世界のねじを巻くブログ

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『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』を毎日読む試み

時間SFの古典名作

どうも、ねじまきです。

2025年4月は、
『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』(浅倉久志訳)という
時間SFの短編小説集を毎日読んで、軽い感想を書いていくことにしました。

 

『アインシュタインの夢 / アラン・ライトマン』(浅倉久志訳) 時間SF

 

あらすじはこんな感じ。

30通りの異様な時間。

若き特許局員アインシュタインが見たかもしれない奇妙な時間の夢を、現役物理学者が詩情豊かに描くー

 

日本ではいまいち知名度が低いですが、
海外では「短編小説の名著」としてよく名前があがるぐらいの名作。

僕自身、数年前に一度読んでいるんですが、
SFの短編小説を書いてみたいなと思っているので、
物語解釈・構成の練習的な意味も込めて、再読してみようかなと。

 

ちょうど30のエピソードで構成された一冊なので、
4月に毎日1章ずつ読んで軽い感想を書いていく予定です。

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プロローグ

物語はこんな感じでスタート。

手にはしわくちゃになった二十ページ分の書類を握りしめている。
きょう、ドイツの〈物理学年報〉宛てに郵送するつもりの新しい時間理論である。

 

四月の中ごろからここ二カ月あまり、彼は毎晩のように時間と関係のある夢を見てきた。その夢が、彼の研究を乗っ取ってしまった。

 

べつの世界には、そうした性質の時間が存在するかもしれない。

 

要するに、アインシュタインが相対性理論を考え出したころに、
彼が見たであろう夢を再現した30の物語が書かれているという一冊。

なのでどれもユニークな時間の流れ方をしているという仕組み。

 

ということで、さっそく第一夜から。(まさに『夢十夜ですね』)

 

1905年4月14日

時間が「始めも終わりもない円環」である世界。

 

世界はその歴史を正確に、かつ無限にくりかえしていく。

「大多数の人は、自分が同じ一生をくりかえしていることに気がつかない」。

おぼろげにこの真実に気がついた人もいて・・・という
ちょっと時間の怖さを知るエピソードだったり。

 

1905年4月16日

時間が「水の流れ」に似ている世界。

突如その流れが変わることがある。

突然過去に飛ばされたり、未来からやってきた者もいたり・・・。

タイムトラベラー = "時間の流刑者"という考え方もなるほどなと。

 

 

1905年4月19日

とある男が、女に再度会う決心をした世界線と、そうでなかった世界戦。

どの未来も現実である。

パラレルワールドの哲学みたいなものを、短い文字数で表していてすごい。

 

 

1905年4月26日

機械時間と肉体時間、二種類の時間がある世界。

ふたつの時間が出会うところには絶望がある。

なるほど・・・一瞬で時間が経つ気がするのは、肉体時間で考えているからなのか。

 

1905年4月24日

地球の中心から遠く隔たるほど、時間の流れが遅くなる世界。

若さをたもちたい一新で山の上に引っ越す人も。
そして高さが地位を示すようになり・・・。という寓話的な話。

 

 

1905年4月28日

時間が絶対の世界、"神のまします証拠"とされる世界。

みんな自分の時間の中に「避難」する、という話。

哲学的でちょっとむずい。

 

1905年5月3日

原因と結果が不安定な世界。

 

この世界の芸術家たちは恵まれている。予測不可能性こそ、絵画や音楽や小説の生前であるからだ。意外な出来事、説明や先例のないハプニングに、彼らは狂喜する。

 

どんなふれあいにも過去と未来がない、そんな空間だと、
今できることをやるしかない、というのもなんだかな。

自分がいるこの空間ももしかするとそうなのかもだけど。

 

1905年5月4日

時間は経過するが、ほとんど何も起こらない世界。

かりに野心をいだいているものがいるとすれば、その人間は、それと知りつつ、だが、ごく緩慢に苦しんでいることになる。

うーん、やっぱり大変だとしても、予想外のことが起こる世界の方が面白いよな。

 

インタールード

友人のベッソーとの会話。

「ぼくが時間を理解したいのは、唯一者に近づきたいからなんだ」

 

1905年5月8日

みんなが世界が終わる日を知っている世界。

世界がまもなく終わることを気にしているようには見えない。だれもがおなじ運命を共有しているからだ。余命一カ月の世界は、平等な世界である。

終末のオチを書かないところもいい。

 

1905年5月10日

町のそれぞれの区間が、別の時間に固定されている世界。
別の時間に面してはいるけれど、みんな孤独。

あんまり意図がわからない話だった。

 

1905年5月11日

時の経過とともに秩序が増していく世界。

哲学者たちはこう論じてきた。秩序に向かう傾向がなければ、時間はその意味を失うだろう。未来は過去と見分けがつかなくなるだろう。

 

春になると、みんな整っているのに飽きてきて、夏まで破壊をつづける、という設定が面白かった。

 

1905年5月14日

時間が静止する世界。
時間は中心から同心円に広がっているので、外側が時間の経過が速い。

中心にいきたがるのは、恋人や子供を連れた家族たち。

時間の中心には近づかないほうが賢明だというものもいる。人生は悲しみの器だが、 それを生きぬくことこそ気高いのであり、時間のないところには人生もない、と。

それに反対を唱えるものもいる。自分は永遠の満足のほうを選ぶという。たとえその永 遠が、標本箱にピンで止められた蝶のように、凍りついて動かないものであっても。

こういうのを読むと、なんだかんだ、24時間平等に進む僕らの世界は悪くないのかもね。

 

1905年5月15日

時間の無い、イメージだけの世界。
淡々と羅列される、詩的な情景描写が美しい。

こういうの真似したいよね。

 

1905年5月20日

記憶がない世界。現在という瞬間の世界。
手帳をもって記録使用とする人もいるし、もう諦めてしなやかな足どりで歩く人も。

妻とのふれあいもはじめてのように鮮やかだったり。

 

1905年5月22日

時間がきまぐれに流れる世界。

自分の未来が見えたり、見えない人もいたり。

未来が見えることへの苦悩。それは幸せなのか?

 

1905年5月29日

動いている者ほど、時間が得られる世界。
家も郵便局も、びゅんびゅん動いている。

諦めて自分の部屋に閉じこもり、外を見ない人もいる。

 

インタールード

友人との何気ない会話。

 

 

1905年6月2日

ぐじょぐじょの茶色になった桃がピンクに戻る、時間の流れが逆の世界。
ノーベル賞を受賞した学者が、若くて活発な"未来"を夢見てすごす。

 

 

訳者あとがき

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解説

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さっき気づいたんですが、今月が四月なので、
ちょうど120年前にアインシュタインが一般相対性理論を発表したのか・・とびっくり。

 

夏目漱石『夢十夜』×時間SF みたいな感じの一冊。
1章ほんの数分で読める短さなので、普段本を読まない人にもおすすめできるかなと。

どれも独特の時間の流れ方をする話なので、
クリストファーノーラン監督の『TENET』とか好きな方もたぶん楽しめるはず。

時間という異質な空間の中で過ごす人間本質みたいなものが見れて面白いなと。

・・・ということで、毎日更新予定です。

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