新刊が発売
カズオイシグロさんの最新作『クララとお日さま』が早川書房より
2021年3月2日に発売されます。
(※後半にネタバレありのレビューを追記しました)
ノーベル文学賞受賞後初めての長編出版、
ということでイギリス・日本のみならず海外でも注目が集まってます。
(※『忘れられた巨人』はノーベル賞前に英語版が発売してたので)
今回僕が特に気になっている理由として、
AIの少女が主人公 ということ。
カズオイシグロがこの時代に書く人工知能、
どういう話が展開されるのかかなり注目してます。
ちなみにこの『クララとおひさま』、
すでに映画化も決定しているようです。
あらすじ・ストーリーは映画.com.によるとこんな感じ。
2021年3月に刊行予定の原作は、並外れた観察眼を持つ「人工フレンド(Artificial Friend)」のクララが主人公。人工知能(AI)を搭載したロボットであるクララは、店を訪れる客や通りを歩く人々を眺めながら、いつか誰かが自分を購入してくれると期待していた。ついに、クララはある少女の家族と住むことになるが、実は一家には秘密があったというストーリーだ。
カズオ・イシグロの新刊小説「クララとお日さま」が映画化 主人公はAIの少女 : 映画ニュース - 映画.com
AIの人工フレンドが主人公というのは、いままでになかったですよね。
SF小説好きの方でもおそらく楽しめる内容になるんじゃないかと。
カズオイシグロさんの小説は一人称のものがほとんどなのですが、
今回もお得意の感じで話が進むはず。
あと気になるのが一家の秘密とはなんなのかということ。
お日様、というタイトルから
夜しか活動できない主人公を描いた『タイヨウのうた』を
ふと思い浮かんだのですが、
さすがに安直かな・・・と思ったり笑
でも太陽がキーワードになるのは間違いないかと。
名前がクララ、ということで
おそらく舞台は日本ではなく海外のお話し。
(※追記:海外インタビューによるとアメリカが舞台とのこと。英国ではなくあえて米国なのは何か理由があるはず。)
評価の高い「日の名残り」や「わたしを離さないで」と
同じ外国での話なのでこれは期待できますね・・。
個人的に気になるのは
「記憶」や「信頼できない語り手」のギミックが使われるかというところ。
AIが主人公とはいえども、
「わたしを離さないで」のように
SF・テクノロジー臭さは前面に出ない内容になるかと思ってます。
448ページということで、
まあまあのボリュームですね。「わたしを~」とほぼ同じぐらいの長さ。
登場人物もあまり多くなさそうなのにこの長さとなると、結構な急展開があるのかも。
…話は逸れますが、
実は正月にカズオイシグロさんの出身地である長崎旅行に行ってきました。
その影響もあって、個人的にカズオイシグロ熱が再燃。
せっかくなので
BBC SoundsでKazuo Ishiguroさんのインタビューを一通り聞いたりもしてました。
するとBBCのインタビューで、
人工知能をテーマにした小説の構想を2017年の段階で軽く語っていてびっくり。
・・・ということで少なくとも足掛け5年かけて小説を練っていたのかなと。
・人間であるということはどういうことか
・伝統的にいう「魂(soul)」とは何か?
・機械と動物の違いは?
ということに触れて、
人工知能は私たちの生活や人間関係を覗くレンズとなる
ということも語っておられました。
初めてインタビューをまともに聞きましたが、
すごく誠実な方なのが伝わってくる話し方。
ときたまユーモアを挟んで場を和ませるのも
さすが英国紳士です。
クララとお日様、いまからほんとに楽しみですね~
児童文学っぽい表紙カバーも素敵。子供の視点で世界を見る感じになるのかな?
あと、もちろん日本語訳者は土屋政雄さん。
この方、もともとはIBM製品などコンピューターマニュアルを日本語訳する仕事をされていたそうなので、AI関連の語彙もばっちり訳してくれそう。
エンジニアやプログラマーの方にももしかすると刺さる物語になっているかも。
海外でもKazuo Ishiguro「Klara and the Sun」というタイトルで世界同時販売されるそうなので、原文のEnglishで読みたい方はそちらでも。
イギリス本国ではコロナウイルスの影響でロックダウンが厳しく、
家で本を読む方も増えているそうで、考察も盛り上がるんじゃないかと。
またブログで感想・レビューを書いてみたいと思います。
・・・ちなみに時差の関係でどうやら日本が最速発売だそうです。
Amazon Kindleの電子書籍版も同時発売なのでぜひ。
ネタバレありのレビュー・感想
ここからネタバレありの軽い感想的なものを。
・今作も相変わらず「記憶」のギミックをうまく使いこなすKazuo Ishiguroさん。
・ホームレスはただ寝てただけなのに、AIだから死んで生き返ったと勘違いしてたり、AIだから勘違いする間違いやずれをうまく生かした物語だった。
・物語の裏になにかが潜んでいるけど、しばらく読者には明かされないスタイルは今作も引き継いでる
・随所で"トイストーリーっぽさ"を感じた
・クララの純粋さがこの物語の救い
・「わたしを離さないで」に共通するテーマもあるので、まずは「私を~」から読むべきかも?
・そもそもAIロボットが太陽信仰してるところが微笑ましい
・後半の元同期AFに似た孤独な女性は誰? (誰か教えて・・)
・滝に行く途中の牛の描写の意図がいまいち読み取れなかった(誰か教えて・・)
・AIにもあそこまで感情(があるように思える)たっぷりに動くと、倫理的な問題がやっぱりたくさん出てきてしまいそう。クララに無礼よ、と怒るお母さんのシーンとか。
・ロボットの世界にも人間の世界にも"格差"があって、いくら技術が発達してもそこは根強い問題なんだなぁと。
・3章・4章あたりで話が急展開。独特の残酷さが滲み出てきます
・「人工知能は私たちの生活や人間関係を覗くレンズとなる」結局この言葉を徹底したような作品だった
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