世界のねじを巻くブログ

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『村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Café』対談集を読んだ感想

教授のインタビュー本

かなり昔に電子書籍で読んだ『村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Café』
Evernoteで「村上龍」を検索してたらキンドルのハイライトが残っていたので、せっかくということでブログに書いてみようかと。

坂本龍一さんが亡くなったとき、追悼の意を込めてブログにまとめようと思っていたけれど、ちょっと心がしんどかったのと忙しかったのもあって、ようやく。

現在はアマゾンのキンドルストアからは削除されてますが、10年前ぐらいは無料で読めたような気がする。

 

80年代にカルト的な熱狂を持って迎えられた対談、鼎談シリーズの「EV.Cafe」。 村上龍と坂本龍一のふたりの「龍」がその知性と感覚を研ぎ澄ましたこの対談シリーズが、 3.11 後の日本で復活しました。日本のいまと将来を憂う21 世紀の新たな対談とともに 1998年から2000年まで展開された対談、鼎談『EVCafe2』を初単行本化! 連載をしていた「エスクァイア日本版」誌が廃刊、その後10年に渡り入手困難となり、 ほとんど目に触れることができなかったため 書籍化の要望が高まっていた幻のシリーズを遂に一挙掲載。

 

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政治からアメリカまで

ということで、印象に残った部分や感想をざっくりと。
(※Locationはキンドルのおおまかなページ数みたいなものです)

 

徹底的になくしたのは9・11の後のアフガン侵攻やイラク戦争の開戦当時のニューヨーク・タイムズに、なんの気骨もなければブレまくってばかりの論説記事が載ったとき。ニューヨーク・タイムズといえど、読者の大多数が読みたがっている論調を載せるだけのエンターテインメントに過ぎないって実感したときだったな。もうそれで幻想も信頼も、完全になくした。ニューヨーク・タイムズに限らず、どの国のどんなメディアも国民がなにを望んでいるかっていう空気を読んで、それに沿ったものを提供しているだけ。そこにはなんの一貫性もない。Read more at location 145

ガザ侵攻のときもNewYork Timesはやらかしてましたが、
911後もそんな感じだったのか・・・。

 

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坂本 ぼくにジャーナリズム幻想はないけども、もしジャーナリズムにまだ可能性があるとすれば、それは権力の暴走を防ぐこと、嘘を暴くことが基本であって、大学でジャーナリズムを専攻すればそう習うはず  location 162

 

村上 歳のことを言ってもしようがないけど、死ぬまでに長編小説はあと何作書けるかっていうのは思っちゃうね。小説って書くのに時間がかかるから。 location 529

宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』と村上龍の『Missing』はかなり似ている、と言われているけれど、晩年になるとそういう方向にテーマは向かっていくんだろうか。

 

坂本 いまのこの気持ちのわるい社会に生きることは、小説家にとってかなり刺激にはなるって言ったけど。

村上 そう、その気持ちわるさを虚構に投影して小説に書いていくわけだから、ある意味のやりがいはあるよ。location 541

 

坂本 あの『コインロッカー・ベイビーズ』だって、当時のアンフェアな世の中をぶっ壊してやるって小説だしね。基本的に龍は変わってないよ。location 550 

『コインロッカーベイビーズ』、来年ウン十年振りに読み返そうと思ってます。
たぶん1月の「BookStack」読書会の本にするつもり。

 

 

坂本 3・11以降で音楽的な刺激を受けたいくつかの中で、とくに印象的だったのは、ぼくの友達のラッパーがエジプトの動乱のときに渦中に赴いて何か月か住んで、そこで録音したラップを聴いたこと。あのときのエジプトの状況とその中での音楽の扱われ方に衝撃を受けたんだ。タハリール広場で抗議活動をやっている若者たちのラップ。あそこでは毎週のように新しいラップが生まれてて、それは単なる音楽表現というだけじゃなく仲間への連絡手段として使われたりもしたのだけど、ある16歳のエジプトの少年のラップがリズム感も抜群でめちゃくちゃカッコよくて。エジプト人の少年にとってラップ・ミュージックは外国からの輸入物なんだけれど、完全に自分のモノにして独自の表現としている。これは刺激になった location 569

 

 

村上 う~ん、よくわかんないなあ。小説には目に見える連帯ってないよ(笑)。

坂本 そうか(笑)。音楽は聴いてもらってなんぼだから、どういう人が聴いてくれるかとか、聴かれるときの状況とかのシチュエーションも大事なの。

村上 小説とくらべると音楽はよりダイレクトだよ location 594

確かに、小説より音楽の方が、聞かれるシチュエーションって大事なのかも。

 

 

村上 そう。だからあえて、坂本作品でいちばん好きな作品は? って聴かれたら『スウィート・リベンジ』と答えるようにしてたんだよね。 坂本 ああ、あれ以前は他人のことを考えることはまったくなかったからね(笑)。聴き手のことは意図的に排除してたから、それはつまりは、音楽を作るということは方眼紙の上にどうきれいに点を置いていくかっていう審美的なことにしか気持ちが向いていなかったということでもある。 location 609

日本の聴衆にも受け入れられやすいポップな作品集を目指して作られたアルバム。

 

 

坂本 しかし、これまでのパターンからすると、次の『EV.Café』は2026年ぐらいの予定だけど(笑)、どういう日本になってるかな? 村上 経済的にはよくないだろうね。ということはお金でいろんなことを支えられなくなるので、難しいなあ。
location 632

2026年の「EV.Cafe」は教授の死により実現しなかったけれど、どんな内容になったんだろうな・・・。というか日本は大丈夫なんだろうか。

 

 

坂本 もっともっと、一般人がウィルスや遺伝子工学とか、環境工学の知識を持たないと生き残れない時代になっていくと思うからさ。僕は最近、生き残り技術として「整体」や「合気道」をやっている。それはインターネットと同じで、やっぱり実践的知識としての興味なんだよね。社会が悪いとかって言ってすむ時代じゃないもん。
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コロナを予見したような教授のことば。
合気道やってたというのはちょっと意外。(でも似合うかも)

 

 

坂本 敏感な人が、こういう鈍感な社会で生き残っていくためには、感覚を鈍感にしておかなくちゃいけないのね。そうしないと自分を守れない。敏感だと今度は社会と「そり」があわなくなっちゃうわけで、生き方変えなくちゃいけなくなる。だから学校とか会社とか行かなくていいんだよね。 location 820

こういう言葉があると救われる人はたくさんいそう。
現代では学校ってそんなに無理していかないといけない場所でもないしね。

 

 

村上 だから、「人生ってものは傷つきやすいものなんだ」とか、「君たちは本当に傷ついている、わかった」みたいな小説を書けばもっとうけるんだろうなって考えることがある。みんな弱ってるからね。もうちょっと降りていって、解決策を含めて悩みをきいてあげた方がいいかな、俺ってちょっと不親切かなって思ったり。まあ、俺がそんなことするわけないけどさ(笑)。 location863

いかにも村上龍っぽい。

 

坂本 普通の人は訓練をしてないから、悲しい時でも、どう表現していいかわからないんだよね。でも、悲しいことってまわりにいっぱいある。location 878

 

坂本 好き嫌いは別にして、尾崎豊もそういう役割だったんだろうね。 村上 中島みゆきもちょっとあるけど。そういうのは今はないもんね、必要としてないと思うんだ。 坂本 自分が傷ついていることを気がついていないんじゃないかな。でも傾向は違うけど、近いと思うのはMr.Childrenかな。location 887

今の時代だとAdoがそれにあたるんだろうなと。

 

村上 羽生善治に逢った時も言ってたけど、将棋においてもすごくいい手というのは、将棋のパターンの中にある手じゃなくて、感覚的な領域に入ってる手なんだって。自分で何でそうしたのかわからない手が残っていくらしいよ。location 969

この時から羽生善治さんってすごかったんだろうな。将棋全然詳しくないけれど。

 

 

村上 僕はこの2年間ぐらい、面白い夢を見ると記録してるんです。小説を書くのは、めんどくさいからすごく嫌なんです。だけど夢を書くのはすごく楽しい。なんでだろうと思うんだけど、夢っていうのは物語がないんですよ。偶発的な事件とか、エピソードやフラッシュ・バックの映像みたいなのがあって、それを自分の中で瞬間瞬間物語にしていくのね。それは小説と、作業としては同じなんだけど、夢の場合は書くことがすべてもう決まってるんで、それを記録していけばいいんですよ。 location1199

最終的に『Missing 失われたもの』に繋がったんだろうなと(少ししか読んでないけど)。

 

村上 もう一つは、一つの国家の上位の、「EU」みたいなリージョナル共同体が盛んになってくるよね。「国家を超えたもう一つ上位の枠組み」みたいなね。こういう世界の流れの中で、明らかに自分が所属するものが没落するっていう不安を抱いてる人がいっぱいいて、そんな人たちは明らかにナショナリズムに回帰してくだろうね、きっと。 location 2755

 

村上 今までのエコロジーは環境を守るという、欲望を抑える方向だったんだけど、今は欲望を抑圧するだけではなくもっと積極的に環境を維持していくという方向になってる。

坂本 メリットを感じさせるエコロジーね。結局、人間の経済活動をやめずに、しかも持続的な環境を作っていこうとすれば、そういう方向にならざるをえないんだよね。location 2828

 

ほかにも映画『ソイレント・グリーン』が語られたり、

 

「来世紀は「よく死ぬ」ことが大切になる」という浅田彰との対談、
「幸せなインターネットの時代は 終わってビッグビジネスの時代へ」という伊藤穰一との会話など、どれを読み返しても面白かった。
(あくまでハイライトで残してた部分のみだけど)

 

2016年時点ではキンドル版として公開されていたので、
こういうのこそ誰でも読めるように手に取れる場を広げてほしいなと思ったり。

 

EV.Cafe 超進化論』というのも気になっているけれど、
さすがに文庫本に3000円は出せないので、図書館で探してみたい。

 

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『おしゃれと無縁に生きる』/村上龍の感想(幻冬舎文庫) - 世界のねじを巻くブログ