世界のねじを巻くブログ

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ジョージオーウェル『1984年』と日記を書くことの大切さ

ジョージ・オーウェルのSF名作

 全ては記録することからはじまる、そんな小説を紹介しようと思います。

コロナ禍での監視社会へのおそれ、世界情勢、日本の政治などの状況も相まって
なにかと取り上げられることの多かった
ジョージオーウェルの『1984年』を久々に読み返してみました。

 

僕が紹介するのも今更感が漂うほどの有名な本ですが、
2020年はオーウェリアン、という言葉が流行するほど
この作品に注目が集まりまったかと。

 

センター試験に1984年の文章が登場したことも話題になりましたね。  

 

この本のあらすじとしては、

 ビッグ・ブラザーと呼ばれる独裁者に支配された全体主義の国家で、
市民の思想や言動には厳しい規制が加えられ、
その暮らしは巨大なテレスクリーンなどで常に監視されている。

ひょうんなきっかけで、主人公は日記を手に入れ、
テレスクリーンから隠れて日記をつけはじめ・・・。

ざっくりこんな感じ。

 

1984年に書かれた名作ですが、
自由意志、政治思想、監視社会、哲学、歴史などいろんなものを内包した
ディストピア小説です。

 

 

 

その世界観や思想はSF界隈だけでなく
あらゆるカルチャーに大きな影響を与え、
 

デビッド・ボウイやレディオヘッド、ポールマッカートニーなど
海外ミュージシャンも「1984年」に関する楽曲を出したりしてます。

 

ほかにもAppleがIBMに立ち向かう1984風のCMも超有名で、
それをさらにパロッたFortniteがアップルを揶揄したCMも
ずいぶん前のことのように思われます。

 

 

(最近、流れに乗って最近こんなクールなメモ帳も買っちゃいました)

1984年ジョージオーウェルノート

 

今回この記事を書こうと思ったのは、
政治や自由意志というややこしいところではなく、
「記録する」ということがいかに大切かということを伝えたかったから。

 

そもそもこの『1984年』は、
この主人公がこっそりとはじめた
一冊のノートに日記をつけはじめたこと、
から物語が動きはじめるんですね。

 

彼のやろうとしていること、それは日記を始めることだった。 P14
『一九八四年〔新訳版〕』 (ハヤカワepi文庫) |

 

 
細かく言えば、"違法行為"ではないのですが(法律が一切なくなっているから)
強制収容所に送りになるという世界観。

 

ふと彼は疑問に思った、自分はこの日記を誰のために書いているのか? P16

 

企てたことの重大さがはじめて身に染みた。
どうやって未来と意思疎通ができるというのだ? P16

 

記録する、という行為は現代ではあたりまえにできることですが、
1984年では、記録を残すことが禁止されている世界を描いています。


記録という概念がなくなってしまえば、
すべての過去は改変可能。

(ちなみに主人公は歴史を改変するというお役所仕事をする身でもあったりします)

 

そんな世界で主人公は監視から隠れて日記を書いているので、
思想警察にすぐに捕まることなく、
自分の考えをノートから引き出すことができるというわけです。

(ネタバレするともちろん省にバレてしまうわけなんですが)

 

いまこの現代でも改変や隠ぺいは
海の向こうの遠い国だけではなく、
日本でも起こっていることだと思うと

自分ごととして考えないわけにはいかず、
この物語が物語ではなくなってきていることに気づかされたりも。

 

また監視社会が騒がれるこのコロナ禍で
この小説が注目されるようになったのは
必然だったのかもしれません。

 

日記を書くということはおおげさにいうと、
過去と現代、そして未来の自分と意思疎通できる という、
なかなかすごい技術なんじゃないかな、と。

実際、自分自身の昔の日記を読むと、
あらたな発見がたくさんあったりしますし、
思考警察がでてきても、自分だけの考えをまとめることができるかも。

 

いま一度、
日記を書く・記録を残す

ということの大切さを思い返してみてはいかがでしょうか。

www.nejimakiblog.com

 

ディストピア小説の名作

『1984年』が描く複雑な主義・思想を横に置いたとしても、
この作品は大切なことを教えてくれる気がします。


2∔2=5 
ではなく2∔2=4
と答えられるようにするためには、
まずは記録することから
はじめるべきなんじゃないかなぁと改めて思いました。

 

かなり強引な締めにはなりますが、

普段あまり日常生活を記録することがないという方も、
新年度から日記をつけてみてはいかがでしょうか?

 

・・・という感じでSFの古典的名作の紹介でした。

 

3月はカズオイシグロの『クララとお日さま』以降、
やたらとSF小説を読んだ月でした。

5月には中国SF『三体』の最終巻も控えているので、
そろそろ三体の一巻から手を付けたいと思います。