世界のねじを巻くブログ

ゲイが独自の視点で、海外記事/映画/書評/音楽/電子書籍/Lifehack/Podcastなどについてお伝えします。ポッドキャスト「ねじまきラジオ」配信中。

AI時代に読む村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

新作の予習に

最新作『街とその不確かな壁』が明日発売。
タイトルや前情報から、
過去作『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
と関連しているのは間違いなさそうなので、
10年振りぐらいに再読。

 

個人的には初めて読んだ村上春樹の長編が
『世界の終りと~』だったので、わりと思い入れのある作品。

確か『走ることについて~』『象の消滅』そして
本作という順番で読んだ気がするけど、独特の設定に惹かれて
あっという間に読み終わったけど、今回もそんな感じで読めたなと。

代表作のひとつということもあり、今読んでもさすがに面白かった。

全体的には『ねじまき鳥クロニクル』の方が優れていると思うけれど、
主人公への共感度でいうと『世界の終り~』や『羊をめぐる冒険』の方が上。

はまり込んでいく主人公に同情せざるを得ないし、
ラストの選択はもうね・・・。

 

令和の今、改めて読み直してみると、
偶然にも人工知能を暗喩しているようにも読めるし、
ウクライナという言葉もちょいちょいも出てくるしで、

優れた小説というのはどういう解釈でも楽しめる、
村上春樹さんの小説の魅力はやっぱりそこなんだろうなと。

 

だいたいはなんとなく覚えていたけど、
「百科事典棒」や「手風琴」「電力工場」
など全然覚えてなかったところもあってなんだか新鮮だった。

 

「井戸」も『ねじまき鳥クロニクル』以前の本作から少し登場してたんだな、とか
ボブ・ディランこんなに頻繁に登場してたっけ?とか。

 

情報をめぐる戦い

村上春樹の小説って『ノルウェイの森』が売れすぎた影響か、
おしゃれ小説のイメージが先行してしまっているけれど、

特に『世界の終わりと~』に関しては
わりと細かい設定が練られていて
独自のSFワールドが繰り広げられていく感じ。

海外ドラマばりに
2つの世界を行き来しながら物語が動いていき、
上巻の終わりなんて、なかなか『24』チックだなと思いながら読み返してたり。

 

そもそもこの本の大筋は
「情報をめぐる戦い」なので、

システム側であるAIと人間とを対比しているように読めたりも。

「よくわかるよ。僕もときどきそう感じることがある。
街に比べると、僕が弱い矛盾した微弱な存在じゃないかってね」

 

もやはりこの街の強 固な鎖の輪にくみこまれたひとつの断片にすぎないのだ。何かが強大な壁を作りあげ、人々はただそこに呑みこまれてしまっただけのことなのだ。
僕はこの街の中のすべての風景と人を愛することができるような気がした。
僕はこの街にとどまることはできない。 しかし僕は彼らを愛しているのだ。

 


"世界の終わり"の森の中にいたりするのも、テクノロジーを捨てて「心を捨てずに暮らす」人のよう。

ケヴィン・ケリー的にいうと
アーミッシュ的な存在の人のことを指しているのかも。

加速するAI時代には、そのような信条を貫く人ももっと増えてくるだろうなとふと思ったり。

 

 

『街とその不確かな壁』を予想してみる

Amazonにあらすじがすでに掲載されているので軽く引用。

十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、きみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。<古い夢>が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された「物語」が静かに動き出す。

 

その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

 

どんな内容になるか、個人的に予想してみたり。

 

・イントロ・冒頭のシーンはよくわからないスタート

 

・若かりし頃の話と、年をくった後の時代とを行き来する?

 

・壁の向こう側に戻った影の視点での話

 

・「森」「川」「図書館」「やみくろ」あたりは新作でも重要になるはず。
「井戸」も出てきそう。

 

・LGBTQ+な「性的に特殊なキャラクター」が出てくる

 

・古典の物語の引用がある 

(過去にも『雨月物語』とか『平家物語』『魔笛』『オイディプス王』『1984年』など)

 

 

新潮社から公表された文章で
「コロナ禍に書きはじめた」と書いてあったけれども、
コロナウイルスやパンデミックを直接描くことはないだろうなと
個人的には思ったり。

 

ここ数年の話をすると、BLMや環境問題も
あらすじからすると、一時代前の日本が舞台っぽい気がするので、
人種問題はたぶん書かないんじゃないかなと。

 

ただ、「戦争」というテーマについては
昔から村上春樹が書いてきたテーマなので、
今作でも間違いなく触れてくるはず。

 

あとAI・人工知能については
2年前にカズオイシグロやイアンマキューアンも取り上げているので、
村上春樹がとりあげてもおかしくないなと思ったり。
無難にサポートキャラとして登場しそう?

 

これだけ世界の目も集まっているので、
女性蔑視やしつこい下ネタがない(あるいは少ない)ことを願うばかり。

(ポリコレにあんまり配慮しない作家なので、今回も盛りもりだったりするかも?)

 

注目されすぎてあれこれ言われる作家さんだけれど、
なんだかんだで楽しみ。

長編新刊といえば、
村上龍の『ユーチューバー』はまだ読めてないけど、
カズオイシグロの『クララとお日さま』や
チャックパラニュークの『インヴェンション・オブ・サウンド』
以来にワクワクしてます。

 

いろんな人の考察を読めたりするのも
人気作家のいいところで。

 

あと出てきそうな音楽を5つぐらい挙げておくと、
(当たるわけないけど笑)

・パティ・スミス

・エルザ・ソアレス

・ピーターガブリエル

・ジョーコッカー

・ベタすぎるけど『ザ・ウォール』のピンクフロイドとか。

 

イスラエルのスピーチでもあったように

卵とか月とか、丸いものがまた重要なモチーフになるんじゃないかなと。

 

 

ちなみに、『世界の終わり~』ほんとについ先ほど読み返したとこなので、
雑な感想になってます。
(ほんとは一昨日ぐらいに完読してる予定だったけど忙しくて....。)

 

そんな感じであと10分ほどで配信される『街とその不確かな壁』、
せっかくなので1,2章ほど読んでから寝ようかなと思ってたり。

 

読書日記、振り返りつつ書いていくつもりなのでご興味あれば。

『街とその不確かな壁』読書日記を書いていこうかと。 - ねじまき日記

『街とその不確かな壁/村上春樹』の読書メモ

『はてなブログの日記本 2022』を読んだ感想

純日記を集めた一冊

はてなブロガーの日記を集めた『はてなブログの日記本 2022』を読んだ。

”たくさんの何気ない日記を集めました”
というキャッチコピーのとおり、

お店での出来事から運動会、くるりのライブ、
雨の日の一日、入学式やたぬきうどん
...などなどホントにオチのない日記がまとめられてる一冊。

 

ただしあくまで非売品。
「第2回日記祭」にて紙の書籍が配布されたそう。

 

掲載されたブロガーさん宛てには(自分含め)、
株式会社はてな からメールでPDFで届いたので、
Kindleに突っ込んで読んでみた。

f:id:popmusik3141:20230101215331j:image

一応2022年1月から時系列順に並べられていて、
みんなの2022年を振り返る一冊という感じ。

 

 

ほとんどのブログ記事が、
僕を含めて一般人っぽい感じの文章なんだけれども、
どれもちゃんと生活感があって読みごたえがあるし、なおかつスッと入ってくる。

 

個人的にお気に入りの文章をいくつか紹介。

 

おかんの電話代を取り立てられる話。

帰宅後「携帯代払っといたで~」って仏壇の前でおかんに報告しときました。 「すまんなぁ」って声が聞こえた気がしました。「天国にまで取り立てよるねんな」 って声も聞こえた気がしました。笑

天国にまで取り立てる - トラック運転手ともさんの日常

 

 

別に誰に頼まれてるわけでも、誰かが待ち望んでるわけでもないが自分で読み返したときに楽しいだろうなという気持ちで毎日書いている。

いつか、助けてくれるその日まで - むらよし農園

 

なにげない一言が、
日常の芯みたいなものを捉えていてハッとさせられたり。

 

でもそうだな、そこにあった暇な時間とか、手持ち無沙汰な空白とかが失われていくことが、すこしさびしい。

桜吹雪 - うごく水たまり

 

 

彼の美学が生まれていた木屑だらけの小さな事務所を覗き見る。 死後も残るような何かを作る。
「作る」ことの美しさを今になって祖父から学ぶ。

2022/5/8 - 取るに足らない

 

 

「伝えたいことは言葉にしないとなぁ」そう思い、生まれて初めて兄に手紙を書いた。もうこんなことはないかもしれないと思うとすこし寂しくもあり。

優しい愛 - Chihi’Log

 

 

ここ十年ぐらい人を好きになったことはないのですが、やはりどうしても押し殺せないのは生涯を通じて心の底から人を愛したいという気持ちです。

恋愛って私が考えている程いいものじゃないの?? - 人に嫌われるのが怖い大学生の日記

 

 

・しばらく電車に揺られたのち、1番出口を出て徒歩1分、星屑珈琲に到着。
こんな遅い時間であるのに、半分ぐらい席は埋まっていて、手持ちぶさな夜に人の気配を感じながら読書や書き物をしたい人が自分以外にも沢山いるのだな、と、なんだか安心する。

「静かな夜に」2022年9月10日の日記 - 素敵側の人間になりたい

 

 

…布団の中で私が私を人間らしいぞと励ましている様子が容易に想像できる。 悲しきことか、愛おしきことか。その判断はまた明日の私に託すとしよう。

悲しきことか、愛おしきことか。 - ▽ ブドウに緑、

 

 

日記を素直に書くことと、人のためになるような文章を書くことは乖離していると思う。日記は自分のために書いている。
だから誰かに読んでもらおうとしていることに矛盾を感じているし上手く気持ちに折り合いがついていない。

10月9日(日) - まだ、途中

 

藤沢智子さんという週刊はてなブログの編集もされている方が
つくった一冊だそう。
製本は欧文印刷という東京の会社。

 

「自分も日記を書いてみたい」「もっといろいろな人の日記が読みたい」と思った方、はてなぶろぐでお待ちしています。
『はてなブログの日記本 2022』 「おわりに」 より

 

ブログ記事が紙の本になったのは初めてで、
でも実物は見てないという不思議な感覚。

いろんな方の「純日記」が詰まった一冊。

写真や動画もいいけど、
やっぱり文字やテキストじゃないと残せないものもあるし、
AI時代も「まだまだブログも死なないぞ」と信じたいところ。

 

あくまで肌感覚だけど、
ほかのブログサービスと比べても、
テキスト好きな人は多い気がするし、
やっぱりはてなブログには頑張ってほしいなと。

 

ちなみに日記本に掲載されたねじまきの記事はこの記事

ほんとにオチもないただの一日の記録。

www.nejimakiblog.com

 

いろんな方の文章をよんで
自分のために記録していくことの意味を再認識した日記本でした。

 

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ブルータスのドーナツ特集があなどれない話

本当においしいドーナツ@BRUTUS

雑誌ブルータスでなんと『本当においしいドーナツ』特集が。
表紙の ”ドーナツは、ブームじゃなくて文化です。”という文字が頼もしく、
甘いものには目がないので、さっそく読んでみました。

冒頭からいきなり京都のドーナツ屋さん 「Kew」が載っててびっくりしたけれど、
実は、世界クラスのルーツを持つ屈指の名店だからそうで。

「味の副音声」というポッドキャストで噂を聞いて以来、
ずっと行きたかったドーナツ屋さんだったりもします。
(実は来週、龍安寺付近に用事があるので寄っていこうかなと)

 

※追記(2022.9.7):

コメント頂いたところ、Kewのドーナツはもちろん、チーズケーキが絶品だそうです。
雑誌にも書いてあったとおり、現在人気のため予約制なので行かれる方はご注意を!

 

読みどころは、やっぱり速水健朗さんの「ドーナツ・カルチャー考。」

ツインピークスやBTS、山下達郎や村上春樹まで
ドーナツとカルチャーの関わりを描いたコラム。

 

ツインピークスといえば、コーヒーとチェリーパイとドーナツ。
こんな動画もあるなんて。

ひさびさに見たけどクーパー捜査官がほんとに美形でびびる。

 

ザ・シンプソンズに言及がないのは個人的に残念ですが、
短いながらも読み応えある文章でした。

このように、ドーナツをめぐるカルチャーは、その形の通りに無限ループするように思えます。

 

ちなみに時代的な話でいくと、
1970年にダンキンドーナツが日本上陸、
1971年にミスタードーナツも上陸。

ミスドの方が後だったのはちょっと意外かも。
24時間営業していた時期もあると聞いてさらにびっくり。

 

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なにげにDJ松永さんのエピソードもやばくて笑える。

10個ほど買って一気に食べてしまうので、胃薬を飲む羽目になるんですが(苦笑)

 

ほかにも、
言語学・哲学・建築・宇宙(!)などあらゆる視点からDonutsを語ってたり
ニッチながらも手抜きがない一冊。

 

「聖域としてのミスタードーナツ」という穂村弘さんの俳句エッセイもおもしろく、
ドーナツの歴史やミスドグッズ特集、世界のドーナツ屋特集など
あらゆる方向からドーナツを楽しめるかと。

 

ドーナツショップ 全国マップも無料で公開しているという太っ腹ぶり。

沖縄は米軍基地があるからか、ドーナツ屋のレベル高そうでかなり気になるな。。

 

・・・まあそんな感じで甘いもの好きなら読んで損はないかと。

 

さいごに最近食べたのドーナツの話をすると
ミスタードーナツの「いもド」シリーズがうまし、だったのでおすすめです。

ああ、またドーナツが食べたくなってきたな。

 

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力の指輪をみた感想 「過去の影」 (1-1) - 空飛ぶ海外コメディブログ

『ホビットの冒険』(岩波版)を読んだ感想

指輪物語の前日譚

ホビットの冒険(新版:瀬田貞二訳) がキンドルの電子書籍で発売されたので、
ドラマ版『力の指輪』予習のために読んでみました。

子供の頃にリアルタイムで映画版『ロードオブザリング』をみて
原作の『指輪物語』に挑むも挫折。

今回ドラマ版にあわせて『ホビットの冒険』から読み直してみよう
とあわててトールキン原作の世界に飛び込んでみたという流れ。

レビュー・印象に残った部分

ざっくりと感想を書いてみようかと。

 

「一まことに残念ですが──」とビルボがいいました。「 帽子 をかぶってきませんし、ハンケチも 忘れました。お金も持ってこないのです。

 冒険に誘われ、最後まで家に帰ろうとするビルボの有名なハンケチの台詞

 

 

それは、月の光が 裏 から照りつける時にだけ、読めるのです。そればかりではない、まことに手のこんだくふうがしてあって、その文字を書いた時と同じ形の月、同じ季節の月がささなければ、だめなのだね。

いかにもドラクエ風というか、RPG的な設定。いいよねこういうの。

 

エルフたちは、剣をオルクリスト、つまりゴブリン 退治 とよんでいましたが、ゴブリンたちはこれをただ、「かみつき丸」とよびました。そしてこの剣をにくみ、この剣を持った者をにくみました。

もちろんファンタジーということで、伝説の剣もでてきます。

 

ガンダルフがこの時代も大活躍。
魔法というよりかは、打撃でガンガンいこうぜ、なところも意外でした。

 

コロコロ、コロコロ、ころげたる。 ころげてコロンと 穴 の中。

ところどころ挿入される歌や詩も、
ユーモアまじりだったり、神話的だったり。

樽にのって飛び降りるところなど、シンプソンズかよ!と思うぐらい
コミカルだったり。

この辺、ちょっとエルフ族が嫌いになります。笑

 

それで、スマウグのいかりは、たとえようもありませんでした。使いきれないほどお金を持っている人たちが、ろくに使いもせず、ほしくもないくせに、長いこと持っていた品物を、ある時ふいになくしてしまった時にむちゃくちゃにおこりますね。あんなおこり方でした。

シリアスな場面もユーモアを忘れないトールキン。

 

すべての者に、おそろしいことがおこったぞ! やんぬるかな! わしの思っておった時より早く来たわい。

ガンダルフの古めかしい話し方ひとつとっても良い。

 

ビルボにしてみれば、あれほど待ちのぞんだ 家路 につくわけですが、今はビヨルンの庭の花々が、夏のさかりにおとらないすばらしさで 咲きほこっていて、ビルボは旅立つのに心残りなほどでした。

ジブリと同じく、自然の描写や食事シーンは抜群によい。

 

最後の闘いもアツいのなんの。
頭の中でロードオブザリングさながらあの戦いの様子が流れます。

 

全体的に和訳の言い回しがケストナーの児童文学に似ている気がするんですが、
英語を児童書風に訳するときはこういう訳し方になるんでしょうか?

英語の原文はどうなっているかわからないですが、
独特のユーモアとおとぎ話的な文体がファンタジーの世界にぴったりで。

児童書だからか、新訳なおかげか、
指輪物語のような読みにくさはなかったかな。

 

 

訳者・瀬田貞二さんのあとがきも興味深い。

もっともおもしろいのは、この世を第一の世界、ファンタジーの 舞台 を第二の世界として、その深いつながりを説いたところで、第二世界というのは、 宮沢賢治 のいわゆる 心象 世界 にあたるといえましょう。

そして画家の 寺島竜一さんの挿絵も。

 

ビルボとゴラムのなぞなぞの場面や指輪を"拾って"しまうシーンはやっぱり興奮。

エルフとドワーフの仲が悪い理由や、昔の英雄の話、
ドワーフのあの広間など、指輪物語にもばっちり話が繋がります。

 

また、ドラゴンはほんとに強欲で悪いやつ な感じなのが
意外というか。

日本だと"宝を守るかっこよくて強いヤツ的"なイメージが強いですが、

もともと北欧神話・ジークフリート伝説などから来たモンスターなので、
当然といえばそうなんですけども。

 

また森=危険という設定はいかにもヨーロッパらしいというか。

日本だと森や自然は「神のいるところ・畏敬」というイメージがあるので、
恐れる対象物としても、日本とは描かれ方はちょっと違うように感じました。

 

ドラゴンあり、エルフあり、お城や森、魔法や剣ありーのな、
王道ファンタジー。

 

子供向けの児童文学といえども、
濃密なファンタジー設定や、ユーモアあふれる言い回し、
ピンチが何度も来る感じ、
人情の温かさなど、
大人でも十二分に楽しめる一冊。

 

"指輪をはめると誘惑にかられる、または サウロンにみつかる"

・・・などの指輪をはめるデメリット的な設定
指輪物語からの後付け設定なのかな?と疑問に思ったり。

(詳しい方にまた聞いてみようかなと)

 

Kindle版は上下一冊にまとめられてます。
現在なら半額分ポイントが付与されるのでお得に読めます。

 

映画版『ホビット』シリーズ、中途半端にしかみてないのでもう一度見返そうかと。

 

昔、図書館で『ホビットの冒険』の絵物語(コミック版)を読んだ記憶があるのですが、
あれもかなり忠実に再現してたんだな・・・といまさらながらふと思い出したり。
(蜘蛛に木からぶらさげられるシーンで読んだのをはっきりと思い出しました)

 

読み終わったあと図書館で借りた

The Atlas of Middle-Earth 「中つ国」歴史地図 ― トールキン世界のすべて』の地図をみながら、想像をふくらませて読んでました。

子供の頃にかえったようなワクワク感を思い出したり。

ファンタジーっていいよね、とひさびさに思う一冊でした。

 

力の指輪 の予習にも

アマゾンプライムのドラマ『力の指輪』に
おそらく登場するであろう、

エルロンド、ゴンドリン、上のエルフ、オーク、
ドゥリン、モリア、ガンダルフ、死人占い師、指輪 
・・・などなど、
指輪物語やホビットの冒険より古い時代に言及した部分もあり、
なんだかんだ重要な位置を占めるホビットの冒険。

 

トールキンいわく、
はじめはホビットの冒険だけ書くつもりが、
言語学的な関心、つまり エルフの言語に「歴史」的背景を与えるために
『指輪物語』を描きはじめた
と書いていて (王の帰還 著者ことわりがき を参照)

それもまたとんでもない話だな、と思いながら指輪物語の世界の広さに震えてます。

 

ドラマ版『力の指輪』をより楽しむためにホビットの冒険も読んで損はないかと。

 

「空飛ぶ海外コメディ」のブログで、
力の指輪について色々まとめていこうと思うので、
ロードオブザリング好きなかたはぜひ。

www.flyingcomedy.com

 

※追記(2022.9.3)ついに公開。さっそく観た感想をざっくり書いてみました。

www.flyingcomedy.com

京都破壊SFアンソロジー「京新星爆発」が気になる

京都が舞台のSF短編小説集

はてなブログのお題が「SF」ということで、
最近気になっている本について少し紹介。

インターネットで有志が書いた京都破壊SFアンソロジー「京新星爆発」

ブログのお題は"古今東西のSF"と書かれてましたが、
まさか京都が舞台のSF短編小説集がでるとは。

応援の意味も込めてざっくりと。

 

本の内容としてはこんな感じで、
東京破壊モノのオマージュだそうです。

古今東西、人々の想像力はありとあらゆる手段で街を破壊してきた。街を破壊する――それは人々を魅了し続ける究極のカタルシス。戦乱、崇神、怪獣、隕石、立看板…まじめな破壊からすこしふしぎな破壊まで、この世の全ての破壊がここにある。解き放たれた破壊者たちによる究極の京都破壊絵巻!

 

具体的なストーリーとしても、

"微小な変化が京都全体を定義上の鴨川デルタに作り替えるお話"

"京都市がカレーに沈没する話"

"『洋服』と『キモノ』の攻防戦"

"友人からの京都の実在性を問う依頼を発端とするロボットSF"

・・・など15作品以上が収められているとのこと。

 

以前からフォローしていた書き手の方が作品を書かれているみたいなので、
これは読むしかない!と思って楽しみにしてます。

紙の本ではなく、キンドルの電子書籍として発売されるそうなので、
・・・いまや同人誌も電子出版が当たり前な時代なんですかね~

 

2022年8月16日公開予定とのこと。詳細発表されたらまた追記しておきます。

 

今週のお題「SFといえば」

 

公式HP: 京都破壊 | 京都破壊SFアンソロジー

 

www.nejimakiblog.com

『ブログ誕生 総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア』を読んだ感想

Blogの歴史と問題

"誰でも書き手になれる画期的なサービス"だった
ブログウェブログの普及と直面した様々な問題を書いた本の紹介。
ここ最近、大手ブログの閉鎖が続くなか、
ブログの歴史を振り返ろうと思い図書館で借りてみました。

著者はニューヨークタイムズやWIRED等に寄稿もしているスコット・ローゼンバーグ。

www.nejimakiblog.com

 

感想・レビュー

ブログの歴史を描いた一冊、ということで
ブログが一般人に広く読まれるきっかけとなった
9.11の同時多発テロの時代からはじまります。

 

マリノは、ただ、自分が見たことを書いた。
この記録を見ると、朝8時49分の世界と8時56分の世界がまったく異なるものだとわかる。 P4

 

今ふり返ると、同時多発テロはブログの成熟を示すものではなく、
ウェブが生みだしたものに他のメディアが気づいた瞬間だった。 P10

ブログを語る上で9.11のテロは切っても切れない関係で、
一般人がその様子を書いた「ウォーブログ」から、
世間でもブログが広く読まれるようになったという話。

 

ウェブログの定義 としては
「個人の声をそのまま発信」という特徴があること、 
つまり自律性こそがブログの特徴だということ。

個人ブログなら基本的に書き手がそのまま投稿するので
他人が入る余地ないですしね。

 

 

3章の「リンクで人物がわかる」で、

ブロガーの役割に、ウェブにある膨大な情報の人間フィルターという側面がある
という話も。

初期のブロガーは「フィルター」と呼ばれ、
インターネットのすぐれたコンテンツを紹介するブログがほとんどだったそう。


最近でいうとブログよりも、ニュースレターがこの役割を担っている気がします。

 

 

「あることについて書いてみると、そのことを自分がどう考えているのかわかるのです。/ マイケルシッピー」

 

わかる。
書いてみてようやくそのものを認識できるというかなんというか。

 

「最初のブログ」を特定するなど、こっけいでもあり無駄でもある。ブログというのは発明されたものではなく、進化してきたものだからだ。 P106

 

 

ウェブログ業界の転換点としてはやっぱりこれ。

・1999年8月  ウェブログの更新を個人が簡単に行えるフリー・ウェア、ブロガー(Blogger) のサービス開始


もともとはあの時代にHTMLをいじるスペシャリストのものだったブログが、
Bloggerのサービスでより一般的に

ブロガーの企業自体は倒産寸前だったのを、あのグーグルが買収。

これ、ポッドキャスト的にいうと
スポティファイによるAnchor買収と同じ流れですよね。

 

成否をわけたのは、結局、頭の中にある考えをウェブに書き込むまでの道筋をシンプルにできるかどうかだった。 P167

複数のプラットフォームにポッドキャストを自動的に配信してくれるAnchorは
ほんとに便利で、そこに目を付けてさっさと買収したSpotifyの先見性はさすがだなと。

 

ブログの場合、書き手が書きたいと思ったときがニュースサイクルの旬なのだ。 188

マスメディアはニュースサイクルにしたがわないといけないけれど、
個人だと好きなタイミングで書けるのでそれがブログの良さなのだ、という話。

 

www.nejimakiblog.com

 

「ウェブログというのは、地雷原でダンスをするようなものだ」という言葉も紹介され
キャンセルカルチャーもあるこの頃なので、発信には気を付けないと。

 

本家のアメリカ版 TechCrunch立ち上げの話もちらっと出てきたりも。
弁護士さんが作ったサイトそうで、
もともとはWeb2.0の動向を追うブログだったそう。

 

新しいものが登場すると、「本物ではない」と言われる。
後にそれが本物であることが否定できなくなると、「重要ではない」と言われる。
そして重要性がひていできなくなると、「新しくない」と言われる。 417
ウィリアム・ジェームズの言葉

 

個人の自主性と集団の空気のシーソーを支える視点という言葉もなるほど。
はてな匿名ダイアリーの「保育園落ちた日本死ね」もまさにそれなんじゃないかと。

ブログは書くことと読むことの両方にまたがっている。 428

 

1994年、未来学者のポール・サフォーが語ったように、「コンテンツがありすぎるほどある世界では、視点が貴重な資源となる」のだ。   P446

 

ブロガーを”城壁内に住む勤勉な書記”に例えているのも面白いなと。

 

ほかにも、
ジャーナリストVSブロガーの流れや、
マネタイズの起こした問題など、

なかなか面白い視点がたくさん含まれていて、
これまたポッドキャストも同じ道を歩んでいるような気がして不思議な感じがします。

最近、ミニブログを書ける「Twitter Notes」のサービスが話題になりましたが、
ツイッターはそもそも、ブログの普及を大きく推進したエバン・ウィリアムズがはじめたサービスだそう。
なので成り行き的には驚きがない展開だったというか
むしろ遅かったぐらいなんじゃないかという話で。

2500文字まで書けるそうですが、流行るんでしょうかね?

 

動画や音声に押されがちな今の時代でも、
日本国内のブログサービスやnoteなど
テキストもまだ一波、二波ありそうで嬉しいかぎり。

"クラフトインターネット"という古き良きウェブへの回帰運動に期待している。

 

2009年に書かれた本なので話についていけないかと思いきや、
しっかり注釈が入っているので問題なく読めたかと。

時間がなくてひじょーに雑な紹介になりましたがこの辺で。

英語タイトルは『Say Everything: How Blogging Began, What It's Becoming, and Why It Matters』 翻訳は井口耕二さん。

ブロガーの方はぜひ。

京都府立図書館の電子書籍貸し出しサービスを試してみた感想

図書室で電子書籍貸出

岡崎にある京都府立図書館ではじまった、
「電子書籍貸出サービス」をさっそく利用してみました。

一度現地で会員登録さえすれば、
京都府民なら誰でも電子書籍をレンタル利用できるようになります。

・・・実際やってみたところ、登録手続き自体はわずか10~20分ほどで完了。

その後は本会員登録登録をオンラインですると、
電子本をレンタルできるようになります。

京都府立図書館の電子書籍貸出サービス

あくまで参考に、
ラインナップをざっと眺めて個人的な趣向で読みたいなと思ったのを
ざっとあげてみます。

文章表現のための辞典活用法

水族館の文化史

同性愛文学の系譜

多様性との対話

クィア短編小説集

日本人のためのリズム感

音楽の哲学入門

(リンク張るのめんどくさくなったので、下記からタイトルのみです・・)

・ネット炎上の研究

・俗語百科事典

・100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック

・私小説の技法 増補改訂

・ダンス・クラシックス・ディスク・ガイド

・コミュニティの幸福論

・基礎から学ぶスポーツの心理学

・ロゴのつくりかたアイデア帖

・西洋の自死

・食と文化の世界地図

・日本SF誕生

・チリを知るための60章

・ラジオのお仕事

・国語辞典を食べ歩く

などなど、以前から気になっていた本もあったり。

 

「3000冊は少ないかな…」と思ってましたが、
なんだかんだよさげな本がたくさんあるのでしばらくは楽しめそう。

ジャンルも幅広く、
硬い本から小説、評論、ビジネス本、図鑑まで揃ってます。

Kindle Unlimitedにない本、購入すると高額な書籍もたくさんあるので、
これは助かるなと。

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※ちなみに注意点として、
一度に読めるのは一冊まで
なのでマルチタスクで何冊も同時に、という使い方は不可。

 

システムとしては、紀伊國屋書店のサービス 
電子図書館「KinoDen」を利用しているのだそう。

使い方としては、
京都府立図書館にログインして、
ブラウザーで閲覧するという感じ。

さくさく読めて動作も軽快。
全画面表示・音声読み上げなども可能です。

 

難点として、
読んだページは同期されず、
閲覧開始すると、以前読んだ本も表紙から表示されるので、
ページ数を覚えておかないとまともに継続して読めません。

あと、端末にダウンロードは基本できないと考えた方がいいかも。
(間違ってたらすみません)

追記: 一部書籍で印刷やPDFのダウンロードが可能なようです。

 

オーディオブックも聴ける

新サービスとして、一応オーディオブックも聴けるようになったのですが、
個人的には少しがっかりな仕様。
検索性がいまいちで、
倍速再生はできるけど、
再生した場所が記憶されないので、
再度聞き返しにくいという。

正直なところ、
これならポッドキャストかAudibleか聴くかなぁとなってしまう感じ。

でも無料で聴けるなら文句はいえないですよね~
これから徐々に改善されるのを期待してます。

 

ざっくり感想としてはだいたいこんな感じで。
京都は意外と前衛的な仕組みを導入していたりするので、
ええどすよね。
他の都道府県でいうと、
北海道では、特に小学生に活用されているというニュースをみてなるほどなと。

 

京都市立図書館は子供の頃から毎週のようにあちこち利用させてもらってますが、
恥ずかしながら岡崎の京都府立図書館は初めて訪れました。

スペースや机も広く、
お客さんもそれほど多くなく、
新旧あらゆる本が揃う天国のような場所なので、
休日に丸一日籠ってみようかと思います。

実は日本最古の公立図書館だったりもするそうで建築をみるとなるほどなと。

こうなると京都府相楽郡精華町にある国立国会図書館も気になるけど遠いんだよなぁ。

 

電子書籍レンタルの詳細はこちらからご覧ください。

令和4(2022)年4月30日から、電子書籍・オーディオブックサービスを開始します。 | 京都府立図書館

利用できる方・京都府内に在住又は府内に通学・通勤されている方のうち、当館の図書館カードをお持ちでマイページに登録をされている方。

KindleやAudibleに負けずに頑張ってほしいところ。
ラインナップが増えれば、ほんとに良いサービスになりそう。

「好評につきサービス終了」なんてことになったら困るので、京都の読書家はぜひ。

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※京都市立図書館もリニューアル後に電子書籍サービスをするという噂も。
これは期待してます。

本を解説文から先に読むという背徳感

小説のあとがきはいつ読むか問題

 読書好きな人なら誰もが経験したことのある
「あとがき」を先に読んでしまうという背徳的な行為。

僕はわりかし頻繁にやってしまうのですが、
ネタバレで後悔することもある一方、
より物語の世界に入り込めることもあり、
「みんなどうしてるんだろう?」と思ってこのブログ記事を書くことにしました。

 

例えば、
長編小説の導入部分の1,2章が冗長なときに、
「この小説の魅力はどこにあるんだろうか?」と救いをもとめるように
末尾の解説文にあたってしまう、とかそんな感じ。

 

まだ読み切ってないのに、
解説を読んでしまうという独特な背徳感がたまらないの、
わかります??

作品の解説だけじゃなく、
その作者の生涯や生きざまが書かれていたりして、
誕生から死後まできっちり描いてくれる解説も好きです。

 

「ここから読む読者もいるだろうが・・・」みたいな書き方をしている
解説者もいたりして、 ニヤッとしたり。

作品に一切触れず、自分語りをする解説者だったり。
翻訳本だと、翻訳するにあたっての苦労話が読めたり。

 

映画との比較、日本文化との違いなど、
なんだかんだ、それだけでも読む価値あるといえるあとがきも
あってなんか得した気分になります。。

難しい作品こそ読み応えあるというか、
理解が深まることもあるので、あなどれません。

 

コンラッドの『闇の奥』とか、
中国SF短編の『折りたたみ北京』
ブローティガン『芝生の復讐』
村上春樹の『ペット・サウンズ』翻訳本とか、
”これはあとがきではない”と言い切ってしまう『実験小説 ぬ』やら。

古典というかいわゆる"名作"の後書きはハズレが少ないイメージ。

 

締め方がよくわからなくなってきましたが、

後書きは 先に読む派  or 本編を読み終わってから読む派。

意外と50/50ぐらいに分かれるかとおもっているのですが、
みなさんどうでしょうか?

軽くググってみると、"そもそも解説を読まない"という層もいてびっくりしたり。

「この解説文がおすすめだぜ」
っていう本があれば教えて頂ければ幸いです。

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海外コメディーに関するブログをはじめました - 世界のねじを巻くブログ

あとがき

あとがき

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『プロテストってなに?』の本で知ったLGBTQムーブメントや読んだ感想

世界を変えたさまざまな社会運動

とあるきっかけで読ませてもらった抵抗運動に関する一冊。
『プロテストってなに?/ アリス&エミリー・ハワース=ブース (著』
世界中の社会運動やその歴史をまとめた本です。

自由とは「ほかでもない自分自身こそが自らを導いてくれる存在である」
と気づくこと

ー ダイアン・ナッシュ 公民権運動家

という引用からはじまります。

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感想・レビュー

世界中のありとあらゆる抵抗運動が紹介されているので
個人的に印象に残ったものやクィアなもの中心に紹介したいと思います。


はじめの章の"歌う革命"としてあげられていたのが、


・「ごみ箱の音楽」 シリアのダマスカスの町中に知さなスピーカーを仕込んだ話
警察をは音楽を止めるために走り回るハメになったそう。


・「プッシーライオット」ロシア・モスクワのフェミニストたちのパンクバンド 
ロシア正教会に踏み込み演奏して話題に。
LGBGTQ+のプロテストとしてこれほどパンクなのは他にはないかと。

最近NHKのドキュメンタリーでも紹介されててびっくりしました。


"植物を育てる"、という抵抗運動もあるらしく
・「グリーンゲリラ」
→使われていないNYの街の片隅をコミュニティーガーデンにする活動。

"読書による抵抗"
・「黙って読書することでの抵抗活動」@タイ


・「レズビアン・アベンジャーズのガイドブック」
 
1992年 ニューヨーク 「自分の手で革命を起こすための手引書」


・「沈黙の春」ももちろん紹介されてました

 


”「なにもしない」”という抵抗

・「仮病」 ナチスドイツの仮病を使って原爆の完成を遅らせたという話

 

"交通手段"
・「ご自由にお通りください」
→地下鉄の改札口を開け放して鎖で固定した話@NY

 

・日本の岡山県のバス会社の事例
運賃無料ストライキ。
これも興味深かったですね。(知らなかった)


・チリの「のろのろ運転」

これは地味に効果的なやつ。

 

スポーツ関連ももちろん。
・「表彰台での抗議」 メキシコ五輪 1968年

 

そういう方法もあるのか!
というような事例がたくさんあるので、
なにか不満や怒り、訴えがあるかたはにはぜひ読んで欲しい一冊。


LGBTQなアクティビズムが最後のほうにもたくさん紹介されてて◎

・「 シップ・イン(Sip In)」
 1966年、ニューヨークで当時はゲイにアルコールを提供するのが禁止されていたというのを逆手にとり・・・。


・「ストーンウォールの反乱」はもちろん紹介されてました。
(実際にはドーナツライオットが初の抗議運動とは言われてますが)


・「草間彌生のゲイウェディング」@ニューヨーク

 

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・エイズ アクトアップ
ACT UP運動

 

・「メールでのスパムによるデモ」
インターネットの古典的な手法も大人数でやれば効果的。

 

・サラ・マクブライド 
トランスジェンダー セルフィーで話題を呼んだ話

 


映画「パレードへようこそ」の元ネタにもなった
「同性愛者たちが炭鉱夫を支援」@ロンドン 1980年

 

・「虹色に見えるように整列」したというのも有名@ポーランド 2020年


「トイレでの座り込み」@ノースカロライナ 2016年
 

などなど興味深い事例ばかり。

海外の活動家が行ってきたクリエイティブな抗議をこれでもか、と見せてくれるので、
「なにかしなきゃ!」と思わせてくれる一冊でした。


多種多様なプロテストをまとめた本って、今まであるようでなかったので、
マイノリティーの同志にはぜひ読んでいただきたいな~と思って紹介してみました。

168ページとコンパクトにまとまっているところもよかったです。

2021年に心揺さぶられたKindle本10選

電子書籍振り返りin令和三年

令和3年に読んだ"おすすめのKindle本"。
年末恒例のブログ記事、だいぶ遅れましたが軽くまとめてみようかと。
(今年読んだ本なので、2021年発売の本ばかりではないです)

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ざっと印象に残った十冊をジャンル問わず紹介していきます。

トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ? / トレバー・ノア

以前ポッドキャストでコラボした海外コメディラジオさんのおかげで知った、
スタンダップコメディアンのトレバーノアの自伝。

白人と黒人の両親に生まれ、生まれたこと自体が罪という
壮絶な人生体験。

普通、子供というものは両親の愛の証だけど、僕の場合は両親の犯罪行為の証だった。オヤジといっしょにいられるのは家の中だけ。家を出たら、オヤジは僕たちとは通りの反対側を歩かなければならなかった。

南アフリカが舞台で、スラムのなかでトレバーがもがく様子が描かれます。

アパルトヘイ、犬を買って取り返す話、バイクから飛び降りる話、
黒人と猫の話などなど。

あと、かあちゃんが偉大すぎて・・・。

ネルソン・マンデラに対する見方もなるほど、そうなるのか、という発見があったり。

ブラジルのスラムを描いた映画『シティー・オブ・ゴッド』なんかが好きな方はおすすめ。

わんぱくトレバーノア少年の壮絶な自伝、
モンティパイソンの
「Always Look on the Bright Side of Life」を地で行く、
この図太さは見習いたいですよね・・・。

「The Daily Show」の司会者といえばわかる方がいるかも。

 

クララとお日様 / カズオイシグロ

ノーベル文学賞受賞後の長編として、かなり注目度も高かった『クララとお日様』。

「AIロボット×宗教」というテーマはカズオイシグロさんにしかできない芸当でした。

"ちょっと不穏なトイストーリー"という感じではじまり、
あの独特の不気味さを引きずったまま、話は進んでいきますが、
クララのひたむきさや子供たちの健気さに心打たれたりも。
大人の怖さや社会の分断、心とはなにか?など幅広く、かつ自然に読者へ問い描いかけをしていて物語としてさすがの出来でした。

「感情がないって、ときにはすばらしいことだと思う。あなたがうらやましいわ」  わたしはしばらく考え、「わたしにも感情があると思います」と言いました。
「多くを観察するほど、感情も多くなります」

カズオ・イシグロさんもノーベル文学賞を気負わずに
のびのびと書いておられるようでそこも良かったな。

それでも、個人的には
『日の名残り』『わたしを離さないで』の衝撃には敵わなかったというのが正直なところ。

読後感として、クララがひたむきに突き進むところをどう捉えるかで、
物語のとらえ方が大きく変わってきそうな本だなと思いました。

ちなみに現在進行形で『恋するアダム / イアン・マキューアン』を読んでるのですが、
2021年に出版された、英作家のAIに関する本、ということで
比較しながら読むとめちゃくちゃおもしろいです。
また恋するアダムの感想もまとめようかと。

 

フライデーブラック / ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー

#Blacklivesmatterに関心がある方なら、絶対に読んで欲しい一冊。
話ごとに世界観は違うものの、
どれも人種というひとつのテーマが貫かれているので、
読後感もかなり刺さるものがありました。

SF的な世界観をユーモアまじりに書いていく短編集。
若い著者なのにほんとにすごい。

リアリティーと虚構の混ぜ方のバランスが絶妙でした。

おすすめの短編は、

「フィンケルスティーン5」「フライデー・ブラック」「小売業界で生きる秘訣」あたりですかね。

実際に子どもが殺されてこの世界から消えるよりも、俺が一日に一千万回でも二千万回でもゲームの中で殺される方がマシだ。

ジョージ・フロイド事件の警官、22年懲役の判決が出たそうで、
とりあえずは、というところ。

決して"重い"だけの本ではないので、あらゆる日陰者に読んで欲しい一冊。
ゲイとしても、こういうユーモアをもちあわせていたいものです。トレバーノアの自伝もそうですが、
数年前に流行った洋書の日本語版を2,3年後に読むことが多くなってきたような・・・。

 

 

ムーン・パレス / ポール・オースター

ポッドキャストのコラボ回でも話した、
Paul Austerの代表作『ムーンパレス』。

学生の頃から読もうとして、何十年越しにようやく読めました。
読書会的な感じはひさしぶりだったので、
なかなか印象に残った一冊でしたね。

それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。そのころ僕はまだひどく若かったが、未来というものが自分にあるとは思えなかった。僕は危険な生き方をしてみたかった。とことん行けるところまで自分を追いつめていって、行きついた先で何が起きるか見てみたかった。

音楽・映画・本・名所など、旅小説としても読める一冊なので、
アメリカン・カルチャーが好きな方はぜひ。

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ポールオースターの作品、もっと読んでいきたい。
次は『ガラスの街』あたりかな。

 

うたのしくみ 増補完全版 / 細馬宏通

ユーミンから岡村靖幸まで「どうしてあの歌が心に響くのか」という
「うた」のエッセンスをひも解く一冊。

やわらかいタイトルで、書かれている言葉もかみ砕かれてわかりやすいですが、
その分析はすごいの一言。

冒頭のユーミンの「やさしさに包まれたなら」の解説を少し。

ユーミンはこの部分に「さ」に先立つ「S」の音をさあっと忍ばせているのです。

そもそも、サ行の音には、他の行にはない独特の力があります。日本語の音の多くは、子音と母音が1セットになった「モーラ」という単位でできていますが、「さしすせそ」の音では、このモーラの、子音部分を強調しながら、しかもいくらでも引き延ばすことができます。

うたをたしなむ人なら読んで損はないかと。

ほかに良かった音楽本をあげておくと、

名盤レコーディングから読み解くロックのウラ教科書も録音やマイクロフォンに焦点を当てた本としてマニアックでしたが、
ポッドキャスト配信者としては、かなり楽しめました。

レコーディングの裏側を知りたい方にはほんとおすすめ。

 

ちょっとでもAbleton Live!に興味があるなら『サウンドプロダクション入門』は
ほんっとにおすすめ。
(制作側の専門的なことが多いので、音楽家かDTMerじゃないとちょっと厳しいかも)

またブログで紹介しようと思います。

 

批評の教室 / 北村紗衣

はてなブロガーの本ということで、
一冊あげておこうと思ったのが、
北村紗衣さんの
批評の教室──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)』。

批評の教室、全体的に作品への愛が伝わってくるのがいいなぁと。

身も蓋もない話になりますが、批評をする時は自分の性的な嗜好や趣味をきちんと理解しましょう。これは批評する側のバイアスを認識するという問題にかかわることです。

基本的に作品は世に出た瞬間、作者の手を離れるものだと考えてください。異なった文化的背景を持ついろいろな受け手が作品を受容し、違う解釈を作り出すところに批評の醍醐味があります。

実際の批評を批評家同志でコメントしあう部分も興味深かったです。

sakibouさん、実はポッドキャスト(というかTBSラジオ)のアフター6ジャンクションにも
何度も出演されてたりもします。

(オープンレターうんぬんはあんまり追えてないのでノーコメントで。)

 

はてなブログ関連でいくと、
2020年はyomoyomoさんの『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて: 続・情報共有の未来』、

2021年は他にも
フミコフミオさんの『神・文章術』、
柴那典さんの『平成のヒット曲』と意外と出てるしなんだかんだ読んだなぁ、
という印象。

文章や切り口が面白いブロガーさんはたくさんいるので、
KADOKAWAとのコラボなどで書籍化してほしいなと思いました。

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カトマンズでLSDを一服 / 植草甚一

あの時代のドラッグカルチャーを日本語で記録している
という意味ではかなり貴重な一冊。

ハシーシやメスカリンが効きだしたときのように、しぜんと 目 ぶたがふさがる。すると音楽が目に見えてきた。一つの音が明りで書いたようになり、キラキラと雑色になって飛び散る。

無限に大きい万華鏡のまんなかにいるようだし、ある音が、ほかの音よりも強く、ぼくのなかで反響し、それが後頭部や胃のあたりをシビれさせ、打楽器の音が強烈な電気ショックのように全身を飛びあげるようにするのだった。

中島らもさんの『アマニタ・パンセリナ』あたりが好きな方はぜひ。
漫画『ウルトラヘブン』も実は今年読んだのですが、
これもなかなかブッ飛んでました笑

古本でも手に入りにくい本が電子書籍化されるのは、ほんとありがたいですね。

 

 

Futureproof / Kevin Roose

キンドルらしく(?) 洋書を一冊いれておくと、

「AI時代をどう生きるか」という未来予測のようなものも含めたビジネス書。
ニューヨークタイムズTech記事に寄稿しているKevin Rooseという方が書いた一冊。

実はPodcast経由で知ったのですが、サクッと読めて内容もわかりやすかったです。

『Futureproof: 9 Rules for Humans in the Age of Automation』というタイトルの通り、
9つのルールでまとめられているので、ビジネス書を英語で読みたいという方にもいいかも。

そのうち「フューチャープルーフ」日本語版も出るんじゃないかな、と。

簡単にまとめると、

「サプライズ・コミュニティー・希少性」 がキーワード。

機械にできない驚きを、
ソーシャルで人とのつながりを大切に、
組み合わせで自分の希少性を高めよ、

・・・的な内容でした。

要するに、効率性だけを求めることや、
テクノロジー的なスキルだけはだめ、ということ。

AI化されるものの実例だったり、そうでないものだったり
なかなか興味深かったです。

 

ボルヘス怪奇奇譚集 / ホルヘ・ボルヘス

いままでラテンアメリカの小説って『アルケミスト』ぐらいしか読んでなかったのですが、
短篇小説を皮切りに、ラテンアメリカの小説を読むようになりました。

Kindleで出版されているのはあまり多くなく、
ボルヘスが世界の怪奇談や伝承・説話をあつめた一冊をあげておきます。

マトリックスにも出てくる有名「荘子の夢」が出てきたりもします。

荘子の夢  荘子は 蝶 になった夢を見た。そして目がさめると、自分が蝶になった夢を見た人間なのか、人間になった夢を見た蝶なのか、わからなくなっていた。 ハーバート・アレン・ジャイルズ『荘子』(一八八九)

民俗学が好きな方や、
夏目漱石の『夢十夜』が好きな方におすすめです。
寝る前にさらっといくつか読むにもぴったりの一冊。

ラテンアメリカ文学にいまさらハマるというあれなんですが、
コルタサルやマルケスあたりもどんどん電子書籍化してほしいな~と。

 

三体シリーズ / 劉慈欣

いれようか迷ったのですが、一応。
日本語訳も完結したので2021年話題になりました。

最終巻の三部は風呂敷を広げすぎで、
個人的には『三体Ⅱ』のほうが好みでした。

いま、人々は学んだ。終わりのない宴はない。あらゆるものに、かならず終わりがある。

日本に対する描写がステレオタイプすぎるところや(日本刀や茶道)、
ルーブル美術館やエドガー・アラン・ポーなどありきたり(?)な引用が、
物語のスケールと比較してうーん、と思ったりもしたのですが、
全体としてやっぱりおもしろかったです。

1部については、VR・メタバース的な視点でみても楽しめるので、
この小説が2008年から書かれたというのはほんとに驚きのひとこと。

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決して日本のSF小説も負けているとは思わない
ので、
世界の目がアジアに向いている間に、
日本もガンガンアピールしていってほしいな~と。
(※音楽もドラマも同じことを思う一年でした)

三体

三体

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おいしさの錯覚 / チャールズ・スペンス

なんだかんだ毎年でフード・グルメ系の本を選んでいるので、2021年もチョイス。

『おいしさの錯覚 「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』

五感のみならず、心理的な部分に興味があるなら必読の一冊。

結局のところ、中立な環境や背景など存在しない。環境だけでなく皿の形や料理の名前、あるいはカトラリーなどのすべてが食体験に影響することをガストロフィジクスが証明しつつある。

 

面白い事例として、スイスにあるデニス・マーティンのモダニストレストランの話も興味深かったです。

食事客がテーブルについても、すぐには給仕を始めない。すると、テーブルに置かれている置物がスイス流の塩の容器や胡椒挽きなのだろうかと不思議に思った客たちが、牛を手に取る。底面を見ようとして傾けると、その置物は悲しげな「モー」という音を出すのだ。驚いた客の多くは笑いはじめる。あっという間に、ダイニングルームは牛の「モーモー」という合唱で満たされ、笑顔が広がる。

人々の気分が明るくなったところで、コース料理の一品目がキッチンから出てくる*2。結局のところ、私たちの気分が、食事体験を左右するもっとも重要な要素と言える。だから、人々の気分をよくすることに力を入れるべきなのである。

嗅覚・触覚の部分が特に面白く、ぜひ読んで欲しい一冊。
フードポルノは罠ですね・・・・。

表紙が淡白なのであまり期待してなかった本だったのですが、、
(ちょっと冗長な部分はありましたけど)
食という概念を揺さぶられ、かなり楽しめた一冊でした。

Kindle Unlimited読み放題対応なのでおすすめです。

料理系でいくとほかにも、
若者シェフが世界各地で奮闘する『アマゾンの料理人』も
Saku Yanagawaさんとかぶる部分があるような気がしたりで面白かったです。

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ほかにKindleで読んだ話題作でいうと、

本屋大賞を受賞した、ディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くところ』
詩集を読むきっかけになったので、そういう意味では思い出深い一冊。
沼地や自然の描写は美しく、世界観ごと頭にのこる一冊でした。

ですが、恋愛小説的なところが思ったより多く、
個人的な好みでいうとど真ん中ではなかったので、今回10冊には入れず。

2022年はドストエフスキー生誕200周年ということで、
『カラマーゾフの兄弟』に挑もうと思ってます。

 

2021年は、Kindle Unlimitedの同時に利用できる本の上限が
10冊から20冊になったので、
いろんな電子書籍に目移りしてばっかりの一年でした。

ほかにもお気に入りのキンドル本があれば、コメントで教えて頂けると幸いです。

みなさんも良い読書ライフを。

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