Blogの歴史と問題
"誰でも書き手になれる画期的なサービス"だった
ブログ≒ウェブログの普及と直面した様々な問題を書いた本の紹介。
ここ最近、大手ブログの閉鎖が続くなか、
ブログの歴史を振り返ろうと思い図書館で借りてみました。
著者はニューヨークタイムズやWIRED等に寄稿もしているスコット・ローゼンバーグ。
感想・レビュー
ブログの歴史を描いた一冊、ということで
ブログが一般人に広く読まれるきっかけとなった
9.11の同時多発テロの時代からはじまります。
マリノは、ただ、自分が見たことを書いた。
この記録を見ると、朝8時49分の世界と8時56分の世界がまったく異なるものだとわかる。 P4
今ふり返ると、同時多発テロはブログの成熟を示すものではなく、
ウェブが生みだしたものに他のメディアが気づいた瞬間だった。 P10
ブログを語る上で9.11のテロは切っても切れない関係で、
一般人がその様子を書いた「ウォーブログ」から、
世間でもブログが広く読まれるようになったという話。
ウェブログの定義 としては
「個人の声をそのまま発信」という特徴があること、
つまり自律性こそがブログの特徴だということ。
個人ブログなら基本的に書き手がそのまま投稿するので
他人が入る余地ないですしね。
3章の「リンクで人物がわかる」で、
ブロガーの役割に、ウェブにある膨大な情報の人間フィルターという側面がある
という話も。
初期のブロガーは「フィルター」と呼ばれ、
インターネットのすぐれたコンテンツを紹介するブログがほとんどだったそう。
最近でいうとブログよりも、ニュースレターがこの役割を担っている気がします。
「あることについて書いてみると、そのことを自分がどう考えているのかわかるのです。/ マイケルシッピー」
わかる。
書いてみてようやくそのものを認識できるというかなんというか。
「最初のブログ」を特定するなど、こっけいでもあり無駄でもある。ブログというのは発明されたものではなく、進化してきたものだからだ。 P106
ウェブログ業界の転換点としてはやっぱりこれ。
・1999年8月 ウェブログの更新を個人が簡単に行えるフリー・ウェア、ブロガー(Blogger) のサービス開始
もともとはあの時代にHTMLをいじるスペシャリストのものだったブログが、
Bloggerのサービスでより一般的に。
ブロガーの企業自体は倒産寸前だったのを、あのグーグルが買収。
これ、ポッドキャスト的にいうと
スポティファイによるAnchor買収と同じ流れですよね。
成否をわけたのは、結局、頭の中にある考えをウェブに書き込むまでの道筋をシンプルにできるかどうかだった。 P167
複数のプラットフォームにポッドキャストを自動的に配信してくれるAnchorは
ほんとに便利で、そこに目を付けてさっさと買収したSpotifyの先見性はさすがだなと。
ブログの場合、書き手が書きたいと思ったときがニュースサイクルの旬なのだ。 188
マスメディアはニュースサイクルにしたがわないといけないけれど、
個人だと好きなタイミングで書けるのでそれがブログの良さなのだ、という話。
「ウェブログというのは、地雷原でダンスをするようなものだ」という言葉も紹介され
キャンセルカルチャーもあるこの頃なので、発信には気を付けないと。
本家のアメリカ版 TechCrunch立ち上げの話もちらっと出てきたりも。
弁護士さんが作ったサイトそうで、
もともとはWeb2.0の動向を追うブログだったそう。
新しいものが登場すると、「本物ではない」と言われる。
後にそれが本物であることが否定できなくなると、「重要ではない」と言われる。
そして重要性がひていできなくなると、「新しくない」と言われる。 417
ウィリアム・ジェームズの言葉
個人の自主性と集団の空気のシーソーを支える視点という言葉もなるほど。
はてな匿名ダイアリーの「保育園落ちた日本死ね」もまさにそれなんじゃないかと。
ブログは書くことと読むことの両方にまたがっている。 428
1994年、未来学者のポール・サフォーが語ったように、「コンテンツがありすぎるほどある世界では、視点が貴重な資源となる」のだ。 P446
ブロガーを”城壁内に住む勤勉な書記”に例えているのも面白いなと。
ほかにも、
ジャーナリストVSブロガーの流れや、
マネタイズの起こした問題など、
なかなか面白い視点がたくさん含まれていて、
これまたポッドキャストも同じ道を歩んでいるような気がして不思議な感じがします。
最近、ミニブログを書ける「Twitter Notes」のサービスが話題になりましたが、
ツイッターはそもそも、ブログの普及を大きく推進したエバン・ウィリアムズがはじめたサービスだそう。
なので成り行き的には驚きがない展開だったというか
むしろ遅かったぐらいなんじゃないかという話で。
2500文字まで書けるそうですが、流行るんでしょうかね?
動画や音声に押されがちな今の時代でも、
日本国内のブログサービスやnoteなど
テキストもまだ一波、二波ありそうで嬉しいかぎり。
・"クラフトインターネット"という古き良きウェブへの回帰運動に期待している。
2009年に書かれた本なので話についていけないかと思いきや、
しっかり注釈が入っているので問題なく読めたかと。
時間がなくてひじょーに雑な紹介になりましたがこの辺で。
英語タイトルは『Say Everything: How Blogging Began, What It's Becoming, and Why It Matters』 翻訳は井口耕二さん。
ブロガーの方はぜひ。