報をめぐる戦い

村上春樹の小説って『ノルウェイの森』が売れすぎた影響か、
おしゃれ小説のイメージが先行してしまっているけれど、

特に『世界の終わりと~』に関しては
わりと細かい設定が練られていて
独自のSFワールドが繰り広げられていく感じ。

海外ドラマばりに
2つの世界を行き来しながら物語が動いていき、
上巻の終わりなんて、なかなか『24』チックだなと思いながら読み返してたり。

 

そもそもこの本の大筋は
「情報をめぐる戦い」なので、

システム側であるAIと人間とを対比しているように読めたりも。

「よくわかるよ。僕もときどきそう感じることがある。
街に比べると、僕が弱い矛盾した微弱な存在じゃないかってね」

 

もやはりこの街の強 固な鎖の輪にくみこまれたひとつの断片にすぎないのだ。何かが強大な壁を作りあげ、人々はただそこに呑みこまれてしまっただけのことなのだ。
僕はこの街の中のすべての風景と人を愛することができるような気がした。
僕はこの街にとどまることはできない。 しかし僕は彼らを愛しているのだ。

 


"世界の終わり"の森の中にいたりするのも、テクノロジーを捨てて「心を捨てずに暮らす」人のよう。

ケヴィン・ケリー的にいうと
アーミッシュ的な存在の人のことを指しているのかも。

加速するAI時代には、そのような信条を貫く人ももっと増えてくるだろうなとふと思ったり。

 

 

『街とその不確かな壁』を予想してみる

Amazonにあらすじがすでに掲載されているので軽く引用。

十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、きみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。<古い夢>が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された「物語」が静かに動き出す。

 

その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

 

どんな内容になるか、個人的に予想してみたり。

 

・イントロ・冒頭のシーンはよくわからないスタート

 

・若かりし頃の話と、年をくった後の時代とを行き来する?

 

・壁の向こう側に戻った影の視点での話

 

・「森」「川」「図書館」「やみくろ」あたりは新作でも重要になるはず。
「井戸」も出てきそう。

 

・LGBTQ+な「性的に特殊なキャラクター」が出てくる

 

・古典の物語の引用がある 

(過去にも『雨月物語』とか『平家物語』『魔笛』『オイディプス王』『1984年』など)

 

 

新潮社から公表された文章で
「コロナ禍に書きはじめた」と書いてあったけれども、
コロナウイルスやパンデミックを直接描くことはないだろうなと
個人的には思ったり。

 

ここ数年の話をすると、BLMや環境問題も
あらすじからすると、一時代前の日本が舞台っぽい気がするので、
人種問題はたぶん書かないんじゃないかなと。

 

ただ、「戦争」というテーマについては
昔から村上春樹が書いてきたテーマなので、
今作でも間違いなく触れてくるはず。

 

あとAI・人工知能については
2年前にカズオイシグロやイアンマキューアンも取り上げているので、
村上春樹がとりあげてもおかしくないなと思ったり。
無難にサポートキャラとして登場しそう?

 

これだけ世界の目も集まっているので、
女性蔑視やしつこい下ネタがない(あるいは少ない)ことを願うばかり。

(ポリコレにあんまり配慮しない作家なので、今回も盛りもりだったりするかも?)

 

注目されすぎてあれこれ言われる作家さんだけれど、
なんだかんだで楽しみ。

長編新刊といえば、
村上龍の『ユーチューバー』はまだ読めてないけど、
カズオイシグロの『クララとお日さま』や
チャックパラニュークの『インヴェンション・オブ・サウンド』
以来にワクワクしてます。

 

いろんな人の考察を読めたりするのも
人気作家のいいところで。

 

あと出てきそうな音楽を5つぐらい挙げておくと、
(当たるわけないけど笑)

・パティ・スミス

・エルザ・ソアレス

・ピーターガブリエル

・ジョーコッカー

・ベタすぎるけど『ザ・ウォール』のピンクフロイドとか。

 

イスラエルのスピーチでもあったように

卵とか月とか、丸いものがまた重要なモチーフになるんじゃないかなと。

 

 

ちなみに、『世界の終わり~』ほんとについ先ほど読み返したとこなので、
雑な感想になってます。
(ほんとは一昨日ぐらいに完読してる予定だったけど忙しくて....。)

 

そんな感じであと10分ほどで配信される『街とその不確かな壁』、
せっかくなので1,2章ほど読んでから寝ようかなと思ってたり。

 

読書日記、振り返りつつ書いていくつもりなのでご興味あれば。

『街とその不確かな壁』読書日記を書いていこうかと。 - ねじまき日記

『街とその不確かな壁/村上春樹』の読書メモ